産業懇談会【メールマガジン 産懇宅配便】 第198号 2018.11.30発行

メールマガジン■産懇宅配便■

平成30年11月度(第198号) 目次
【30年11月度 産業懇談会(木曜G)模様】 11月1日(木) 12時00分〜14時00分
【30年11月度 産業懇談会(火曜G)模様】 11月13日(火) 12時00分〜14時00分
【産懇宅配便200号記念企画のご案内】
【名古屋いちばん物語】 No.115
【新会員自己紹介】
大島 和希氏 三菱日立パワーシステムズ株式会社 中部支社長
与那覇 靖氏

医療法人尚豊会 理事長

【12月度産業懇談会のご案内】
【産業懇談会「代表幹事講話」ならびに「新年合同懇親会」開催日程】
【お知らせ】
【コラム】
コラム1 【さっかの散歩道】 No.5
コラム2 【保健師からの健康だより】 No.176
コラム3 【「ほん」のひとこと】 No.121
コラム4 【苗字随想】 No.198
【30年11月度 産業懇談会(木曜G)模様】

テーマ: 『 足元のグローバル投資環境と日米株式市場の見通し 』


日  時:平成30年11月1日(木) 12時00分〜14時00分
場  所:名古屋観光ホテル 3階 桂の間
参加者:46名

スピーカー:
宮野 正彦(みやの まさひこ)
東海東京証券株式会社 
常務執行役員オルクドール名古屋ディビジョン長

スピーカー:
長田 清英(ながた きよひで)
株式会社東海東京調査センター
執行役員投資戦略部長

宮野 正彦氏

長田 清英氏


<宮野正彦氏ご挨拶>
 間もなく米国中間選挙というタイミングで、このような機会を頂けたことにまず感謝申し上げたい。米国を中心に世界の景況感は決して悪くないが、足元のマーケットは不透明で難しい環境が続いている。
 間もなくリーマンショックから10年だが、この間日本企業は変化の激しい市場の中でしっかり成長してきたと感じている。10年で日本企業の経常利益は35兆円から80兆円、株式市場の売買代金は580兆円から740兆円、そして投資信託残高も80兆円から210兆円へと成長した。ただ、一方で世界は国際協調から分断の時代を迎え、米中貿易摩擦などに代表されるように経済秩序は揺さぶられている。この視界不良の政治経済情勢の中、本日は皆様が新たなビジネス・投資を切り拓いていくための展望の機会となれば幸いだ。

<長田清英氏 講話>
■世界経済の俯瞰から
 株式の投資条件として投資対象の業績や経営戦略など個社の分析は重要であるが、なんといってもその国の経済が良いことが一番の条件。まずは世界経済全体を俯瞰していきたい。
 IMFが10月に発表した世界経済見通しは、2年ぶりに下方修正された(2018・2019年それぞれ3.9%から3.7%へ)。決して大きな修正ではないが、これまでは逆に上方修正が続いていたわけなのでこの潮目変化は大きなポイントだ。追い風が緩み、いよいよピークアウトを迎えたと考えられる。なお製造業PMI(購買担当者指数)においては、米国を除き今年の年明けには既にピークアウトしていたわけで、IMFの下方修正は十分予測できるものであった。世界の株式市場を見ても、2017年は各国とも好調だった一方で、2018年は年初比較で軒並みマイナスだ。特に中国市場は、もともと景気が減速傾向にあったところに米中貿易摩擦が重なり、大きくマイナスしている。

  • ■欧州と新興国市場がはらむリスク
     欧州市場は政治リスクがくすぶる。イタリアでは、ポピュリズム政党による財政拡張路線がEUの方針と対立し、国債利回りの上昇と金融不安を招いた。また英国も、EU離脱表明の結果、北アイルランドとアイルランドの国境問題を中心に離脱協議の難航に直面している。比較的安定していたドイツも、メルケルが引退を示唆するなど、ここにきて政局に不透明感が増してきている。また、量的緩和からの出口を探る欧州中銀も、欧州経済の減速や米国発の貿易摩擦、米国の利上げ打ち止め可能性などを踏まえると、出口戦略が頓挫する可能性も捨てきれない。
     新興国市場についても不透明だ。米国金利上昇とドル高の状況は、投資家にとっては投資の原資となるドル資金調達コストの点で不利だし、新興国企業にとってはドル建て債務の返済負担が増加する。加えて、米中貿易摩擦による中国経済の減速が新興国に及ぼす影響も見逃せない。

    ■米国市場とトランプ
     一方、世界でも唯一底堅い成長を見せるのが米国。これまで成長が止まっていた日本とは対照的にずっと右肩上がりの成長を継続。先進国で着実に人口増加している国であることも追い風だ。もともと堅調な経済状況にあること、トランプ政権による大型減税や財政支出拡大、規制緩和などでエンジンを吹かした結果、今年度はこれまで潜在成長率を大きく上回る3〜4%の成長を実現している。ただ、来年からは減税効果も一服するので、巡航速度へ落ち着くのではないか。
     この状況を受け、FRBは当面緩やかな利上げを指向しており、政策金利は19年末までに3%を超すのではとFOMC(米連邦公開市場委員会)の参加者は見ているようだ。しかし一方で、3%までは上げられないとのマーケットの見方もあり、もしFOMC参加者の見立て通り政策金利が引き上がるようであれば、この見方のギャップ分は市場に影響を及ぼす可能性がある。
     11/6に中間選挙を控えるトランプ政権であるが、発足時の選挙公約に対する実現度は非常に高い。市場が期待する経済・税制改革面では一定の成果を果たした。リスクと見られる貿易面でも、TPPからの離脱表明はあったものの北米圏のNAFTAでは合意を取り付け、また、中国に対しては覇権争いという意味で足元は強硬な政策を断行しているものの、関税については今後の会談で落としどころを探る可能性もあるだろう。
     さて、10月に入って急落している米国株式市場についても触れたい。まず10月の急落の要因は、FRBによる利上げ加速や長期金利上昇懸念、好調だった夏相場の反動、IMF経済見通しの下方修正などが挙げられる。しかしながら、各種指標と対比すると足元は売られ過ぎの感が強まっていることに加え、実体経済を見ても企業収益の伸びが堅調なこと、企業の株主還元策も積極的なことから、今後反発し再び上昇基調を描く可能性は十分あると見ている。

