産業懇談会【メールマガジン 産懇宅配便】 第165号 2016.2.29 発行

メールマガジン■産懇宅配便■

平成28年2月度(第165号) 目次
【28年2月度 産業懇談会(火曜G)模様】 2月9日(火) 12時00分〜14時00分
【28年2月度 産業懇談会(水曜第2G)模様】 2月10日(水) 12時00分〜14時00分
名古屋いちばん物語】 No.81
【名古屋いちばん物語】 No.82
【3月度産業懇談会開催日程】
【4月度産業懇談会開催日程】
【お知らせ】
【コラム】
コラム1 【保健師からの健康だより】 No.143
コラム2 【「ほん」のひとこと】 No.88
コラム3 【苗字随想】 No.165
【28年2月度 産業懇談会(火曜G)模様】

テーマ: 『 三菱長崎の世界遺産 』

日  時:平成28年2月9日(火) 12時00分〜14時00分
場  所:名古屋観光ホテル 18階 伊吹の間
参加者:30名

スピーカー:
藤田 慎一(ふじた しんいち)
三菱日立パワーシステムズ(株)
中部支社 支社長

藤田 慎一氏

■ 世界遺産とは
 世界遺産の定義は、人類が共有すべき「顕著な普遍的価値」を有する遺跡、景観、自然などである。その分類は1. 文化遺産(万里の長城、タージマハル等802件)、2. 自然遺産(屋久島、グランドキャニオン等197件)、3. 複合遺産(マチュピチュなど32件)の3種類であり、全世界で1,031件が登録されている。
 日本の世界遺産は19件あるが、昨年7月に文化遺産として登録されたのが「明治日本の産業革命遺産」である。

■ 明治日本の産業革命遺産
 幕末から明治時代に急速な発展を遂げた炭鉱、鉄鋼、造船を中心とする日本の産業革命は、西洋から非西洋世界への技術移転と日本の伝統文化を融合させた、他国では類を見ないユニークなものであった。このような「非西洋世界での近代化の先駆け」という点が評価され、世界遺産になった。全国8県の23構成資産が一群として認められていることと、日本では初となる稼働遺産(現在も稼働中の施設)が含まれることが大きな特徴である。
 この23構成資産の中で5資産が、三菱長崎造船所に属している。

■ 三菱長崎造船所
 1853年、徳川幕府はペリーの浦賀来航によって鎖国令を廃止し、いくつかの海防策を実施した。その一つが艦船修理工場として1861年に竣工した「長崎鎔鉄所」であり、これが三菱長崎造船所の前身だ。三菱は工部省から借り受ける形で1884年から経営に参画し、1887年には払下げを受け民営となった。
 三菱長崎造船所に所属する、世界遺産の構成資産は次の5つである

  1. 小菅修船場跡
    1869年に落成した日本で初めて蒸気機関を用いた洋式ドック。薩摩藩やグラバーにより設立された。
  2. 旧木型場
    鋳物工場に併設する木型場として建設され、長崎造船所に現存する最も古い建物。最初に電気を動力として使用した工場。
  3. ジャイアント・カンチレバークレーン
    同型としては日本で初めて設置された電動クレーン。150トンの吊上能力を持ち、現在も電動モーターで駆動している。
  4. 占勝閣
    1904年に建てられた木造洋館。様々な式典・儀式などの場として利用。現在も三菱グループの迎賓館となっている。
  5. 第三船渠
    当時東洋最大の船渠(ドック)で、現在も100年前に設置された排水ポンプと共に稼働中。

■ 岩崎家
 1870年に九十九商会(三菱の前身)が設立され、創業者である岩崎 彌太郎から岩崎家4代によって、昭和20年までの75年間経営の舵がとられてきた。経営理念である「所期奉公(事業を通じて国家・社会に奉仕)」の精神は現在に受け継がれ、三菱グループ発展の基礎となり、支えている。

■ 番外編
 講演後、「ご家庭でできる広島風お好み焼き」の特別講義を開催。お好み焼きにかける熱い想いとともに、準備から出来上がりまでを解説していただいた(上記リンクよりレシピをご覧いただけます)。
 名古屋の地で、「広島風お好み焼きブーム」の火付け役になるべく、広島風お好み焼き試食会の開催が期待される。

番外編 ご家庭でできる広島風お好み焼き 写真1
▼ 参考写真
写真2 写真3
1. 小菅修船場跡
2. 旧木型場
写真4 写真5
3. ジャイアント・カンチレバークレーン 4. 占勝閣
写真6  
5. 第三船渠  

