産業懇談会【メールマガジン 産懇宅配便】 第190号 2018.3.30 発行

メールマガジン■産懇宅配便■

平成30年3月度(第190号) 目次
【30年2月度 産業懇談会(水曜第2G)模様】
【30年2月度 産業懇談会(水曜第1G)模様】
【30年3月度 産業懇談会(木曜G)模様】
【30年3月度 産業懇談会(火曜G)模様】
【30年3月度 産業懇談会(水曜第2G)模様】
【名古屋いちばん物語】 No.107
【新会員自己紹介】
服部 晋吾氏

株式会社クイックス 取締役会長

香川 裕子氏

三幸電子株式会社 監査役

妻木 宏文氏

株式会社ベネフィット・ワン 執行役員中部日本営業部長

【4月度産業懇談会のご案内】
【5月度産業懇談会のご案内】
【お知らせ】
【コラム】
コラム1 【保健師からの健康だより】 No.168
コラム2 【「ほん」のひとこと】 No.113
コラム3 【苗字随想】 No.190
【30年2月度 産業懇談会(水曜第2G)模様】

テーマ: 『 鉄鋼業から見た中国 』


日  時:平成30年2月14日(水) 12時00分〜14時00分
場  所:名古屋観光ホテル 18階 伊吹の間
参加者:22名

スピーカー:
山本 孝(やまもと たかし)
阪和興業株式会社 理事

山本 孝氏

1.会社概要
 阪和興業は、鉄鋼をはじめ非鉄・金属原料、食品、石油・化成品、木材、機械などさまざまな商品を幅広いお取引先に提供。変化の激しいビジネス環境でも持続的に成長し、お客様のニーズに応える企業を目指している。

2.世界の鉄鋼業界の動き
 2017年の世界の粗鋼生産量は約16.9億トンで過去最高を更新。その約半分8億トンを占める中国に対し、日本は約1億トンで過去10年間は横ばい状態。欧米先進国や日本の低迷に対して、中国・インドなどの新興国が世界の成長力を牽引。勢力を強める中国鉄鋼メーカーに対抗するため、鉄鋼業界では生き残りをかけた合従連衡が加速している。

3.中国鉄鋼業界の現状と展望
 2000年代初頭から経済成長を背景とした内需の拡大が継続。その後リーマンショックの影響で世界の鋼材需要が落ち込む中、中央政府の「4兆元投資(約60兆円)」による需要喚起が奏功し、2013年まで内需は拡大。粗鋼生産能力及び、生産量が増加するも、2014年以降の景気減速で粗鋼生産は減速に転じる。中央政府では鉄鋼メーカーの淘汰・集約を指示するが、省政府は雇用維持を理由に従わず、その結果需給バランスは崩れ、鋼材価格が著しく下落し、鉄鋼メーカーは赤字を余儀なくされた。中央政府は国内需給バランスの是正に向け、全人代で生産能力の削減を決め、加えて需要喚起策として積極的なインフラ投資を実施する意向を表明。その結果2017年、世界的な景気回復、中国内需の拡大を受け、鋼材価格の上昇及び、粗鋼生産は回復した。
 中国の鋼材需要の内訳は、全体の7割弱を不動産・インフラ等の建設向けといった内需が支えており、近年の自動車需要の拡大を受けて自動車向け鋼材も増加している。こうした拡大基調を背景に、中央政府では環境問題や粗鋼生産能力の削減を掲げ、違法で粗悪な「地条鋼」を排除。環境汚染・粗悪品対策の強化にも努めている。

4.中国の経済政策の変遷
  ケ小平の改革解放政策以降、中国の経済は急速に発展を遂げてきた。2013年の習近平政権の誕生以降は、急拡大した経済故に拡大過程に内在する深刻化した諸問題(格差の拡大、環境問題、腐敗の充満など)が台頭。景気の減速、中所得の罠、体制移行の罠にも直面し、経済成長率が徐々に鈍化傾向にある。
 このため、習近平政権2期目では、一帯一路構想、AIIB(アジアインフラ投資銀行)等によって、人民元の国際化と、中国を中心とした経済圏の確立を目指している。


>>目次へ

【30年2月度 産業懇談会(水曜第1G)模様】

テーマ: 『 グローバル化と産業人材育成の課題 』


日  時:平成30年2月21日(水) 12時00分〜14時00分
場  所:名古屋観光ホテル 3階 桂の間
参加者:34名

スピーカー:
岡田 亜弥(おかだ あや)
名古屋大学 副理事(国際貢献担当) 
大学院国際開発研究科 教授

岡田 亜弥氏

1.グローバリゼーションの進展
 アジア・アフリカを中心とする開発途上国・新興国では、近年著しい経済成長を遂げてきた。これらの国々では、これまで労働集約型の産業が中心であったが、徐々にハイテク製品など産業の高度化が進展。
 またグローバリゼーションの進行に伴い、産業の国際分業体制も大きく変化しており、開発途上国・新興国の企業も、GVC(グローバル・バリュー・チェーン)の一端を担い、下流の生産工程のみならず、上流の研究開発まで担うケースも増えてきている。
 一方、多国籍企業の投資動向を見ても、経済成長を背景に市場としての魅力が増した開発途上国・新興国への投資が急増しており、自動車産業に代表される製造業においても、アジアへのシフトが顕著に見られる。

2.グローバル労働市場の変化とスキル人材獲得競争
 日系企業においても海外進出は増加傾向にあり、とりわけ中国・インド・ASEAN諸国などのアジアへの進出が顕著。こうした国境を越えた企業活動の進展と共に労働市場もグローバル化しており、グローバル労働市場においてスキルを持つ人材の獲得競争が激化している。
 このため、欧米やアジア諸国では高スキル人材の育成を重要な課題として認識し、国家が主導して教育・産業人材育成制度の導入や制度改革を進めている。
 少子高齢化・人口減少による就労人口の減少が加速しているわが国にとっても、グローバル競争で通用する高スキル人材の育成は喫緊の課題である。