    ■気になる日経平均と為替
     バブル崩壊以降、長らく停滞していた日本だが、アベノミクスで再び緩やかな成長が継続している。日本市場は海外市場の影響も受けやすいが、基本はGDPが拡大すれば株価も上がるのが原理原則。経済成長基調がこのまま続けば株価にとっても大きな支援となろう。しかしながら、日経平均2万3000円の壁はなんとも重い。2万3000円に特別な意味はないのだが、投資家の過度な意識が天井を形成しているのではないか。上場企業の4-6期利益の上振れ、PERの割安水準、ROEの改善を踏まえると、現在の水準は底とも言えるほど株価上昇の余地は十分ある。停滞の要因の一つとして、海外投資家の日本市場離れもある。関心が少ないのか、今年に入り売り越しが継続しており、安値で放置されているとも言える。今後、政治的要因も含め米国や欧州市場が盛り上がりを欠くなら、投資家のマネーは政情が安定し且つ割安な日本市場へと向かう可能性もあるだろう。
     最後に気になるドル円相場を。現在112円程度で推移しているが、日米の実質金利差を見ると居心地の良い水準だ。また、日本と比較して米国のインフレ率が高いこと、そして日本が経常黒字国であることの2点を踏まえると、ドル安円高圧力が常に受けている状態と言えるので、円安を期待した投資は手控えるのが無難ではないだろうか。


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【30年11月度 産業懇談会(火曜G)模様】

テーマ: 『 キャッシュレスの動向と  
            JCBの取り組みについて 』


日  時:平成30年11月13日(火) 12時00分〜14時00分
場  所:名古屋観光ホテル 3階 桂の間
参加者:38名

スピーカー:
山内 研司(やまうち けんじ)
株式会社ジェーシービー
東海支社長

山内 研司氏

■キャッシュレスを俯瞰する(市場と機能)
 昨今は新聞やニュースでキャッシュレスの話題がよく取り上げられるように、世界はキャッシュレスの方向へと進んでいるが、我が国日本のキャッシュレス比率は未だ20%の状況。訪日観光客も増加する中、経済産業省もキャッシュレスビジョンを掲げ、2025年に40%、将来的には80%まで引き上げる方針である。
 日本のキャッシュレス利用額は年間約60兆円で、その殆どがクレジットカードだ。国内の民間消費支出が約300兆円なのでキャッシュレス比率は丁度20%という計算。近年はデビットカードやプリペイドカード(交通系のICカード含む)の利用も伸びている。一方、海外各国のキャッシュレス比率を見ると、アメリカが45%、イギリスが68.5%、韓国に至ってはキャッシュレス優遇策を追い風に今や90%と、日本の状況を大きく上回る。一方、ドイツは日本と同様、現金への信頼度が高く、15%にとどまっている。キャッシュレス手段のうち、日本では後払いのクレジットカードが主流だが、海外ではデビットカードが主流であり、これは預金口座と連動した即時払いが特徴だ。
 キャッシュレス化が世界で進む背景には、様々なメリットがある。消費者目線では、現金不要且つ決済が簡単で、ポイントやマイルも貯まること、加盟店目線では、レジ処理速度や現金ハンドリングの手間やコストの削減、あるいはマーケティングに活用できる顧客情報の蓄積など生産性向上に寄与する点が大きい。また、日本では切実な問題とはなっていないが、従業員の不正や強盗リスクを抱える外国にとっては安全面という点も見逃せない。加えて、脱税やマネーロンダリングの抑制という公共的な視点でもキャッシュレス化の普及が求められる。

■クレジットカードの歴史とJCBの位置づけ
 クレジットカードは1950年代の米国で勃興した。この時期設立されたのが、ダイナースクラブ・アメックス・バンクアメリカード(のちのVISA)だ。1960年代に入ると日本でも設立が相次いだ。当時は、銀行がカードを発行することが禁じられていたため、銀行各社は合弁・共同でカード会社を設立していた。一例では、富士銀行(現みずほ銀行)・日本交通公社(現JTB)共同設立の日本ダイナースクラブ、三和銀行(現三菱UFJ銀行)・日本信販(現三菱UFJニコス)、後に三井・協和・大和・神戸の五行連合で設立のJCB、当地では東海銀行系のミリオンカード、地方銀行でJCB初の提携行の名古屋銀行(名古屋カード)などが挙げられる。そのうちJCBは、国際ブランド(VISA・MASTER・アメックス・ダイナース・ディスカバー・JCB)の一つとして、23の国・地域で発行されており、全世界で会員数約1億2千万人、取り扱い額約30兆円、加盟店は約3千万店を数える。

