産業懇談会【メールマガジン 産懇宅配便】 第144号 2014.5.30 発行

メールマガジン■産懇宅配便■

平成26年5月度(第144号) 目次
【26年4月度 産業懇談会(水曜第2G)模様】 4月9日(水) 12時00分〜14時00分
【26年4月度 産業懇談会(水曜第1G)模様】 4月15日(火) 12時00分〜14時00分
【26年5月度 産業懇談会(木曜G)模様】 5月8日(木) 12時00分〜14時00分
【26年5月度 産業懇談会(火曜G)模様】 5月13日(火) 12時00分〜14時00分
【名古屋いちばん物語】 No.60
【新会員自己紹介】
伊藤 裕之氏

西松建設株式会社 中部支店 支店長

【6月度産業懇談会のご案内】
【7月度産業懇談会のご案内】
【懇親ゴルフ会開催のご案内】
【お知らせ】
【コラム】
コラム1 【保健師からの健康だより】 No.122
コラム2 【「ほん」のひとこと】 No.67
コラム3 【苗字随想】 No.144

【26年4月度 産業懇談会(水曜第2G)模様】

テーマ: 『 新聞記者が“異次元”の宿屋の主人になった時 』

日 時:平成26年4月9日(水) 12時00分〜14時00分
場 所:名古屋観光ホテル 18階 伊吹の間
参加者:36名

スピーカー:
越川 健一郎(こしかわ けんいちろう)
株式会社ナゴヤキャッスル
取締役社長

越川健一郎氏

1. 私が新聞記者になった理由
 私は、1978年に毎日新聞社に入社した。記者として、主に事件・事故を取り扱った。
 新聞記者になった理由は、2つある。まず1つ目は、作家・曽野綾子氏の講演を聴講した際の言葉である。戦時中に集団自決の場で生き残った二人の女性が、その場に現れた米兵の様子を証言した時、それぞれ「鬼のようだった」、「優しく微笑んでくれた」と異なる表現をしたことを例に挙げ、「『事実』は一つでも、人間の記憶の中に生きる『真実』は複数あってもいい」と語られた。その言葉に感じるものがあった。
 2つ目は、高校時代の恩師の「騙されないためには、『健全なる懐疑精神を持て』」との言葉である。これは、「世間の常識でさえ、一度『本当なのか』と疑い、自分が納得できて初めて受け入れるようにしなさい。」との意味で、今でもこの恩師の言葉を覚えている。
 このような経験から、対象者の中にある「真実」を紡ぎ出す、メディアの世界に身を置く職業も面白いのではないかと思ったのである。

2. 新聞記者として駆け出しのころ
 ある時、3歳の男の子が農業用水に落ちて亡くなる事故があった。子供が農業用水で遊んでいた理由を知りたくて、他社の記者が帰ったあと現場へ向かったところ、その場にいた老人から「この用水の門扉を、自分が間違えて1日早く開けてしまった」との証言を聞くことができた。事故の真相は、「集落で告知していた日程より1日早く門扉を開けた為、遊んでいた子供が流された」とのことであった。この件は、当時トップ記事となり上司から褒められたが、被害者が生き返るわけでもなく、全く嬉しくなかった。それよりも老人の心境を思いやると心に重圧がかかり、今後この仕事を続けていけるだろうかと不安になったことを覚えている。

3. メディアに騙されてはいけない
 1989年に毎日新聞社東京本社の社会部から、サンデー毎日の編集部に異動し、編集長を務めた。編集長の仕事は、主に週刊誌の中吊り広告を考えることであった。実は、読んでみると大したことのない記事でも「全容解明」、「全貌判明」などの見出しを付けることで、読者の興味を引くことができる。くれぐれも見出しを真に受けず、疑いの目を持って記事を読んでいただきたい。
 事件・事故の目撃者の証言なども、正しくない場合が多い。例えば、事件現場周辺をうろついていた「白い」不審車両が、実際には「赤い」車両であったなど、よくある話である。自分自身が「見る」ことを意識していれば正確さは増すが、突然で「見る」ことを意識していないと、記憶が混同して曖昧になるなど、正確さに欠ける。皆さんにも、正しいものは何か「よく見る」ことを、心がけていただきたい。