3.名古屋大学「グローバル企業人材育成特別課程」の新設
 こうしたニーズに応えるため、名古屋大学大学院国際開発研究科では「グローバル企業人材育成特別課程」を新設し、平成30年4月に一期生が入学する。この特別課程は、海外展開を行っている日系企業などに所属し、海外拠点への派遣が今後予定されている若手・中堅の社会人を対象にした1年制の大学院博士前期課程。アジアを中心とした開発途上国ビジネスに役立つ専門科目を学び、1年間で修士の学位を取得することが可能である。
 授業は全て英語で行われ、各国から来日している外国人留学生とともに学ぶことで、海外ビジネスに必要な英語力、コミュニケーション力を習得することができる。また、個別のニーズに応じ、派遣予定国での実地研修などオーダーメイドのカリキュラムを組むことが可能。名古屋にいながら、国際環境に身を置くことができ、留学生とともに学ぶことで、多様な価値観や文化を尊重・理解し、国際感覚を身に着けることもできるだろう。海外拠点でリーダーとして活躍できる人材の育成のために、企業の方々にはぜひこの特別課程を役立てていただければ幸いである。


>>目次へ

【30年3月度 産業懇談会(木曜G)模様】

テーマ: 『 アンチエイジングと食生活 』


日  時:平成30年3月1日(木) 12時00分〜14時00分
場  所:名古屋観光ホテル 3階 桂の間
参加者:33名

スピーカー:
中村 美千代(なかむら みちよ)
管理栄養士・栄養コンサルタント

中村 美千代氏

 木曜グループのスピーカーは、管理栄養士・栄養コンサルタントとして、料理教室、栄養講座、講演等にて、「健やかな人生・美しさに役立つ食事力・食選力」をご提唱されている中村美千代氏をお招きした。講話の要旨は以下の通り。

1.アンチエイジングのポイント
 アンチエイジングの前提となるのは健康である。また健康は、栄養・休養・運動の3本柱のバランスによって成り立っているため、有効な食事によって栄養を正しく摂取することはアンチエイジングの重要なカギを握る。
 身体や皮膚が老化する原因は、(1)加齢(体の機能低下、40歳過ぎから顕著に)、(2)糖化(過剰な糖質による体の焦げ)、(3)酸化(酸化ストレスが原因の体の錆び)、(4)腸内細菌のバランス悪化が起因となるため、アンチエイジングには、(1)タンパク質摂取と筋肉をつけ代謝を上げること、(2)糖質制限で糖化を防ぐこと、(3)悪い油を避け、抗酸化物質を摂り入れること、(4)善玉菌を増やして腸内環境を整えることの4つがポイントとなる。

2.アンチエイジング方法
 1)プチ糖質制限食(ロカボ)は、糖化を防ぐため、1日に摂取する糖質を140gまでに制限し、主として夜の炭水化物(主食のご飯など)を抜く方法。その前提としてジュースやお菓子類、お酒などの糖質が多い食品の摂取も見直す点と、制限した糖質分のエネルギーをタンパク質の摂取で補うことが重要となる。
 2)酸化(活性酸素)を防ぐには、過酸化脂質、トランス脂肪酸など悪い油を断つことと、ビタミンACE、良い油、フィトケミカルなどの抗酸化物質を取り入れることが重要。特に、お惣菜系の揚げ物、スナック菓子、カップラーメン、即席麺などの時間が経過した揚げ物や、キャノーラ油、サラダ油、マーガリンなど加工された食用植物油脂は厳禁。一方、抗酸化物質のオススメは、トマト(リコピン)、サケ・桜えび(アスタキサンチン)、ごま(ゴマリグナン、セサミン、セサミオール)、大豆製品(イソフラボン、サポニン)で、最近では鶏胸肉、まぐろなどに含まれるカルノシン(イミダゾールペプチド)も注目されている。
 3)腸内細菌を育てるには、腸内細菌を理想のバランスにすることが重要。腸内細菌の黄金比は、善玉菌2割:悪玉菌1割:日和見菌7割で、善玉菌を増やすには、発酵食品(乳酸菌、ビフィズス菌)、食物繊維(特に水溶性食物繊維)、オリゴ糖(味噌、醤油、大豆、ニンニク、ゴボウ、はちみつなど)の摂取が効果的。

3.有効な食事のススメ
 有効な食事には、今すぐ排除する(清涼飲料水などのジュース、酸化した揚げ物)、ほどほどにする(炭水化物、揚げ物、スイーツ、フルーツ、アルコール適量)、積極的に食べる(タンパク質、オメガ3系の油、抗酸化物質、水溶性食物繊維、発酵食品)の3つを区分することが大切。また食べ方(食べる順番や時間帯)や、食事の構成(3食の食事で何を食べるべきか)にも注意を払うべき。
 健康は大切で、病気になって初めて健康のありがたさが分かるもの。だが私たちは健康のためだけに生きているわけではないので、何を選んで何を食べるかが重要。本講演が皆様の食生活改善の一助になれば幸いである。