■キャッシュレス拡大に向けたJCBの取り組み
 JCBはクレジット、デビット、プリペイド、独自ブランド電子マネーQUICPayに加え、交通系に代表される各種電子マネーを取り扱っている。JCBデビットは国内27行で発行しており(2018年10月末時点)、当地では大垣共立を皮切りに、名古屋銀行・MUFG・十六銀行へと拡大した。預金口座と連動するデビットは、会員の与信審査が原則ないため、若年層や主婦・高齢者などクレジットでは取り込みづらかった層にも普及が期待される。特に今の若年層は「使いすぎない」「前借りしない」傾向が強く、デビットカードとの親和性が高い。
 法人にもキャッシュレス決済が進むと想定している。人口減少社会においてイノベーションと生産性向上は外せない。中小企業においてもクラウドサービスを活用したバックオフィス業務の効率化は喫緊の課題だ。そのツールの一つがキャッシュレス決済化で、法人カードの普及・経費精算システムの導入にはまだまだ余地がある。経費精算の効率化に加え、明細データが明らかとなるので経費の透明性向上という意味でもメリットは大きく、我々もしっかり提案していきたい。
 この他にも、国税などの公的分野、入場料や宿泊などの観光分野、個人間決済など、JCBが役割を果たすべき新たなキャッシュレス市場はますます広がっていくだろう。

■金融イノベーションで主役となるスマホ
 スマホ・AI・ビッグデータ・ブロックチェーン技術など、新たな情報技術が金融サービスへ大きな影響を与えている。特に若年層で保有率が9割を超えるスマホは、新たな決済ツールとして活用が広がる。スマホは、物理的な店舗なくとも広範な金融サービスを可能にし、加えて金融以外のサービスも含めたシームレスなサービスを可能にする。また、一人一台という性質は、パーソナルデータを活用したサービスの提供も可能にする。旧来のプラスチック製カードではなくスマホによるモバイル決済へと移行するのは必然であり、日本ではApple Payの上陸が記憶に新しい。Apple Payを日本に導入するにあたり課題だったのが、非接触決済の環境整備。すでに日本の非接触技術では国内独自仕様のFelica(TypeF)が先行していたが、世界ではTypeA/Bが主流であった。しかしAppleは日本での普及を優先しFelicaを採用した。ソニーが開発したFelica・NFCはガラパゴスでなく、世界規格となっている。なお、JCBが関わるQUICPayは、Felicaを採用しており、全国81万台の端末で利用可能だ(2018年9月末時点)。現在ではGoogle Payも国内で展開されており、同様にQUICPay端末で利用可能となっている。

■最後に〜地方創生への貢献〜
 JCBでは2015年に地方創生支援室を設置した。いかに地方の消費を活性化できるかがテーマ。地域の金融機関と連携し、彼らが保有する預金者・地域企業とのネットワークと、JCBが保有する全国規模のサービスやノウハウを組み合わせた「エリアカード」を開発した。目指すは「ポイントの地産地消」による「地元で一番お得なカード」。我々が保有する全国規模のポイント優待店網の中に地元の有力店を加えることで、消費者・地元有力店・地域金融機関それぞれへメリットを生み出している。例えば十六銀行の「エリワン」というサービスでは、バローなど地元のエリワンパートナー1000店舗でカードを使用すると、おトクな特典を享受できる仕組みとなっているので、是非活用頂きたい。

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【産懇宅配便200号記念企画のご案内】

締切迫る!
特別寄稿 「わたしの産懇」 大募集!

 毎月、産懇宅配便をご愛読いただき、誠にありがとうございます。

 さて、平成14年(2002)に誕生したメールマガジン「産懇宅配便」ですが、いよいよ来年(2019)1月に記念すべき200号を迎えます!これまで毎月配信を重ねてこられましたのは、例会でご登壇いただくスピーカーの皆様や、毎月コラムを執筆いただける寄稿者の皆様、そして日頃ご愛読いただき、「今月のメルマガ読んだよ!」と温かいお声をかけていただける、産懇会員の皆様のご支援のおかげと、深く感謝しております。

 そこで200号記念企画として、産懇会員の皆様より特別寄稿を募集したく存じます。
 テーマは、「わたしの産懇」―。
 1981年の設立以来、産懇は会員同士の相互交流の場として運営され、会員自身のスピーチや、座学に留まらない参加型の会合など、多彩な活動が実施されてきました。そのなかで、自身の視野とネットワークがひろがった、ビジネスにつながった、などありがたい声をいただいております。
 産懇で得た貴重な体験、思い出をこの機会に綴っていただき、皆様の思いを200号に込めていただければ、この記念号は、次の300号へとつながる大切なバトンになります。

 2020年に産業懇談会は設立40周年を迎えます。産懇のさらなる活性化とあわせて、このメールマガジンも引き続き進化していきますよう、皆様のご協力をお願い申し上げます。

「産懇宅配便」 編集長 片桐 清志
中部経済同友会 事務局
<「わたしの産懇」 募集要項>
1. 応募要件

中部経済同友会 産業懇談会登録会員であること。

2. 字数 800字程度(タイトルもつけてください)
3. 締切日 12月中旬まで受付いたしますので、どうぞご寄稿ください。
4. 原稿送付先 データをEメールでお送りください。
中部経済同友会 担当:坂井・多田 Tel:052-221-8901
                       e-mail:cace@cace.jp
5. テーマ等 産懇の思い出、体験談などを綴ってください。
写真の掲載も可能です。必要な場合は事務局までご相談ください。