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【28年2月度 産業懇談会(水曜第2G)模様】

テーマ: 「 『KITTE』そして『健康増進』 」

日  時:平成28年2月10日(水) 12時00分〜14時00分
場  所:名古屋観光ホテル 18階 伊吹の間
参加者:22名

【スピーカー】
大西 正成氏

シーキューブ(株) ICT事業本部 顧問
【ゲストスピーカー】
井田 直希氏

JPビルマネジメント(株) 事業部門 管理部
【ゲストスピーカー】
小田 英紀氏

公益社団法人 真向法協会 錬士


今回の例会はスピーカーの大西氏と、ゲストスピーカー2名を迎えての3部構成となった。

『KITTE』そして『健康増進』 =大西正成氏=

大西正成氏

 私は郵政省出身である。「オオニシ(0024)」の名前の通り昭和24年生まれ。この年に郵政省は、電気通信省とともに逓信省から分かれて発足した。お年玉付き年賀はがきが誕生したのもこの年だ。特賞がミシン、1等が純毛洋服地であり、衣類の重要度が高かった時代背景が伺える。郵便事業には欠かせない切手の中で、「郵便制度の父」と呼ばれる前島 蜜の1円切手は、昭和27年から一度もデザインが変わっておらず珍しい存在だ。平成18年からは「フレーム切手」と呼ばれる、オリジナルデザインの切手商品ができたので、ぜひお試し頂きたい。
 皆さんお馴染みの「赤いポスト」の登場は明治34年からだ。それ以前は黒い木箱であったのだ。今では様々な「ご当地ポスト」が誕生しており、宮城県のこけし、新潟県のトキ、鳥取県の妖怪など、日本全国にユニークなデザインのポストが存在している。実は愛知県内にもいくつかご当地ポストがあるので、探してみては如何だろうか。
 あまり知られていないが、ラジオ体操も郵政省が発祥だ。昭和3年に逓信省簡易保険局が国民保健体操を導入したのが始まりで、現在のラジオ体操第一は、昭和27年に導入されたものだ。

「JPタワーとKITTE」 =井田直希氏=

井田直希氏

 昨年10月に竣工したJPタワーは、高層棟(オフィス棟)の高さ195m、地上40階、地下3階、延床面積18万m2を誇る、名古屋最大規模のオフィスビルだ。
 隣接する「JRゲートタワー」との一体的・効果的な都市計画の基で進められた為、都市再生特別地区となり、通常の容積率、高さなどの規制によらない高度利用が可能になった。このためJPタワーには、歩行者の利便性を考えた貫通通路、アトリウム空間、オープンスペース、屋上・壁面緑化などの様々な、利用者と環境に優しい配慮がみられる。
日本最大クラスのブラインドイルミネーションも、名古屋の夜の名物になりそうだ。
 オフィスはワンフロア700坪の広さだが、最大16分割まで可能となっていて、最小貸付区画は約39坪とお手頃の広さだ。「極上のオアシス」のコンセプトでテナントサポートフロアとして設計された13階には、ラウンジ、カフェ、食堂、持ち込み・貸切スペース、会議室などの様々な快適な機能が充実している。
 地下1階から地上3階には、「『名古屋を』伝える、『名古屋に』伝える」をコンセプトとした約40店舗のショップ&レストランから成る商業施設「KITTE NAGOYA」が6月に開業予定だ。「KITTE」は日本郵政グループが展開する商業施設で、丸の内(東京)と博多につぐ3ヵ所目となる。
 2017年4月に全面開業となるJPタワーには、是非ご期待して頂きたい。

「真向法体操」 =小田英紀氏=

小田英紀氏

 「真向法」は昭和8年、長井津氏によって創案された健康法であり、名前の通り「物事に対して真っ向に取り組む」ために健全な身心を涵養する健康法だ(宗教とは関係なし)。
 その目的はアンチエイジングであり、「和風ヨガ」と思って頂けると分かりやすい。
 真向法体操とは、股関節を中心に周辺の靱帯や下肢の筋肉をストレッチ(動かし)し、股関節や骨盤(仙腸関節)の歪を改善し、同時に「骨格筋ポンプ」を積極的に動かし、更に呼吸と4動作を連動させ、「呼吸ポンプ」も利用する事で、身体の新陳代謝を高めリフレッシュを図ります。
 真向法の最大の特徴は、たった4つのシンプルエクササイズを1回3分行うだけという手軽さで、大きな効果が得られることだ。
 注意点は、1. 決して無理をしない、2. 曲げる時は息を吐く、3. 腰を立て姿勢を正し(真向の姿勢)、次に股関節を中心に屈伸する、4. 動作は大きくゆったり倒し、必ず元の位置に戻すの4点だ。
 真向法協会によると、自宅で簡単に取り組めることから全国で数十万人が取り組んでいる。
 当日は、小田氏と大西氏の2名による真向法の実演会が行われた。真向法協会による教室が全国に展開されているので、ご興味のある方は是非とも体験して頂きたい。