>>目次へ

【30年3月度 産業懇談会(火曜G)模様】

テーマ: 『 目指せ!誰も知らないけどお世話になっている会社 』


日  時:平成30年3月13日(火) 12時00分〜14時00分
場  所:名古屋観光ホテル 3階 桂の間
参加者:33名

スピーカー:
村井 聖(むらい きよし)
名阪急配株式会社 取締役社長

村井 聖氏

1.当社の概要
 物流業界は日本全体で約25兆円市場、就業人口の約4%を占めている。当社は愛三岐を主な基盤に、コンビニのおにぎり、お弁当など冷凍食品、チルド食品、常温商品などの配送、スーパーのお肉や野菜、卵などの食材配送などの食品メーカーから販売店をつなぐ事業者向けの配送が主力事業であるが、物流センター運営・管理を受託し、配送〜納品、アフターフォローといった付加価値の高い物流サービスの提供にも取り組んでいる。

2.当社の特長
 社員全員が“アロハスピリット((1)やさしさと思いやり、(2)調和と融合、(3)喜びを持って柔和に、(4)ひたすら議虚に、(5)忍耐と我慢)”という共通の価値観を持っている。これは、自分がクレーム対応に追われ、心身ともに疲弊していた頃、たまたま入った喫茶店で読んだ雑誌で「アロハ」の語源を知り、それを読んでいるうちに、目の前がパッと明るくなった経験で生まれたものである。このアロハの気持ちを理解していれば、従業員も頑張る元気が沸いてくるはずと考え、当社の共有の理念としている。
 このほかに、“4本の柱”((1)長期的考え方、(2)正しいプロセスが正しい結果を生む、(3)人とパートナー企業を育成して企業価値を高める、(4)継続して根本問題に取組んで組織的学習を行う)によって、個人の力を最大限に発揮し総合技術の向上を図り、“DO EXACTLY”でお客様の描く物流イメージを具現化することで、「自信と誇りに満ちた人生を歩める社員を創る」という経営ビジョン実現を目指して社業に取り組んでいる。

3.当社のあゆみ
 1973年に輸出貨物梱包業として創業。翌年から運送業へも参入し、大手企業との取引開始とともに拠点を拡大。その中で大きな転換点となったのは、新聞社との取引による「深夜市場」の開拓であった。これに自動車部品会社との取引による「厳しい時間管理」への対応、電子部品会社との取引による「荷扱い品質管理」などの経験も加えて、これら全てが現在の主力事業となる食品事業者向けの配送事業のノウハウに繋がっており、お客様から「なくては困る(不可欠)」と言われる会社を目指している。

4.今後の課題と取り組み
 当社では、ISO認証取得への取り組みに加え、新卒採用の開始、運転技能などの安全教育、DMP(管理者)研修などの社内研修制度、改善活動など人材育成制度の強化を進めている。
 冒頭にご覧いただいた当社のプロモーションビデオのBGMは、社員が作詞・作曲し演奏まで行った当社の社歌である。これを作詞したのは新入社員で、社内研修中の雑談のなかで、音楽が趣味だと言った彼の言葉をきっかけに、作詞作曲を任せることになった。形になるまで時間はかかったが、こういった社員一人ひとりとのコミュニケーションを大切にしたいと思っている。
 従業員定着率などの課題も残っているが、これからの名阪急配においては、「会社の成長は社員がカギ」という思いをストレートにぶつけ、社員を信じて今後も取り組みを続けて行けば、思いが通じると信じている。


>>目次へ

【30年3月度 産業懇談会(水曜第2G)模様】

テーマ: 『 NTTファシリティーズの大規模災害における取組について 』


日  時:平成30年3月14日(水) 12時00分〜14時00分
場  所:名古屋観光ホテル 3階 桂の間
参加者:29名

スピーカー:
今井 秀哉(いまい しゅうさい)
株式会社NTTファシリティーズ東海 取締役

今井 秀哉氏

1.当社の概要
 NTTの分割民営化にともない、NTT100%子会社として1992年12月に発足。NTTグループ向けの通信用建物と電気のインフラ部分の企画から設計、構築、維持管理を事業の柱としつつ、これまで培ったノウハウを生かして一般市場向けにも事業拡大を進めている。5300名の電気と建築のスペシャリストが集まる技術者集団で、「決して電話を止めるな」という先輩からのDNAを脈々と受け継ぐ、誠実で真面目が特長の会社である。
 本日は、東日本大震災当時、災害対策室長として災害対応、復旧へ従事した経験をお話したい。

2.東日本大震災の概要と被害状況
 東日本大震災は、2011年(平成23年)3月11日に、東北地方太平洋沖を震源に発生した。「地震、津波、原発事故」の三大災害を人類史上初めて同時に経験することになった大規模災害である。
 東北地方を中心に、電気、ガス、水道、交通網の壊滅的な被害を及ぼし、首都圏においても帰宅難民の発生など、東北・関東地方を中心とする広い範囲に甚大な被害をもたらした。この地震により、宮城、岩手、福島の太平洋沿岸の建物が津波により多数壊滅状態となり、地震による変電所の停止や電柱の倒壊による長時間停電の発生、電柱の倒壊や橋の損壊による通信ケーブルの断絶など、通信用電源や建物へ深刻な被害をもたらした。

3.復旧への取組み
 当社では、震災の直後から災害復旧マニュアルに従い、速やかに災害対策本部・室が立ち上がり、全国の社員や協力会社の社員との広域支援体制の確立、災害支援物資の調達と現地までの移動手段の確保など、復旧への取組みを行なった。応急復旧活動として、長時間停電に伴う電源救済(移動電源車、レンタルエンジン)、電力、建物設備の緊急点検および応急復旧、津波により流出したビルの応急復旧を推進。とりわけ、災害復旧と計画停電に対応した燃料調達・確保と燃料輸送や、原発事故への対応では、福島第一原発における計画区域内の復旧活動へも全社を挙げて取り組んできた。また通信用電源、建物の本格復旧では、津波に強い通信用電源や通信用建物の構築など、震災時における復旧活動の経験を活かし、情報通信サービスの信頼性の確保のために災害対策を強化していく。