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【名古屋いちばん物語】 No.115

テーマ: 『 「住吉の語り部となりたい」 シリーズ第92回 』

料亭つたも主人
深田正雄(栄ミナミ地域活性化協議会)

明治150年・栄ミナミ江戸末期のお寺巡り

 今回は明治初年の地図から本町・住吉界隈のお寺の変遷を紹介してまいります。
 碁盤割の南、万治の大火(1660年)以降、防火帯としてできた広小路は道路というより庶民の広場・公園であったようです。溝川の西南には寛永5年(1628年)建立の臨済宗・古松山新福院があり、「柳薬師」と呼ばれて庶民の憩いの場であったといわれています。柳の木で彫った薬師如来が安置されたか、柳の大木が繁茂している寺なので、柳薬師となったか定かではございません。毎年の夏の御開帳はたいへんな繁盛ぶりで、ありとあらゆる見世物や屋台夜店が並んだといわれています。寺は明治7年に取り壊され、春日仏師の作といわれるご本尊の薬師如来は緑区大高の長寿寺に遷座されています。

 柳薬師の枝垂れ柳が名所となり、東海道線名古屋駅が開設された翌年の明治二十年、名古屋の街路樹第一号として、吉田禄在が開発した広小路通りにシダレヤナギが植えられました。四千本近くのシダレヤナギは広小路の景観に欠かせないものとなりました。平成三年、名古屋市の広小路都市景観整備事業の一環として、シダレヤナギは切りとられ、街路樹はケヤキに替りました。「高層ビルが建つ近代的な街並みに、柳は似つかわしくない」というのがケヤキに変更された理由とのことですが、戦後広小路の名物「屋台と柳」がなくなったのは寂しい限りです。(参考:沢井鈴一著・広小路ものがたり)
住吉写真1
明治2年本町、住吉界隈地図
住吉写真2
名所団扇絵・柳薬師(名古屋市博物館蔵)

 その後、柳は南隣の長円寺境内地となりましたが戦災で焼失した他、長円寺境内には、尾張藩主が熱田神宮参拝の途中に休息されていたという古松「千尺龍松」、名古屋駅からも見えた大銀杏、全て戦災が原因で跡形もなく焼失してしまいました。(藤井ゆかりさん談)
 また、柳薬師の跡地で、戦後、進駐軍相手の橋本モータースの橋本裕さん(S24生まれ、小生の栄小1年後輩)のコメントを下記に紹介させていただきます。そう60年前には栄にホタルがいたようです。やはり紫川の泉がどこかに湧き出ていたのと思われます。
 長円寺の北側、まさに柳薬師だった地で生まれ育ったこと、知りました。家の南側が子供部屋で,窓の外は長円寺の境内(現在はチサンマンション栄2号館?)

住吉写真3
名所団扇絵・柳薬師(名古屋市博物館蔵)

 網目のフェンスがあって、そこに何匹かのホタルがお尻を光らせていたという覚えがあります。
 広小路通りはしだれ柳の並木でした。店前の柳の枝を一本取って「ムチだぞう」と遊んでいたことを思い出しました。

 転輪山長円寺はこの度、創建350周年をむかえ住職の娘の藤井ゆかりさんが記念誌発刊の準備をされていると耳にしております。
 教育委員会のボードにある、越智越人の墓・中村宗十郎の辞世碑は入口右にあり、誰でも見学できるようになっています。
 越人(1656年〜1739年)は名古屋本町にて紺屋を営み、松尾芭蕉の弟子俳諧師として活躍、蕉門十哲の一人で「更科紀行」の旅に同行したので有名です。
 また、中村宗十郎(1835〜89年)は名古屋熱田富江町の生まれ、上方で活躍した歌舞伎役者で、「名人延若、上手宗十郎、業物右團次」として話題、初代中村鴈治郎を育てるほか、明治初めの新しいスタイルの演劇にチャレンジしています。
 そして、昭和57年に長円寺会館を岩城誠作設計士(料亭蔦茂建築担当)により建設、オシャレな外観、そして、和風数寄屋造りの内装が話題となりました。当代、第15世藤井知昭住職は民族音楽学・人類学者で、文化庁の学術調査団としてフィールドワークに度々出向いております。音楽ホールの運営ほか、文化サロン「サンギータ」(サンスクリット語で芸術の場所)を主宰され地域の多様なニーズに応えているユニークなお寺です。

藤井ゆかりさんのコメントによれば:
長円寺の開基には2説ありまして、寛永4年(1627)以前説ですと、400年になります。
清州の須賀口から移転した中須加町(現 栄2丁目5)組でした。「清須越し」の定義に入るか否かはグレーゾーンかもしれません。宝暦6年(1756)に、入江町通りを挟んだ浄土宗鎮西派凉源寺と寺地交換をして北側の現在地に移りました。

住吉写真4
長円寺庭・越智越人の碑
住吉写真5
長円寺内・中村宗十郎辞世碑

 入江町南の凉源寺は、当時、南寺町にあった性高院の末寺、山号は「天龍山」とのことです(「尾張志」より)清須越し以降の建立と思われますが、戦後は宝タクシー操車場、宝第1ビルを経て、現在は宝グループが近隣の問屋跡地とともに大型マンションの建設を進めています。