写真4 写真5
  参考:真向法のリーフレット

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【名古屋いちばん物語】 No.81


テーマ: 『 尾張名古屋事始(7) 』

ONKネットワーク
加 藤   敏

 このところ訪日外国人客数が急増している。昨年はほぼ2千万人に達し前年の1.5倍となった。特に近隣アジア諸国、なかでも中国からの訪日客数が多く、都市や観光地は賑わい、爆買いや民泊ブームが起きている。これは近隣アジア諸国の経済発展や円安などが主な要因と考えられる。また訪日外国人客数が出国日本人数を上回ったのも大阪万博以来45年ぶり、旅行収支が黒字に転換したのも53年ぶりという画期的な出来事となった。外交レベルでの交渉が足踏み状態であるのと比べその変化の速さには驚くばかりである。果たしてこうした現象は今後も続くのだろうか。
 D.アトキンソン氏は『観光立国論』の中で、観光ブームは世界的な現象であり、日本にはまだまだこの3〜4倍の訪日外国人客数を受け入れるだけのポテンシャルがあると指摘している。イギリス人である氏の考えには日本人に語れない魅力と説得力がある。その論旨は明解である。先進国の国力は人口に相関している。だから今後大幅な人口減となる日本が国力を維持していくには、外国人の移民とりわけ短期移民である観光客に着目し、観光収入を飛躍的に増大させる必要がある。近隣アジア諸国からの観光客に満足するだけでなく、欧米やオセアニアなどの富裕層を多く迎えることにも注力すべきである。幸いにも日本は観光立国の4条件である「気候」、「自然」、「文化」そして「食事」のすべてを満たしている。外国人観光客向けの観光マーケティングと開発・投資を積極的に行い、観光コンテンツの多様化に取り組むべきである。特に世界中から観光客を呼ぶことができる歴史的建造物等の文化財についていえば、ガイドの多言語対応、歴史的背景など説明内容の充実、そして利用料金の見直しが必要であると提言している。
 それでは文化財の観光コンテンツの現状はどうなのか。日本の城の例をみてみる。城といえば何といっても姫路城である。45年ぶりに訪れてみたが、眩いほどの白い輝きを取り戻していた。入場時に受取るリーフレットは英・中・台・韓・仏の5外国語が用意されている。ホームページは英・中・韓・仏・独・西・葡・越の8外国語に対応しており、さすが世界遺産を誇るだけに多言語対応の充実度は抜きん出ている。ただガイドブックは英語しかなく、音声端末ガイドは用意されていない。ボランティアによるガイドは随時ではあるが英・中・台・韓の4外国語に対応している。一方、城の内部の展示は英語しかないのでバランスに欠けている。
 次に展示内容である。入場料が名古屋城・大阪城・二条城や国宝の犬山城などの500〜600円に比べ1,000円と高いので、世界遺産の名にふさわしい立派なものと期待したが、昨年3月に50年ぶりの大修理を終えたにもかかわらず天守閣の薄暗い内部には気休め程度の説明があるだけで特別な工夫はされていない。当時の有姿をそのまま見せるためとはいえ余りにも貧弱である。修理前の入場料は600円であったので、値上げは修理代の回収だけが目的であると勘繰りたくなる。アトキンス氏が批判しているのはきっとこのあたりのことかもしれない。ただ西の丸の百間廊下には歴代藩主や千姫の事蹟などが多く展示され、リーフレットにも城のヒストリーがきちんと書かれているので、この点は評価してよい。
 名古屋城に目を移す。これまで何度も入場しているがアトキンソン氏流の見方をしたことはない。リーフレットは英・中・台・韓の4外国語が用意されている。これは国内の主な城も同じのようである。ホームページもこれら4外国語に対応している。ガイドブックは外国語向けのものはなく、音声端末ガイドも用意されていない。ボランティアによるガイドは英だけでそれも土休日に限られている。ただ一部公開中の本丸御殿の展示はリーフレットと同様に4外国語に対応しており姫路城と比べ格段に充実している。これは自慢していい。色分けの法被を身につけた案内役や説明役が英・中などにも対応できるよう懸命に取り組んでいる姿は頼もしい。また天守閣の展示や持ち帰り用のパンフレットにも同じ4外国語対応の工夫がなされている。
 展示内容はどうか。残念ながら本丸御殿は全体として箱モノの説明が中心であり、重要文化財である障壁画などは文化財としての価値が高いにもかかわらず何の説明もない。たとえ復元途上であるとはいえこれでは物足りない。名古屋城本丸御殿年表が隣接する復元工事見学コーナーの中に展示されているのはどうしてなのか。天守閣には城の歴史や構造さらには城下の暮らしなどのコーナーがある。しかしどれも古びている。また3英傑の説明はあっても肝心の江戸時代の藩主の事蹟などの説明は全くない。その代用としてか歴史年表のパンフレットが置かれているが、どれだけの人が持ち帰っているのか分からない。リーフレットにも城のヒストリーはメモ程度しか書かれていないし、全体的に歴史的背景などの説明はお座成りであるといっていい。
 これで名古屋城の特徴が少し分かったようである。多言語対応に関しては、リーフレットでは姫路城に後れを取るものの展示では一歩リードしている。一方、展示内容に関しては、城の構造などハード志向が強い反面、姫路城と比べ歴史的背景などのヒストリーが欠落している。これではアトキンス氏が指摘するように日本文化の体験に関心の高い欧米などの観光客には物足りない。こんなところで"モノづくり"の本領を発揮しても仕方がないのではないか。なるほど御三家の尾張藩は幕政には一切口を出さないという不文律があったとはいえ、そこには数々の物語があった。尾張藩の唯一の通史である『尾藩世紀』などには歴代藩主の事蹟が時代を追っていろいろと記録されている。条々、給地・改易、検地、儀礼・饗応、参勤交代、巡視、狩、大風・洪水・火事など多くは藩内の出来事であるが、それらを何も語らないのはなぜなのかよくわからない。広く紹介することに何ら躊躇する必要はないはずである。
 昨年10月に愛知県芸術劇場で中田直宏作曲のオペラ『宗春』全三幕が初演された(台本:麻創けい子、演出:西川左近)。徳川宗春没後250周年記念公演ということで2日間の舞台は大入りであった。8代将軍吉宗の質素倹約に反抗し祭りや芝居などを奨励して規制緩和を進めたものの、最後は蟄居謹慎処分を受け静かに歴史の舞台から退場する7代藩主宗春の生涯を、吉原から身請けした花魁春日野とのラブストーリーを織り交ぜながら描くエンターテインメントオペラである。宗春の籠の上に鎖が落ちて終幕となるシーンは尾張藩のその後の運命を暗示しているかのようである。歌舞伎のような華麗な舞台、現代風の豊饒なオーケストラの響き、切々な想いのアリアや愛の二重唱など、宗春ファンには極上の一夜であった。楽しいオペラなので再演されることを期待したい。台本は、宗春が吉宗へ反抗したのは初代義直の"尾張藩は将軍の家来ではなく朝廷の家臣である"という勤王の遺訓に忠実であったからだとしている。そして遺訓が伝授される物々しい場面も登場する。しかし江戸時代の武士階級にとって勤王思想は一般的なものであった。徳川家の永続的な繁栄のため公武合体を目ざした尾張藩の政治理念からみても、少し勤王=官軍、佐幕=賊軍という二分論に捉われた通俗的な解釈になっているのではないか。宗春の『温知政要』などをみてもそうした思想は見当たらない。補足しておきたい。
 これは余りにもよく知られた歴史ドラマである。だが、これ以外にも素人の眼からみてまだまだいろいろな物語があることに思い当たる。