4.最後に
 歴史を調べてみると、愛知県の大部分は1300年前に海であったことが分かっている。そのため、「女、蟹、倉、袋」などの、災害を想起させる危ない地名には注意が必要である。当社では、建物安全判定サポートシステム(揺れモニ)や、ご家庭でできる防災対策についても情報提供させていただいているので、皆さまの防災活動の一助となれば幸いである。
 余談ではあるが、週末にプライベートで名古屋城の観光ガイドボランティアを行なっており、実はリピーター率No.1ガイドである。桜の開花は目前、名古屋城には緑色の花を咲かす「御衣桜(ぎょいこう)」という珍しい桜の木もある。名古屋城ご見学の際には、ぜひお声がけください。


>>目次へ

【名古屋いちばん物語】 No.107


テーマ: 『 「住吉の語り部となりたい」 シリーズ第84回 』

料亭つたも主人
深田正雄(栄ミナミ地域活性化協議会)

料亭蔦茂の「おもてなし」と名妓連

 料亭蔦茂・創業105年の歴史において、一つの事件は、昭和2年の金融恐慌により神田銀行破産に伴い、店の経営母体である祖父・良矩の証券引受会社が連鎖倒産してしまったことです。ご本家の須成深田家から勘当され、破産申請で全てを精算、事業整理に伴い、戸籍上離婚した妻・山田静江がマイナスから商人宿として蔦茂旅館のみを残して再建、細腕繁盛記さながら頑張って新しいスタートを切りました。
 屋号も山田旅館と変更し、やっと落ち着いた数年後、隠遁・逃亡?生活から戻った良矩と住吉二丁目26番にて蔦茂を再興しました。女将静江の采配に全てを支えられて祖父はニワカ番頭を務めていたようです。三男三郎は昭和6年に誕生、何度も叔父が語っていました。「お袋は朝の送り出しから深夜のお客様の就寝まで働きっぱなし、横になって寝ている姿を見たことがなかった!」。小遣いを貰うときには、静江母は「必要ならいくらでもあげるよ!でも、お母さんがいかに苦労して稼いだお金かわかるよね。大切に使いなさいよ。」涙がこぼれて無駄遣いはできなかったといっています。
 その後、蔦茂は料理店として営業しましたが、戦時下では徴用された三菱電機・王子製紙の役員社宅として活用されていましたが、昭和20年3月名古屋大空襲で栄地区一帯が丸焼け、当店も全焼となりました。

 沢井鈴一氏の「広小路物語」で戦前の住吉界隈について、次のように語っています。

戦前の広小路には、多くの置屋があり、何百人もの芸者がいた。昭和十四年刊行の『名古屋案内』に広小路の芸者のすばらしさを紹介した次のような文がある。

市内の花柳街の中心地は、何といっても広小路の南北に軒を連ねている置き屋のそれでありましょう。そこにはツキたての餅のように温かく、牡丹刷毛のように柔らかな玉の膚を絹衣で包んで、優し物腰で情緒豊かな嬌声を振りまいている一群の女性がいるのです。

置屋とは、芸者をかかえている家だ。芸者は、この置屋で寝起きをする。置屋では客を遊興させず、検番などの依頼に応じて芸者をさしむけた。広小路には二つの検番があった。広小路商店街の地域に属するのが浪越連だ。浪越連には百二十軒の置屋と四百十一名の芸者が属していた。新柳町商店街の地域に属するのが、中検番だ。八十四軒の置屋と三百四十人の芸者が中検番には属していた。浪越連と中検番とは、もともとは東雲連といって、一つの検番であった。当時、名古屋には十六の検番があった。そのうちの大須の廓連、睦連、長者町の盛栄連とあわせ、広小路の浪越と中の検番は五連妓と称せられた。

 以上、引用 http://network2010.org/article/1082

 戦後昭和21年に焼け野原の一軒家として新築された蔦茂旅館は再建を果たしました。 30年頃には料亭営業を中心に、祖母静江の「おもてなしの心」と、母のり子のもとに住み込む仲居20名での接客サービスは好評で、芸者を呼ばなくても楽しめる気軽な店として大繁盛でした。

住吉写真1
昭和初期の静江女将

住吉写真2
昭和32年頃蔦茂仲居さんと深田ファミリー:前列3人目父正矩、
母のり子、正雄、祖母・静江、仲居頭・妙子、支配人・二村正次

 また、芸者衆も名妓連2-3名が常駐し、当時は舎人町・中京連、西区・城西連、富沢町・浪越連などそれぞれ100名を超える芸妓をかかえる検番からも毎日、出入りが多くありました。昭和30年前後は料亭売り上げの30%以上は芸妓花代関連でした。

住吉写真3
昭和30年頃節分祭・仲居頭・
妙子&みち子と二村支配人
住吉写真4
常駐の名妓連かつ子、
大女将・静江

 名妓連のホームページには、下記のように由来が説明されています。 名妓連組合(めいぎれんくみあい)は、愛知県名古屋市中区にある舞妓・芸妓の団体。
 昭和27年、名古屋芸妓株式会社として設立。東新町に自社ビルを持ち、往時には250名以上の芸者を抱え、昭和33年より「名妓をどり」を名鉄ホールにて39回開催、その後、組合員の減少により解散するも、平成12年に名妓連組合として新発足しました。
 現在は芸妓17名、舞妓2名が活躍中!
 日本舞踊、鳴物、太鼓・鼓、笛・邦楽、三味線、唄などの稽古があり、伝統芸である「金の鯱」の習得は必須となっております。 http://meigiren-hp.com/index.html