 住吉町の浄土真宗大谷派福恩寺さんは戦災で焼失後、昭和23年大池町現在の中警察北に移転しましたが、第14世当主がご本尊「阿弥陀仏」を疎開させ、現在も本堂に安置されています。大池は明治44年に埋め立てられましたが、大池で水死した人の霊を祀る石碑が福恩寺本堂西に建立されています。石碑に書かれている字は摩滅していて、何が書かれているか判然としません。なお、お庫裏さんによれば同寺はもともと伊勢長島にあり、信長による一向一揆鎮圧で迫害されるため寺名をかえて、市内某所をへて住吉町から戦災で大池町に移ったとのことです。

住吉写真6
福恩時本堂
本尊の阿弥陀仏は住吉時代
から戦災を免れました。
(名古屋市中区千代田2丁目9-33)

 紫式部の石碑があった浄土宗法燈山傳光院は天正15年(1587年)僧・傳光が清州に開山、清須越しにて1621年に鉄砲町に移転し、戦災で焼失後、復興し白川幼稚園を開設、名東区名東本町に昭和35年紫式部の墓とともに移転し、星ヶ丘幼稚園が併設されています。
(紫川について:住吉の語り部#1紫川:http://tsutamo.com/fukada/sumi1.pdf
 青松葉事件で処刑された渡辺新左衛門の菩提寺・真宗大谷派守綱寺についても語り部#47矢場町1丁目をご覧になってください。
http://www.fukkatu-nagoya.com/sumiyoshi-kataribe/vol47.html

 また、東漸寺については、江戸末期に東照宮御旅所の一部が寺になったと想像されますが、研究不足で解明しておりません。
 真宗大谷派寂光山・勝鬘寺は清須越し、慶長17年(1612年)に皆戸町に、その後、長島町に移り、成瀬正虎により現在地に創建されたのは寛永9年(1632)、又は慶安年中(1648から52)との説もあります。本堂と山門は創建当時のものであり、太鼓楼は真宗特有の櫓を屋上にあげた形式で、この地の風物となっています。10月15日には親鸞聖人750回忌と庫裏落慶祝いの稚児行列が南大津通の歩行者天国に花を添えています。後藤順正住職ご夫妻は地元イベントにも熱心で毎年の栄ミナミ音楽祭では由緒ある本堂でのフリーヒルズジャズオーケストラ、栄ミナミ男声合唱団の演奏が名物となっています。

住吉写真7
勝鬘寺:鐘楼、山門、太鼓楼、奥が本堂
(HPより、平成の初めの写真)
住吉写真8
稚児行列記事:南大津通りホコ天

 また、白林禅寺、政秀寺、法光寺に関しては、改めて別の機会に紹介させていただきます。全てのお寺に共通するのは、戦災で殆ど焼失、都市復興計画で敷地の50%以上を供出させられ、また、墓が平和公園などに移設したことに伴い檀家離れが激しく、土地の不動産賃貸で経営を維持されているようです。

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【新会員自己紹介】

大島 和希氏
火曜グループ

大島 和希(おおしま かずき)
三菱日立パワーシステムズ株式会社
中部支社長

【三菱日立パワーシステムズ株式会社】
〒450-6420 名古屋市中村区名駅三丁目28番12号 大名古屋ビルヂング20階
TEL:052-856-4550
URL:https://www.mhps.com/jp/

出身:1964年10月生まれ。出身地:東京。
職歴:原動機(火力(ボイラ、タービン、ガスタービン)、水力、風力、地熱、燃料電池等発電プラント)の
    国内営業一筋。(MHPS転籍後は火力のみ。)
    1987年 慶大(経)卒、三菱重工業株式会社入社。本社国内原動機営業部門に配属。
    1990年 長崎造船所国内原動機営業部門へ異動。
    2001年 中部支社電力営業部門へ異動。
    2012年 長崎造船所国内原動機サービス営業部門へ異動。
    2014年 三菱日立パワーシステムズ発足。同年中部支社へ異動。
    2018年 現職
家族:妻と三男一女
趣味:ゴルフ、ジョギング、簡単な料理

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与那覇 靖氏
火曜グループ

与那覇 靖(よなは おさむ)
医療法人尚豊会
理事長

【医療法人尚豊会】
〒512-0911 三重県四日市市生桑町458-1
TEL:059-330-6000
URL:https://libra-sasashima.jp

初めまして。医療法人尚豊会理事長の与那覇 靖(よなは おさむ)と申します。この度は当法人の加入をご承認いただき、誠にありがとうございます。私は三重県四日市市にて、総合病院と健診センターの運営をしております。今年開設20年目を迎えました「みたき総合病院」の他、昨年秋に「リブラささしまメディカルクリニック」をささしまライブに開設、今年春より健診センターをスタート致しました。
当健診センターは「健診受診率及び二次健診受診率の向上」を目標としており、従来の健診とは異なる「新しいスタイルの健診」を実施しております。まず、健診結果の説明や健康相談の時間をしっかりと取るため、1日の受診者数を少なく設定しています。健診結果は「メディカルレター」として解説レポートを作成し、個別にご説明を行います。さらに健診終了後には、ゆっくりと食事を召し上がっていただけるよう、レストランでのお食事をご用意するなど、「健診を受けることが楽しみ!」と思っていただけるような健診事業を目指しております。
様々な活動や交流を通して、会員の皆様へ「健康の大切さ」をお伝えできれば幸甚です。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。

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12月度産業懇談会のご案内
グループ名 世話人 開催日時 会場
火曜グループ