  • 初代義直の勤王思想の光圀の水戸学そして幕末尊王運動への影響
  • 宗春失脚後の8代宗勝と9代宗睦による藩政の再建
  • 宝暦治水(木曽三川改修)の利害調整を巡る薩摩藩との軋轢
  • 義直血統断絶後4代に亘る幕府からの押し付け養子藩主との確執
  • 14代慶勝の公武合体思想による幕末抗争下での穏健的な行動
  • 青松葉事件(慶勝による藩内佐幕派一掃処分)と北海道八雲の開拓
  • 戦国争乱収束後の築城のため遺存した金鯱のシンボル化など
 こうしてみると尾張藩は歴史ドラマに事欠かないことがわかる。やや地味な話が多いかもしれないが、それらの舞台は二の丸御殿が中心となった。今の二の丸庭園のある場所である。復元途上の本丸御殿は藩祖義直が完成後4年間だけ政庁・住居として使用したにすぎず、二の丸御殿へ移転後は将軍家光や家茂の上洛時や大切な禁裏・公卿姻戚の大名などの宿泊時に迎賓館として使われただけである。立派な障壁画もほとんど外に知られることなく眠ったままの状態であった。こうした本丸御殿の位置づけはしっかりと説明しておく必要がある。そうしないと歴史ドラマの舞台はすべて本丸御殿が中心になったと誤解されかねない。その上で、絢爛豪華な書院造りの本丸御殿の中に藩主の事蹟や出来事など名古屋城の歴史ドラマを整然と展示したらいいであろう。箱モノ御殿だけではあまりにも寂しすぎるからである。
 2年後には本丸御殿がグランドオープンする。また天守閣の木造復元の話も出ている。まさに名古屋城をグローバルな文化財としてアピールする絶好の機会である。これまで説明に事欠いてきた歴史ドラマのストーリーを新しい視点でリフレッシュし、国内外観光客に積極的にプレゼンテーションしていくことが求められている。それは歴史的に価値のある建造物等を永続的に公開していくためには必要な説明義務であるといっていいかもしれない。同時に観光コンテンツとして大切なリーフレットやガイドブック、さらには音声端末ガイドの多言語対応も進める必要がある。特に本丸御殿の中に用意すべきである音声端末ガイドはヨーロッパの観光地の例に倣って10外国語ぐらいに対応してもいいほどである。愛知県への訪日外国人客数の半数は観光目的であり、さらにその半数が名古屋城を訪れている。こうした観光コンテンツが全国に先駆けて整備され、名古屋が多くの観光客で賑わうことを期待したい。