住吉写真5
名妓連総揃え:前列中央・金丸前理事長、右・かつ子
住吉写真6
伝統芸:金の鯱
住吉写真7
昭和27年舎人町芸者と花街祭
(名古屋情熱時代・樹林舎刊)

 また、舎人町の東検番芸能協同組合は昭和33年中京連芸妓組合と名を改め、昭和27年から「舎人花街祭」では、毎年200名の芸妓さんが街を踊りまわる名物行事でした。
 しかしながら、バブル崩壊のころ舎人町の花街の衰退とともに、解散状態になっています。個人で2-3名が中京連として頑張っているとのことです。

 市内の料亭の廃業とともに、芸者のお座敷も少なくなり検番も名妓連のみとなりました。名古屋伝統文化の担い手となった「名妓連」を支援しようと、名古屋邦楽協会の会長薦田国雄氏(東邦ガス(株)S49〜S59社長)の音頭で「名古屋伝統芸能振興会」を発足。名古屋商工会議所に事務局をおき、現在法人会員70社、個人184名で名妓連の新人育成や名古屋をどりなどの発表会へ助成活動を継続実施しております。

 毎年9月に中日ビルで開催される西川流「名古屋をどり」の金沢、岐阜、名妓連芸者の競演は一興です。今年からは新装御園座での披露が楽しみですので、皆様でお越しいただれば幸いです。

 そして、地域の料亭と一体となった伝統文化の承継としては、金沢が大変先進的です。
 金沢商工会議所が中心となった金沢伝統芸能振興協同組合の支援や「公益財団法人 横浜記念金沢の文化創生財団」の活動を大いに見習っていく必要があると感じております。

>>目次へ

【新会員自己紹介】

服部 晋吾氏
水曜第1グループ

服部 晋吾(はっとり しんご)
株式会社クイックス
取締役会長

【株式会社クイックス 本社】
〒448-0025 刈谷市幸町2-2
TEL:0566-24-5511
【株式会社クイックス 名古屋本部】 常駐場所
〒456-0004 名古屋市熱田区桜田町19-20
TEL:052-871-9190
URL:http://www.kwix.co.jp

 浅井世話人のご縁で、「水曜第一グループ」へ入会させて頂きました株式会社クイックスの服部です。やや高齢でありますが、宜しくお願いします。
 この「水曜第一グループ」は、昨年お亡くなりになりましたイイダ産業株式会社飯田会長が、長い間世話人をされておられたと聞いております。故飯田会長には、別の会で大変お世話になり、また経営についてもご指導を賜り大変不思議なご縁を感じております。
 中部経済同友会は、会長職になり4年を迎え、「自社の経営を客観的」に見直すことができたらと思い、ナカシャクリエイテブ株式会社河合会長様のご紹介で入会させて頂きました。この間、様々なご講演をお聞きして、大変刺激を受けております。

 弊社は、昨年創立70周年を迎え、「印刷業から情報デザイン業へ」を目指して業態変革に挑戦し、川上から川下までトータルで業務代行に取り組む印刷企業であります。
 創業は、中国(満州)で「満州一心舎印刷所」を創設し、敗戦後満州から引き揚げ、刈谷の地で生活困窮者の自立や自活支援を目的に、謄写技術の教育機関「刈谷町営授産所」としてスタートしました。その後、「社会に貢献する事業」「社会の要望に応える」ために、「社団法人愛知謄写技術補導協会」として長い間社会的貢献に取り組んできました。当時に培われて社風は、現在も、当時の「創業の精神」であります「生活力」は、企業理念に引き継がれてきました。
 現在の事業内容は、「販促支援サービス」「マニュアル制作/支援サービス」「P&Dサービス(プリント&デリバリー)」などの情報配信サービスや業務代行サービスを中心に、お客様の販売促進、業務負荷低減、アフターサービス向上をサポートしております。
 ますます、情報の価値が高まり、メディアが多様化する中、当社のコア技術であります情報の「加工技術」と「表現技術」をもとに、「最適な見せ方、届け方、管理法、情報の資産化」などでお客様のビジネスに貢献したいと思います。

 最後になりますが、趣味は登山(現在はトレッキング)、ジャズ鑑賞、ゴルフ(下手ですが健康重視)、座右の銘は「生活力(当社の企業理念)」、現在は愛知大学評議員、同窓会副会長を拝命し、母校への貢献を微力ながら取り組んでおります。

 今後とも宜しくお願いします。

>>目次へ

香川 裕子氏
水曜第2グループ

香川 裕子(かがわ ひろこ)
三幸電子株式会社
監査役

【三幸電子株式会社】
〒450-0003 名古屋市中村区名駅南1丁目6番1号
TEL:052-588-0011
URL:http://www.sanko-net.co.jp