富田 茂
広井幹康
深田正雄

12月4日(火)
18:00〜20:00
料亭蔦茂
Tel:052-241-3666 
名古屋市中区栄3-12-32
(オカリナ・三味線の演奏ユニット「平安桜」の余興あり)
水曜第1グループ

淺井博司
足立 誠
落合 肇

12月5日(水)
18:00〜20:00
呉竹
Tel:052-231-2247
名古屋市中区錦1-19-30
名古屋観光ホテル 2F
水曜第2グループ

片桐清志
大倉偉作
見祐次

12月12日(水)
18:00〜20:00
名古屋 浅田
Tel:052-569-5151
名古屋市中村区名駅1-1-4
JRセントラルタワーズ・タワーズプラザ12階
木曜グループ

河村嘉男
倉藤金助
田憲三

12月6日(木)
18:00〜20:00
札幌かに本家 栄中央支店
Tel:052-263-1161
名古屋市中区栄3-8-28
(プリンセス大通り・丸栄南)

※全会場「中部経済同友会」で予約いたしております。
※会費は実費を後日請求いたします。お申込みの方には別途詳細ご案内を送付いたします。

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【産業懇談会「代表幹事講話」ならびに「新年合同懇親会」開催日程】

産業懇談会「代表幹事講話」ならびに「新年合同懇親会」のご案内

 毎年恒例の産業懇談会4グループ新年合同懇親会を、下記の通り開催いたしますのでご案内申し上げます。
本年は、須藤誠一筆頭代表幹事からご講話をいただきます。また、年の初めに、産業懇談会メンバーの皆様に親睦を深めていただきたく、あわせて新年合同懇親会を開催いたします。是非とも多数ご出席くださいますようお願い申し上げます。

日時 平成31年1月29日(火)17:30〜20:00
17:30〜18:30 須藤筆頭代表幹事 講話
18:45〜20:00 新年合同懇親会(着席ビュッフェ)
場所 ホテルナゴヤキャッスル 
講演:2階 青雲の間
懇親会:2階 天守の間
ご講話演題 「私の歩んできた道」
本状ご案内先 代表幹事および産業懇談会会員の皆様
平成30年度に中部経済同友会にご入会された新入会員の皆様

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【お知らせ】

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【コラム】

コラム1 【さっかの散歩道】 No.5
コラム【さっかの散歩道】

長瀬電気工業株式会社
代表取締役 屬 ゆみ子

『 Beaujolaisの季節 』

 11月第3木曜日、フランスワインの今年の出来を占う収穫祭が、いつの頃からか日本の行事となった。解禁日の夜明けが、世界で一番早くやってくる日本。一昔前は、あちこちのワインバーやレストランで、皆がこぞって声高らかに乾杯をしたものだ。と、過去形になっているが、私は今年もカウントダウン乾杯をさせていただいた。解禁前には必ず「今年は近年にない良い出来」などという講評があって、一度も「今年は最悪の出来」という前評判は聞かない。とにかく早飲みの新酒なので、ワイン自体の味わいもさることながら、その年のブドウのポテンシャルを、皆で侃々諤々するお祭りなのだ。このヌーボーに使われる「ガメ」という品種は、何もヌーボーだけに使われているわけではない。ボジョレイ地区にはムーランナヴァンというAOCの赤ワインがあって、それもガメ種で作られている。この品種も、収穫年度によっては長期熟成に耐える力強さがあり、時々びっくりさせられる。総じて、ちょっぴり田舎育ちの、スレていないチャーミングなワインで、尚且つお値段もお手頃、デイリーにはもってこいのワインだと私は思っている。

さっかの散歩道写真1  で、今年のカウントダウン、実はずいぶん前に友人の店に置きっぱなしになっていたヌーボーが2本あると知らされ、ヌーボー(新酒)の古酒(この表現に皆で爆笑した)を前夜に開けた。ビンテージは2011年、7年前のものだったが、色も香りもフレッシュで瑞々しく、ただ味わいは「買って飲む」程のものではないが「今日までよく頑張ったね!!」と褒めてあげたいくらい生きながらえていて、ちょっと幸せな気分にさせてくれた。そして12時を過ぎ、今年のヌーボーを開ける。収穫前から今年のブドウはいい出来だとは聞いていたし、9月にイタリアで収穫前のブドウをつまみ食いした時も、その熟成感に感心していて、今年はヨーロッパ全土に渡り良いブドウができており、この力強さはきっと長期熟成に向くのではないかと、個人的には期待も高く、2018年は「買い」。リリースされる頃にはセラーにまとめ買いのスペースを確保しなければと思った。

 ワインの収穫祭といえば、実は毎年11月3日に多治見の修道院で「ワインフェスタ」が開かれているのをご存じだろうか。今年で15回目を迎えるこのお祭りは、昭和区にあるAJU自立の家という障害者自立支援の社会福祉法人が主催している。ブドウのお世話やワイン造りを障害者たちがお手伝いし、そこで得た収入で、自立した生活を営めるよう、各方面の支援を受けて始まった行事だ。前売り券を買うと、入場時にグラスとワインが一本貰えて、みなそれを片手に、ぶどう棚の下でピクニックをする。この楽しさが口コミでじわじわ広がって、今年は4000人超えの入場者で、慣れてきた強者は、ぶどう棚の下で、カセットコンロをセットし、鍋パーティーなどしていたりする。
 実は私はこの日、年に1回だけ、真っ白いコックコートを着て、会場内のテントで1週間かけて仕込んだ<牛肉赤ワイン煮込み>を作って販売している。これは、このワインフェスタでしか食べられないので、すっかり名物(と自分では思っている)となった。今年はメニューを増やし<トマト煮込みおでん>も供した。すでに参加も6回ともなると、毎年楽しみにしてくださるファンもいて、有り難いことに、真っ先に探して来てくださる。今年は朝9時半から販売を開始したところ、12時前には完売をしてしまった。できることなら来年はもう少し販売数を増やして…と思うのだが、一人で仕込みも調理もするので、さすがに牛肉を捌くのは、20kgが限界かもしれない。