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【名古屋いちばん物語】 No.82


テーマ: 『 「住吉の語り部となりたい」 シリーズ第59回 』

料亭つたも主人
深田正雄

住んで楽しい栄ミナミ!
本町通りはレジデンシャルストリート

 中区の人口急増、住宅の都心回帰が著しい名古屋栄周辺!10年程前から栄中部を住み良くする会などの街づくりに関与して以来、栄2‐3丁目の居住者数動向の変化が気になっています。栄学区の学区別・町丁名別人口(公簿人口より、1月1日現在)11年の変化を比較してみました。

人口 平成28年 平成17年 対比率%
中区 80,626人 70,085人 115%
栄学区 7,543人 6,773人 111%
栄2丁目 977人 550人 178%
栄3丁目 1,186人 1,349人 88%

 この間に中区の人口増が顕著となり、市会議員定数は2名から3名へ増員、白川公園周辺には高級マンションが林立しつつあります。特に、栄2丁目は人口急増、白川公園北側の1-14番、西側の15-16番で本町通り、伏見通りに囲われた地域ですが、十数年前は公園を中心にホームレスが100名以上生活し、ゴミが散乱し薄暗く、治安も良くなく、薄気味悪い雰囲気といえました。

地図

地図:栄2丁目住宅地図・平成26年版に開発中マンションを注記

 白川公園と2丁目6-13番の8ブロックは昭和34年進駐軍アメリカ村からの返還地区で開発がしやすい比較的大きな敷地群といえます。昭和49年に2丁目7番地に宝塚エンタープライズ(株)が都市型ホテルスタイルの分譲マンション及び高級テナントビル「ヴィア白川(サンメンバーズ名古屋白川)」を開業したのが、最初の大型共同住宅といえます。現在のリゾートトラスト(株)の最初の事業で、第1次オイルショックもあり、販売に大変苦労されたとのことです。当初はワンルーム中心の小型住居が多い状況といえました。
 その後、バブル地価高騰で居住用開発として採算が困難でしたが、平成11年料亭八勝館中店跡地に公団融資を得て、112戸の大型賃貸マンション「ウィン・コート白川」が名古屋市科学館北に完成しました。(写真1)その後、平成19年にはお隣にデザイナーマンションと称したお洒落な「アーク白川公園パークマンション」、20年「グラン・アベニュー栄」、そして、北の稲垣商事ビルに21年「ディアコート白川」と賃貸マンションがオープンしています。

写真1
写真1:白川公園北・左「ウィン・コート白川」、右「プラウド栄白川公園」(白川通り)

 そして、平成15年「ライオンズシティ栄本町通」46戸(化粧品村瀬商店跡地)、16年「栄アインスタワー」68戸、17年「プラウド栄白川公園」21戸、「ザ サカエ レジデンス」95戸の高級分譲マンションが分譲されたのが、栄2丁目の大きな人口増加となっています。
 平成23年、科学館に世界最大となるドーム内径35mのプラネタリウムが開設されたことを契機に公園一帯が整備され、若宮大通りのホームレス宿泊所撤去から、緑の公園に恵まれた住環境が注目されてまいりました。
 そして、東日本大震災の体験から地震に強い堅牢な地盤、海抜10m以上の大津波の影響が 少ないといわれる名古屋台地の中心地域が安心・安全な居住空間として脚光を浴びつつあります。街づくり活動では防犯カメラの各ブロック設置により犯罪抑止力が強化され、安心・安全な地域貢献となっています。
 本町通り大手鞄卸や人形店など撤退に伴い、カバンのマツモト跡には「プレサンス ロジェ白川公園」42戸(写真2)、袋物卸・エリット(株)と(株)山一跡地には「グランアルト栄白川公園東」95戸の建設が始まり公園側が好評で坪単価@300万円の人気の緑が楽しめる住居となりつつあります。(写真3)