 皆様 こんにちは
 三幸電子株式会社の香川と申します。
 中部経済同友会に入会させていただいてから3年になります。
 この度 “人生100年時代 新しい交流の場を・・・”とのお誘いを受け 産業懇談会水曜第二グループに入会させていただく事になりました。
 弊社は先代香川俊博が、1951年名古屋大学はじめ各大学研究室、企業向けの電子計測機器、制御応用装置の設計、製造を開始し、1959年に合資会社共和電機工業所を設立したことに始まります。
 以来、事業拡張に伴い、本社を愛知郡東郷町、名古屋市天白区、名古屋市中村区へと移転し、また、社名も三幸電子工業株式会社、三幸電子株式会社へと変更しております。
 また、新規事業としまして “屋外型 LEDサイネージ”事業を始めました。
 少人数の会社ですが、コンピューター関連事業のほか 20年程前からは不動産事業へも参入しております。
 “サン・パーキング”(コインパーク)、“サン・○○ビル”(賃貸マンション)、“サンタウン・○○”(飲食ビル)等の看板をお見掛けいただく事もあるかと存じますが、その際には 思い出していただければ幸いです。
 さて、趣味と言えばゴルフでしょうか。
 実は 中部経済同友会への入会の切っ掛けも 今回の産業懇談会へのお誘いも あるゴルフコンペに片桐様とご一緒したご縁あっての事と思っております。
 ゴルフ歴は通算15年程になりますが、ホールインワンを二度達成し絶好調かと思っておりました頃、別の行動で腰椎の椎間板が二つ飛び出すという椎間板ヘルニアを患う事となり、“障害がなければ手術をしないほうが良い”との セカンドオピニオンに従い 日常生活ができるようになるまでの7か月間をおとなしく過ごす事となりました。その後、ゴルフを再開するまでに歳月は流れ、筋力は落ち、すっかり“健康のためゴルフ”となりましたが、ゴルフの出来る幸せを感じながらプレーをしております。
 どうぞ今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

>>目次へ

妻木 宏文氏
水曜第2グループ

妻木 宏文(つまき ひろふみ)
株式会社ベネフィット・ワン
執行役員中部日本営業部長

【株式会社ベネフィット・ワン 名古屋支店】
〒450-6046 名古屋市中村区名駅1-1-4 JRセントラルタワーズ46階
TEL:052-561-1470
URL:http://www.benefit-one.co.jp

 株式会社ベネフィット・ワンの妻木と申します。
 この度「産業懇談会水曜第2グループ」に参加させて頂くことになりました。
 弊社は1996年にパソナグループの社内ベンチャー制度第1号として設立され、福利厚生のアウトソーシングサービスを中心に展開して参りました。現在では『サービスの流通創造』を目指し、報奨制度をポイント化して管理・運営するインセンティブ事業や、健診予約代行から特定保健指導までを総合的に提供するヘルスケア事業など、弊社グループ会社も含め様々な事業を展開しており、名古屋支店では中部エリアを中心に担当させて頂いております。

 私自身は、愛知県瀬戸市出身ですが、社会人になって以来、東京や関西、そして松山と転々とし、久しぶりに名古屋に戻ってきました。諸先輩の皆様との交流を通じて、公私ともに成長できる機会にしたいと思っております。また、あらためて中部のことを知り、その魅力を弊社の全国のお客様へもお伝えするヒントを学んでまいりたいと思います。

 このような機会を頂戴し、大変感謝いたしております。
 なにとぞ、皆様方のご指導ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 以上

>>目次へ

4月度産業懇談会のご案内
グループ名 世話人 開催日時 テーマ・スピーカー 集合場所
火曜グループ

富田 茂
広井幹康
深田正雄

4月10日(火)
12:00〜14:00
服部殖産株式会社
代表取締役社長 服部 浩明氏
不動産図書著者・東京大学医学部卒 中山 聡氏
(不動産の仕組みがわかる本、他 著者)
『不動産業界の現状と、不動産の仕組みについて』
名古屋観光
ホテル
3階
桂の間
(会場変更)
水曜第1グループ

淺井博司
足立 誠
落合 肇

4月18日(水)
12:00〜15:40
株式会社メイドー 
取締役相談役  長谷川款一氏
『(株)メイドー三好工場 見学会』
(ご参加いただく方には、詳細案内を送付いたします。)

名古屋観光
ホテル
2階
曙の間

水曜第2グループ

片桐清志
大倉偉作
見祐次

4月11日(水)
12:00〜14:00
名古屋鉄道株式会社
代表取締役副社長 木 英樹氏
博物館明治村 建築担当課長 石川新太郎氏
『博物館明治村における保存の取組と意義
            ― 過去の技術をつたえる技術 ―』
名古屋観光
ホテル
2階
曙の間
(会場変更)
木曜グループ

河村嘉男
倉藤金助
田憲三

4月5日(木)
12:00〜14:00
株式会社札幌かに本家
代表取締役 日置 達郎氏
『食と健康について』
名古屋観光
ホテル
3階
桂の間
(会場変更)

>>目次へ

5月度産業懇談会のご案内
グループ名 世話人 開催日時 テーマ・スピーカー 集合場所
火曜グループ

富田 茂
広井幹康
深田正雄

5月8日(火)
12:00〜14:00
『ボストン美術館の至宝展 見学会』 名古屋都市
センター
14階
特別会議室
水曜第1グループ

淺井博司
足立 誠
落合 肇

5月16日(水)
12:00〜14:00
榊原建設株式会社 代表取締役 榊原 譲 氏
『建築あれこれ』

名古屋観光
ホテル
2階
曙の間

水曜第2グループ

片桐清志
大倉偉作
見祐次

5月9日(水)
11:30〜16:00
『MRJミュージアム・あいち航空ミュージアム見学会 』 名古屋観光
ホテル
18階
伊吹の間
(バス移動)
木曜グループ

河村嘉男
倉藤金助
田憲三

5月10日(木)
11:00〜16:00
『博物館明治村 見学会』 名古屋商工会議所
(バス移動)

>>目次へ

【お知らせ】

産業懇談会メールマガジン配信について

○メールマガジンの配信は無料です。配信をご希望でない方はお手数でも下記ボタンを押して、メールをご返信いただければ幸いです。ご意見などございましたら、そのメールにお書き下さい。