さっかの散歩道写真2

さっかの散歩道写真1
トマト煮込みおでんと     
牛肉赤ワイン煮込

 メインステージでは、コンサートあり、島幸子ソムリエールのワイン講座あり、障害を持つスタッフが一生懸命に来場客のお世話をしている。誰もが笑顔で参加する素晴らしいイベントだと思うので、興味のある方はぜひ来年ご参加を。ちなみに多治見が手狭になったので、現在は小牧市の野口にもワイナリーをつくり、こちらは醸造施設やお土産コーナー、カフェも常設されていて、そこでのお祭りはゴールデンウイーク前に行われている。

 ところで、ボジョレイ以外の新酒は、フランス国内ではプリムール、イタリアではプリミティーボ等と言われ、ちゃんと各地で品評会と新酒祭りが行われている。何年か前に、フランス南部のアヴィニヨンでこのお祭りに参加した。外郭門から各ワインの作り手が中世の出で立ちでパレードをし、教会前では騎士に扮した寸劇があり、カウントダウンで花火が上がり、翌日には、街中のスーパーやカフェ、レストランで、新酒がタダで飲み放題だった。この時、アヴィニヨンの新酒祭りに日本から女性がやってきたと地元メディアの取材攻勢に合い、図らずもラジオの生インタビューとローカル新聞に載る羽目になったのを懐かしく思い出す。ボジョレイだけがフランスの新酒では無いと言わんばかりの取材だった。確かに、ガメ種より、ローヌのグルナッシュ種の方が、新酒にしても濃くて飲みごたえはあるのだが。
 そしてその時代、みな「ボジョレーヌーボー」と、発音し、明記されていた記憶があるが、最近は「ボージョレヌーボー」と、発音が変わっている。これは、何か理由があるのだろうか?どちらの発音でもカタカナで読んでしまえば、フランス語とは似て非なるものなのだが…。日本人のこだわりは時々よくわからなかったりする。と云う私も日本人なのだが。

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コラム2 【保健師からの健康だより】 No.176
コラム【保健師からの健康だより】

株式会社 スズケン
保健師 丹羽 香織

『 ヒートショックにご注意! 』

 日増しに寒さが身に染みるようになりました。寒い日にはお風呂にゆっくり浸かって温まりたくなりますね。
 入浴は心身の疲れを癒してくれる効果がありますが、体調など状況によっては重大な事故が起こる場面でもあります。特に冬場は“ヒートショック”の影響とされる入浴時の事故が多く起きています。東京都健康長寿医療センター研究所が行った全国調査によると、入浴中の心肺停止者数(2011年)は11月あたりから増え始めて12〜1月にピークを迎えています。
 ヒートショックとは、暖かい場所と寒い場所の移動に伴う急激な温度変化により血圧が大幅に変動することで起こる健康障害です。入浴においてヒートショックに至る過程としては、暖かい部屋から寒い脱衣所・浴室への移動(血圧上昇)→湯にしばらく浸かる(さらに血圧上昇後に血圧低下)→入浴後に寒い脱衣所へ移動(血圧上昇)といった様に、急激な寒さと暑さにより血圧が変動して起こります。
 血圧が上昇することで心筋梗塞や脳卒中などを引き起こしたり、一方低下することでめまい・ふらつきが起きたり意識を失ったりして転倒や溺死につながることもあります。そしてこれは高齢者だけに起こるわけではなく、生活習慣病にかかっていて動脈硬化が進んでいる方なども注意が必要です。

〜安全な入浴のために〜(参考:消費者庁公表資料)

  1. 入浴前に脱衣所や浴室を暖め、部屋間の温度差を減らす
  2. 湯温は41 度以下、湯に浸かる時間は10 分までを目安にする
  3. 浴槽から急に立ち上がらない
  4. 飲酒時と食後すぐの入浴は控える
  5. 精神安定剤、睡眠薬などの服用後の入浴は危険なので注意する
  6. 入浴前に家族に声を掛ける。家族は入浴者の入浴時間が長いときには声を掛ける
  7. 入浴前後に水分補給をして血管が詰まりやすい状態を作らないようにする

 ヒートショックが冬場に起こりやすいことについては認識されていても、特に持病が無く普段元気な方でも入浴中の事故が起きていることはあまり知られていないように思います。    
 また入浴時のみでなく、屋内外の移動はもちろん夜間のお手洗いなど含め温度差の大きい場所を移動する際は起こりうるものです。
 自分にも起こることかもしれない、とできる注意はしていただきつつ、これから本格的に迎える冬を健やかにお過ごしください。

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コラム3 【「ほん」のひとこと】 No.121
コラム【「ほん」のひとこと】