 南には宝グループ一族の味岡屋さん、佐藤タオル跡地での「ルシェット白川公園」(写真4)工事スタート、若宮交差点・旧ヘラルドビル角地も東建コーポレーション「栄タワーヒルズ」(写真5)が今年着工予定とのこと。2つとも高級賃貸で合わせて250戸規模、最高賃料月100万円近くと噂されています。

写真2 写真3
写真2:
「プレサンス ロジェ 白川公園」プレサンスコーポレーション
写真3:
「グランアルト栄白川公園東」 大京・住友不動産
写真4 写真5
写真4:
「ルシェット白川公園」宝不動産
写真5:
「栄タワーヒルズ」東建コーポレーション

 そして、栄1丁目納屋橋東開発プロジェクト「プラウドタワー名古屋栄」は来年6月オープンの第一期販売が終了し、310戸出しの290戸契約済みで売れ行き大好調!
 平成30年完成予定の「グランドメゾン御園座タワー」は池下のマンションギャラリーにてクローズド販売で20階以上はほとんど契約済みで全体で197戸程度販売完了とのこと。
 歩いて楽しい栄ミナミが、リビングタウンとして脚光を浴び出しています。緑豊かな公園空間、多くの新しく居を構える人々との融合、そして、イベントを中心に交流して活性化する地域の発展が楽しみになりました。栄ミナミエリアマネジメントが主導する歩行者を重視した三蔵通り新ビションにも期待が持たれます。
 名古屋の歴史と文化を継承しながら、新たな機能を備えた御園座、科学館、美術館と周辺の商業飲食施設、個性豊かな分譲マンションの複合開発とすることで、周辺地域も活性化し、街のにぎわいが創出されることと思われます。

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【3月度産業懇談会開催日程】
木曜グループ以外は、名古屋観光ホテルでの開催です。
グループ名 世話人 開催日時 テーマ・スピーカー 場所
火曜グループ

深田正雄
富田 茂

3月15日(火)
12:00〜14:00

(株)三重銀行
取締役会長 種橋潤治氏
「四日市を巡る」
18階
伊吹の間
水曜第1グループ

落合 肇
飯田芳宏

3月16日(水)
12:00〜14:00
(株)中部プラントサービス
取締役社長 深澤元喜氏
「電力と歩む中部プラントサービス55年」

18階
伊吹の間
水曜第2グループ

片桐清志
見祐次

3月2日(水)
12:00〜14:00

シーキューブ(株) 相談役 片桐清志氏のご紹介
(株)富士通システム統合研究所
安全保障研究所 主席研究員 田中達浩氏
「サイバー戦の備え」(仮)

2階
曙の間
木曜グループ

河村嘉男
倉藤金助

3月3日(木)
12:00〜14:00

キャリオ技研(株)
代表取締役 富田 茂氏
「ドローン利活用 事例研究
    (産業用とホビー用との比較検証)」
【定員】定員数に達しましたので、申込みを締切らせていただきました。
現地集合
ノリタケの森
レストラン
キルン
名古屋市西区
則武新町
3丁目1-36

<ご参考>
平成28年3月3日(木)木曜グループ
「ドローン利活用 事例研究(産業用とホビー用との比較検証)」
開催場所:ノリタケの森 名古屋市西区則武新町3丁目1-36

11:50
12:00〜13:00
13:00〜13:10
13:10〜14:00
    〜14:00
ノリタケの森 敷地内 レストラン「キルン」に現地集合
昼食
移動(集合写真を撮影予定)
事前説明ならびにドローン飛行鑑賞
現地解散

【備 考】

  • スケジュールは天候等により、変更になる場合がございます。
  • ご参加の皆様には別途ご案内を発送させていただきました。

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【4月度産業懇談会開催日程】
名古屋観光ホテルでの開催です。
グループ名 世話人 開催日時 テーマ・スピーカー 場所
火曜グループ
水曜第1グループ
合同開催