メールマガジンの配信を ○希望しない

○2016年6月24日より、本メールマガジンの運用ルールを明確にさせていただき、本会をご退会された方は自動的に配信を停止させていただくことといたしました。誠に勝手ながら、ご了承くださいますようお願いいたします。
なお本メールマガジンは、中部経済同友会ホームページ「産懇宅配便ポータルサイト」からすべてのバックナンバーをご覧いただけます。ご退会後はウェブ上で引き続き閲覧いただければ幸甚に存じます。

>>目次へ

コラム1 【保健師からの健康だより】 No.168
コラム【保健師からの健康だより】

株式会社 スズケン
保健師 丹羽 香織

『 大人の食物アレルギー 』

 この3月は気温が平年を上回る日が多かった為か今年は春の訪れを早く感じられた様に思います。このおたよりが届く頃は名古屋市内の桜が満開に咲き誇っているのでしょうか。

 さてこの時期、花粉症に悩まされている方も多いのではないかと思います。
 花粉症は呼吸によりアレルゲンが体内に入ることで花粉に対してアレルギー反応を起こすものです。今や日本では2人に1人が何らかのアレルギー疾患にかかっているというデータがありますが、中でも特に大人の食物アレルギーが増えていることが注目されています。実は花粉症の方は大人の食物アレルギーの中で最も多い“果物・野菜のアレルギー”も発症しやすいことをご存知でしょうか。

 しかしなぜ花粉症と食物アレルギーの発症が関わっているのでしょうか。
 そのメカニズムは花粉のアレルゲンと一部の果物・野菜のアレルゲンの形が似ている為にその果物や野菜を食べた時にも反応してしまうというものです。このようなアレルギーは“花粉・食物アレルギー症候群”と呼ばれ反応を起こしやすい花粉と果物・野菜が明らかになっています。

(表)主な花粉との反応が報告されている果物・野菜

花粉

果物・野菜

シラカンバ

リンゴ、西洋ナシ、サクランボ、モモ、スモモ、アンズ、アーモンド、セロリ、
ニンジン、ポテト、キウイ、ヘーゼルナッツ、マンゴー、シシトウガラシ、等

スギ

トマト

ヨモギ

セロリ、ニンジン、マンゴー、スパイス、等

イネ科

メロン、スイカ、トマト、ポテト、キウイ、オレンジ、ピーナッツ、等

ブタクサ

メロン、スイカ、カンタロープ、ズッキーニ、キュウリ、バナナ、等

プラタナス

ヘーゼルナッツ、リンゴ、レタス、トウモロコシ、ピーナッツ、ヒヨコ豆

食物アレルギー診療ガイドライン2012より

 多いとされる症状は、食べてから2時間以内に起こる「唇や口の中に生じるかゆみ、ヒリヒリ感、腫れ」などです。のどがしめつけられる様に感じることや稀にアナフィラキシーショックをきたすこともあります。

 大人になってから発症した食物アレルギーの対策としては原因である食物を避けることが中心になります。まず医療機関にてアレルギーの原因と起こるルートを明らかにすることが重要ですが、ご自身でも「食べたものを記録する」「食べるものや皮膚・粘膜につけるものの成分表示を確認する」などしながら体調を観察していくことがおすすめです。                   
 また既に“花粉・食物アレルギー症候群”を発症している場合、花粉飛散量の多い時期は原因である食物を避けると同時に「マスクをする」「洗濯物を室内に干す」「帰宅時は体についた花粉を払う」などの花粉対策も重要です。

 大人の食物アレルギーはある日突然起こります。
 もし蕁麻疹、皮膚の腫れやかゆみなどアレルギーを疑うような症状が出たら自己判断で行動せず医療機関にご相談されてくださいね。

>>目次へ

コラム2 【「ほん」のひとこと】 No.113
コラム【「ほん」のひとこと】

株式会社 正文館書店 取締役会長
谷口正明

『 R帝国 』
中村文則著・中央公論新社刊

 「朝、目が覚めると戦争が始まっていた。」と始まるこの小説は、近未来の、日本のようでもある独裁国家を描いています。絵空事とは思えない物語は、やがて世界の「真実」に辿り着きます。その「真実」とは・・・。
 「人が欲しいのは、真実ではなく半径5メートルの幸福なのだ」「つまり人間は変わらないのだよ。(中略)戦争の後は少しだけ反省し少しだけ賢くなり、だがそれも時間が過ぎると忘れまた戦争をする。我々は繰り返す。リピートする。それが人類史だ。」

 著者の中村文則氏は、平成17年に『土の中の子供』で芥川賞を受賞した愛知県出身の作家で、その作品は海外で多数翻訳されています。2月17日(土)に、中日新聞本社で氏のトークショーが開催されました。その中で氏は、『R帝国』執筆の動機に、日本の右傾化を挙げていました。表現の自由が侵されてきている今、「中村があそこまで言ったのだから大丈夫」ということを示し「伝播する萎縮」を食い止めたいとの思いも披露されました。
 因みに、「R帝国」のRはリピート、小説に出てくる謎の組織「L」はリバティを表しているそうです。

 このトークショーのキャパは70名、応募者は約700名とのことでした。私は関係者席でしたが、会場は半分ほどしか埋まっていません。オリンピックで羽生結弦選手が滑る時間と重なってしまったのが原因のようでした。中村氏がショーの途中で「羽生選手が金、宇野昌磨選手が銀」と発表すると、会場は拍手で覆われました。

>>目次へ

コラム3 【苗字随想】 No.190
コラム【苗字随想】

片桐清志

苗字の地下鉄駅めぐり(2)