株式会社 正文館書店 取締役会長
谷口正明

『 日本語びいき 』
清水由美著・ヨシタケシンスケ画 中公文庫

 著者は、外国人に日本語を教える日本語教師です。「母語を外から見る目」をもって語る言葉には、ユニークな知見が溢れています。五十音表は動詞の活用表でもある、日本語は述語中心の言語なので主語の省略が多い、にもかかわらず「言いさし」すなわちしっぽの省略も多い、など。こう書くと小難しい文法書かと思われるかもしれませんが、至って読み易く面白い本です。タイトルに「びいき」とあるように、日本語への愛情に満ちたエッセイ風の作品です。一年ほど前にこのコーナーでご紹介した『あるかしら書店』の著者ヨシタケシンスケによるほのぼのとした挿画も楽しめます。
(『日本人の日本語知らず』2010年世界文化社刊を増補改題したものです)

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コラム4 【苗字随想】 No.198
コラム【苗字随想】

片桐清志

「同」「友」「会」と苗字

 同友会でもこの時期は忘年会の話題が多くなる。忘年会の話のネタに同友会と苗字の関係に注目してみた。
 「同友」さんはさすがに見つからなかったが、ドウユウさんでは「道勇」が見つかった。
 「同」で始まる「同」姓は10種見つかった。一字姓の「同(ドウ)」もある。ランキングで上位は見当たらないが、ユニークな苗字としては同姓(ドウセイ・ドウケ)、同前(ドウマエ・ドウゼン)、同々(ドウドウ)、同家(ドウケ・ドウヤ)、同道(ドウドウ・ドウミチ)が見つかった。
 「同」が下付く姓では大同(ダイドウ)が9882位に、山同(サンドウ)、本同(ホンドウ)、千同(センドウ)、和同(ワドウ)が見つかった。
 「友」は苗字でも人気が高く、「友」姓は112種見つかった。一字姓の「友(トモ)」もある。ランキングでも友田(トモダ・トモタ)の1410位、友野(トモノ)の2429位、友利(トモリ・トモトシ)の2603位、友永(トモナガ)の3186位、友松(トモマツ)の3490位、友部(トモベ)の3714位が上位に並ぶ。ユニークな苗字では友国(トモクニ)、友好(トモヨシ)、友抜(トモヌキ)、友添(トモゾエ)、友綱(トモヅナ)、友金(トモカネ)が見つかった。
 「友」が下に付く姓のランキング上位では大友の525位、長友の959位。住友の1869位、永友の2974位などが見つかった。
 「会」も結構人気が高い。種類こそ24種と少ないが、一字姓の「会(アイ・カイ)」もあり、ランキング上位の苗字が多い。会田(アイダ・カイダ)が889位、会沢(アイザワ)が2289位、会津(アイヅ)が4584位だ。ユニークな苗字では会場(アイバ・カイバ)、会見(アイミ)、会所(カイショ・アイショ)、会退(アイタイ・アイノキ)が見つかった。
 「会」が下に付く苗字のランキング上位では渡会(ワタライ・トカイ)の2382位、度会(ワタライ・ドアイ)の9332位が見つかった。ユニークな苗字では出会(デアイ)、立会(タチアイ)、打会(ウチアイ)が見つかった。

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【平成30年11月号編集後記】

 「ヘルプマーク」をご存じだろうか?義足や難病の患者等、外見からは分からなくても援助や配慮を必要としている方々が、周囲の方に配慮を知らせ、援助を得やすくするために考案されたマークだ。赤地に白抜きのプラスとハートがデザインされている。2012年10月に都営地下鉄大江戸線にステッカーが初めて登場し、全国の公共交通機関に拡大中だ。2017年7月にはJISにも登録されている。名古屋市でも今年10月から導入を始めたので目にする機会も増えている。「ヘルプカード」を着けた人を見かけたら席を譲ってあげる配慮をお願いしたい。
 このマークの普及活動を当地区で展開している団体が「特定非営利法人いのち繋ぐプロジェクト(https://inochitsunagu.org/)」だ。このNPOを立ち上げた小ア麻莉絵さんの講演を聴く機会があった。四日市在住だった小アさんがこの運動を始めたのは自分自身が骨髄異形性症候群(MDS)と診断され、余命5年宣言を受けたことがきっかけだ。1年間の入院闘病生活後、残された日々をどう生きるかを考えたとき、自分と同じ悩みを持つ人の役に立つことをしたいとこの地域での「ヘルプマーク」の認知度向上活動を決意する。
 登壇した小アさんは35歳という若さもあり、話し方や動きや表情などの外見からはMDS患者には見えない。しかし、階段の登り降りや長時間の電車の移動は大きな負担になる。その負担が引き金となって、人ごみの中でいつ倒れるかわからない不安に襲われる。運よくシルバーシートに座れた時に、年配の人が前に立った時に席を譲れないのが精神的に大きな負担になると言う。自分自身が体験しているからこそ、同じ悩みを持つ人に寄り添う活動ができるとの思いが小アさんを突き動かしている。
 突然の余命宣告を受けながら、小アさんは自分自身を「しあわせ」だと言う。MDSと診断されるまでは見えなかったことが見えるようになった。「生きている一日の大切さ、素晴らしさ」を感じるようになったと言う。どんな状況であれ、今の自分にできることを精いっぱいしようという小アさんの表情は輝いて見えた。
 講演を行う目的は、支援を呼びかけることもさることながら、生き方を考えるきっかけにして欲しいからだと言う。「普通」であることのすばらしさを気付かせて貰った。因みにこの講演を提供してくれたのは「認定特定非営利法人ささえあい(http://sasaeai.jp/)」だ。発足から10年目の今年、愛知県から「認定NPO」の認可を受けた。支援活動に参加できることの「しあわせ」を噛みしめたひとときだった。

(片桐)