深田正雄
富田 茂
落合 肇
飯田芳宏

4月12日(火)
12:00〜14:00

栄ミナミ地域活性化協議会
会長    深田正雄氏
事務局長 清水洋一氏
「栄ミナミの街づくり」

3階
桂の間
水曜第2グループ

片桐清志
見祐次

4月6日 (水)
12:00〜14:00
(株)大本組
支店長 尾世 説紀氏
「社長3代 109年」(仮題)
18階
伊吹の間
木曜グループ

河村嘉男
倉藤金助

4月7日(木)
12:00〜14:00

歌舞伎ソムリエ
おくだ 健太郎氏
「歌舞伎はこんなに楽しい」
18階
伊吹の間

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【お知らせ】

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【コラム】

コラム1 【保健師からの健康だより】 No.143
保健師からの健康だより

株式会社 スズケン
保健師 稲垣 静香

『 笑顔のすすめ 』

 2月中旬、日本各地で春一番が吹きました。名古屋の気温は5月上旬並の暖かさで、2月での観測史上最高の気温だったそうです。しかし、春一番が吹いた翌日からすぐに冬の寒さに戻りました。温暖の差が激しいのに加え、インフルエンザが猛威をふるっており体調を崩しやすくなります。お身体には十分お気を付け下さい。

 先日、友人の赤ちゃんに会い、あの「天使の笑顔」を見たときはとても幸せな気持ちになりました。笑顔には不思議な力がありますね。
 赤ちゃんには、親の言葉や行動など何も理解できない時期から笑い(生理的微笑)が見られます。これは自分をきちんと育ててもらうために、自分の感情とは関係なく笑っています。「自分の感情とは関係なく」と言われるとなんだかさみしい気持ちになりますが、生まれながらに「笑顔は生きるために必要」とわかっているのですね。

 これまでの研究で、「笑顔」にはたくさんのメリットがあることがわかっています。

  • 免疫能の活性化
    作り笑いでもがん細胞を攻撃するNK細胞が元気になった
  • 血糖値の上昇抑制
    大笑いした者ほど血糖値の上昇は大幅に抑えられた
  • ストレスの低下
    普段から声を出してよく笑っている人ほど、※コルチゾールが減少していた
    ※ストレスを感じると分泌されるホルモン
  • アレルギー反応の抑制
    笑うことでアトピーのかゆみが一定時間(3〜4時間くらい)軽減した
  • 脳の老化防止
    笑った人は脳の血流量が増え、脳の働きが良くなった
  • リラックス効果
    笑った後、脳波でα波が増えた
    ※くつろいでリラックスしている時に現れる

 これらは一例で、他にも効果がたくさんあるようです。こうしてみると「笑顔」は自分で処方もできてしまう、どんなに使っても副作用がない「万能薬」かもしれませんね。その他に、笑顔でいると周りの雰囲気が良くなったり、コミュニケーションがうまくいって業務が円滑に進んだりと、職場でのメリットが多いことを皆さんも実感されていると思います。

 食事を家族や仲間みんなで囲んで、みんなでわいわいとその日あったことを話しながら食事を楽しむ。誰かが笑えばそれにつられてみんなが笑顔になる。自分も周囲もハッピーな気持ちになりますね。みんなが笑顔になれる場面は生活の中にたくさん散らばっています。きっと、あなたが笑えばすべて良くなることもあるでしょう。 今よりもっとたくさんの笑顔を自分から広めてみませんか。

「笑顔」それは、こころとからだの万能薬

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コラム2 【「ほん」のひとこと】 No.88
コラム【「ほん」のひとこと】

株式会社 正文館書店 取締役会長
谷口正明

室町耽美抄 花鏡
海道龍一朗著・講談社刊

 現在の日本文化の原型は室町時代に始まる、という説があります。その室町文化の四人の巨人を描く連作歴史小説です。
 足利義満の庇護を受け、申楽を「能」へと高めながら、義満の死とともに人生が暗転する世阿弥元清(1363頃-1443頃)の人生を描いた「風花」。その世阿弥の娘婿で、その指導を受け、最後には奥義の書を渡された金春禅竹(1405-1470頃)を扱った表題作「花鏡」。その禅竹とも交際があり、後小松天皇の子と伝えられ、若き日に師の入寂に耐え切れず入水を図った、闇に生きた一休宗純(1394-1481)を見つめた「闇鴉」。その一休に学び、侘茶を創始し茶道の祖と呼ばれる村田珠光(1423-1502)を描いた「詫茶」。
 海道龍一朗の重厚な筆致が冴える。

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コラム3 【苗字随想】 No.165
コラム【苗字随想】