 前回に続いて、今回も苗字と名古屋の地下鉄の駅名の関係に着目してみる。前回は東山線を巡ったので、今回は名城線の駅めぐりをしてみたい。
 名城線は1965年(昭和40年)10月15日に、名古屋の地下鉄としては2番目の路線として誕生した。今では全国の地下鉄でも珍しい環状線になっているが、当初の開通は栄町(昭和41年に栄駅に改称)〜市役所間の開通だった。因みに環状線運転になったのは2004年10月だ。環状線なのでどの駅からスタートしてもよいのだが、同じ2004年に名古屋の地下鉄にも駅ナンバリング(線名を示すアルファベットと数字の組合せ)が導入された。名城線は金山駅が1番で、右回りの番号順になっている。
 金山は1000番内でお馴染みだ。東別院は苗字には見つからなかったが、「別院(ベツイン)は29000番台に見つかった。上前津も苗字では見つからなかったが、「前津(マエツ)」は14000番台に見つかった。矢場町もそのままの苗字はないが「矢場(ヤバ)」は22000番台に実在する。
 栄は東山線で紹介したのでパスするが、久屋大通も駅名そのままは見つからなかったが、「久屋(ヒサヤ)」は39000番台に実在する。市役所もそのままの苗字はない。「市(イチ)」は11000番台にある。「役所」は俳優の役所広司はいるが、芸名にはあるが苗字にはない。余談だが役所広司の芸名は、本人が千代田区役所土木工事課の職員だったことから役所工事をもじったものだが、役が広くなるようにとの意味が込められている。
 名城公園もそのままの苗字はない。しかし、「名城(メイジョウ・ナシロ・ナキ)」が5700番台に実在する。黒川は300番台だ。志賀本通も駅名ズバリはないが「志賀(シガ・シカ)」は500番台だ。平安通も駅名ズバリはなく、「平安(ヘイアン・ヒラヤス)」が7600番台に見つかった。大曾根は4300番台だ。
 ナゴヤドーム前矢田の場合も「矢田(ヤタ・ヤダ)」が700番台だ。砂田橋も「砂田(スナダ・サダ・サタ)」は1200番台だ。茶屋ヶ坂もズバリはない。「茶屋(チャヤ・サヤ)」が9000番台に見つかった。自由ヶ丘はそのものも「自由」も苗字にはない。本山も名古屋大学の名古屋も東山線で紹介済みだ。なお、「大学(ダイガク)」も10000番台に実在する。八事日赤、八事、総合リハビリセンターは苗字にはない。瑞穂運動場東は「瑞穂(ミズホ)」が38000番台にある。
 新瑞橋、妙音通では「新瑞」も「妙音」もない。堀田は「堀田(ホリタ・ホッタ・ホリダ)」は300番台だ。しかも堀田は稲沢市が発祥の地だ。伝馬町の「伝馬(デンマ)」は27000番台だ。神宮西の「神宮(ジングウ・ジンミヤ・カミミヤ他)」は2600番台だ。28番目の西高蔵の「高蔵(タカクラ)」は28000番台だ。

>>目次へ




【平成30年3月号編集後記】

 日本初の子どもの本の専門店「メルヘンハウス」(千種区今池2-3-14)が今月末に閉店する。ホームページ(http://www.meruhenhouse.co.jp/)にも代表の三輪哲さん(74)のメッセージ(2017.11.17付け)が掲載されている。メッセージには「志」が続けられなくなることの無念さと、1973年の誕生から45年間の様々な人々との出会いに対する感謝の気持ちが込められている。常時3万冊の在庫を維持しながら、45年間頑張ったことに驚くと同時にこうした志が消えることに淋しさを覚える。
 「メルヘンハウス」のホームページには閉店を惜しむ関係者の協力によるサイン会や絵本作家、童話作家の来店や特別展のイベントの記事が並ぶ。こうしたイベントは閉店が決まる前から恒常的に行われており、出会いとふれあいを大切にしてきたことが伺える。2014年10月創刊の「メルヘンハウス物語」には誕生の背景や子どもたちとのふれあいのエピソードが満載だ。子どもは地域の活力であり、国の宝であることを気付かせてくれる。三輪さんの活動の原点は小学校5年生の夏に担任の先生が読んでくれたスティーブンソンの「宝島」だ。運動好きで、読書嫌いの三輪さんが本にはまった瞬間だ。三輪さんが本との出会い、人との出会いの場作りに人一倍熱心なのはこの体験があるからだ。
 「メルヘンハウス」に限らず、まちの本屋が次々に姿を消している。娯楽の多様化、活字離れに加えて、アマゾンに代表されるネットビジネスが従来型のビジネスモデルを破壊している。経済原則を無視することはできないが、経済原則になじまない文化や伝統が消えていくのも何か変だ。経済原則では生き残れないが「いいもの」で且つ「必要なもの」はたくさんある。子どもの「夢を育む力」に必要な環境(出会いの場)の中には経済性と両立しないものも多い。人にやさしい「経済」の在り方をもっと工夫する必要がある。
 子どもたちへの奉仕を掲げて活動している「キワニスクラブ」という国際奉仕団体がある。1915年にデトロイトで誕生し、会員数は約19万人(国内は約2000人)いる。名古屋キワニスクラブでは1975年から「キワニス文庫」制度を運営している。児童養護施設や長期療養中の児童用に小児科病棟等に贈呈している。必要数に対して十分な量とは言えないが、どんな時でも希望を持って日々を過ごしてもらいたいとの思いからだ。
 三輪さんの「志」は多くの関係者に受け継がれ、形を少しだけ変えながら続いている。何より三輪さん自身この45年間の冒険で得た「宝物」はお金では得られない素晴らしい出会いではなかろうか。「本との出会いは人との出会いだ」という三輪さんの言葉が耳によみがえる。まちの本屋が消えるのは残念だが、生き残った本屋から「キッズコーナー」が消えないことを願っている。

(片桐)