片桐清志

「堀」と苗字

 「土」偏シリーズの今回は、前回の「城」に関係のある「堀」と苗字の関係を取り上げてみる。
 「堀」で始まる「堀姓」も結構多く、120種見つかった。「堀」も小堀や赤堀のように「堀」が下に付いた苗字も多く、両方合わせると150種を超える。水は生活に必須であり、水と縁の深い様々な「堀」が身近にあることが人気の源のようだ。
 一字姓の「堀」さんも居る。呼び方もシンプルで「ホリ」だけだ。
 「堀姓」のランキング(佐久間 英)でもトップは一字姓の堀で、堂々の180位だ。堀内(253位)、堀江(310位)、堀田(354位)、堀口(407位)、堀川(514位)、堀越(545位)、堀井(573位)の8姓が1000番内だ。堀切、堀部、堀尾、堀本が1000番代、堀野、堀之内が2000番代に続く。
 因みに「堀」が下に付く苗字のランキング上位では、小堀の681位を筆頭に、大堀(1473位)、内堀(1645位)、赤堀(1682位)、横堀(2675位)、新堀(2684位)などが上位に登場する。
 ユニークな苗字では、堀中(ホリナカ)、堀底(ホリゾコ)、堀端(ホリバタ)、堀水(ホリミズ)、堀池(ホリイケ)、堀溝(ホリミゾ)、堀工(ホリク)、堀打(ホリウチ)、堀貫(ホリヌキ)などが見つかった。

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【平成28年2月号編集後記】

 先日TVを観ていたら面白い話題が紹介されていた。大学生たちで作った消防団サークルの活動だ。サークル活動とはいえ、本物の消防車や、制服・ヘルメットも装備している。大学の自衛消防団としての役割も兼ねているので、装備等は大学側で提供している。日ごろのサークル活動は市の消防署と連携してプロの指導を受けながら訓練に励んでいる。訓練の模様も紹介されていたが、女子学生も混じって大学のキャンパス内での放水作業や、訓練用消火器を使って初期消火活動を体得していた。
 大学内で実際の火事に遭遇したことはまだ無いとのことだが、市内の火災発生時は応援に駆け付けたこともあり、その模様が映像で紹介されていた。サークル活動で消防署と連携している強みを発揮して火事場での交通整理等を担当していた。消防署からの出動要請があれば、授業中でも応援に駆け付けるという。
 消防団という組織は、「消防組織法」に基づいて市町村が設置する公式の消防機関だ。常設の消防署と協力して、消火活動を行うだけでなく、災害救助活動や平時には防災活動など地域密着の活動を担っている。非常時に不足する稼働を補完する素晴らしい仕組みであり、自分たちの地域は自分たちで守るという自主性と郷土愛に根ざした典型的なボランティア組織だ。消防団員には通常18歳以上なら男女や職業を問わず登録可能だ。特に過疎化と高齢化が進む地域では若手の戦力が不足しがちであり、消防団組織の強化は喫緊の課題だろう。
 この大学が消防団サークルを作ったきっかけは「3.11」だという。大学の地域貢献活動と学生の防災意識の高まり、ボランティア活動の再評価などがきっかけだという。市側でも消防署員の人手不足の問題を抱えていたため、学生と大学と行政の思いが一致して実現したようだ。学生も就職先の一つとして消防署を考えるようになり、実際にサークル部員から消防署に就職した者も数人いるという。
 産官学連携がいろいろ言われる昨今、研究開発等での産学連携だけでなく、こうした地域密着の学生のパワーを活用した具体策は注目に値する。オトナ社会の入り口にいる学生たちはこうした実務体験を望んでいる。従来の枠組みにとらわれない柔軟な発想が必要だと感じた。
 非常時への対応能力の決め手は、平時の予備軍をいかに効率よく準備しておくかだ。消防団の仕組みはその一つであり、大学消防団サークルは新たなソルーションだ。AEDの配備など、非常用機器の整備が進んでいるが、いざというときに威力を発揮するには多くの人が取扱いの実務能力を備えている必要がある。サークル活動で、危機意識の醸成に加えて実務能力を備えておれば、社会人になってからも非常時に力を発揮してくれる。学生という社会人への準備期間に非常時対応能力を養っておくことは、今後高齢化が進む社会の活性化、効率化の点でも有力だ。

 今月も例会模様2件とおなじみの連載コラムを掲載できた。加藤会員からは久々の投稿だが、従来の歴史紹介にとどまらず、地元の歴史資産の活用についても踏み込んだ提言を戴いている。今月の文化の街づくり委員会でも同様な議論があったばかりだ。お城や町並みなども貴重な歴史資産だが、地域に引き継がれてきた「お祭り」もこの地区には素晴らしい文化として根付いているものがたくさんある。産業懇談会でも今後、地域の歴史資産、文化資産にも注目した活動を展開していきたい。会員諸兄のご支援・ご協力をお願いする次第だ。

(片桐)