4. “異次元”の宿屋の主人になってみて
 退職するまで働くと思っていた新聞社から突然ホテル勤務になったが、結果的に良かった。一人の客からおもてなしをする立場となり、舞台裏のスタッフの動きを知れば知るほど、想像以上の仕事ぶりだと感心している。より細やかなサービスを提供するために、スタッフは、お客様目線で「よく見る」ことを心がけている。
 以前テレビ番組で紹介していたが、コミュニケーションによって、人が他人から受け取る情報(感情や態度など)の割合は、ボディランゲージ(55%)、声の調子(38%)、言葉遣い(7%)だという。また、お客様のお話を伺う際、適切でない対応は、「お客様のお話に口を挟んで、話の腰を折る」、「視線を逸らす」、「筆記用具を触るなどしてソワソワする」である。逆に適切な対応は、「相手の方に体を少し傾ける」、「時々うなずく」、「視線を合わせる」、「発言のメモを取る」、「話の内容を繰り返し、お客様が伝えたいことを丁寧に確認する」、「話の内容やご要望に不明な点があった場合は質問する」などである。
 そして、ホテル内での大切な動作は、スマイル、アイコンタクト、名前で呼ぶ、挨拶をする、の4つである。加えて、「テン&ファイブルール」、「名残り手」、「ファイブステップルール」など、ホテルで働くための基本動作もある。
 これらの動作はできて当然であり、当ホテルのスタッフを見て「動作ができていない」と感じたら、再教育を行うので私に申し出ていただきたい。お客様の健全なご指摘が、我々を育てて下さるとの思いから、ご指摘には「丁寧に」、「誠意を持って」、「誠実に」対応していきたい。宿屋の主人になって来月で丸2年になる。ご用向きのある方は、ぜひお声をかけていただきたい。


>>目次へ

【26年4月度 産業懇談会(水曜第1G)模様】

テーマ: 『 留学生就職支援の現場から
〜留学・国内外での就業経験を通して 』

日 時:平成26年4月15日(火) 12時00分〜14時00分
場 所:名古屋観光ホテル 18階 伊吹の間
参加者:23名

スピーカー:
今井 千晴(いまい ちはる)
名古屋大学
国際教育交流センター キャリア支援部門
特任講師

今井千晴氏

1. 主体的に関わる仕事がしたい
 私は高校卒業後、半年間の語学留学を経て、2001年8月より米国の大学へ正規留学した。卒業後は、「SIA(Subaru of Indiana Automotive, Inc.)」にて、通訳・翻訳の仕事に携わっていた。
 2008年8月、日本へ帰国し富士重工業株式会社の関連会社に勤めていたが、「自分が主体的に関わる仕事がしたい」との思いから名古屋大学の留学生キャリア支援担当部署に着任した。
 昨年10月、本学における国際組織の改組により、「国際教育交流センター」が設立された。それに伴い、「外国人留学生、海外留学経験のある学生のキャリア教育・就職支援」を強化する目的のもとキャリア支援部門が立ち上がり、キャリア支援専任教員として着任した。

2. グローバル人材育成における名古屋大学の現状とこれから
 本学には、2013年11月現在、世界91ヵ国、1,791名の留学生が在籍しており、そのうち約8割がアジア出身、その5割以上が中国からの留学生である。短期留学生や研究員を含めると、常に2,200人程の外国人が在籍している。
 また、本学は2009年に「国際化拠点整備事業(Global 30)」の拠点として採択された。この事業は、「質の高い学部・大学院教育を留学生にもより広く提供し、国際的に活躍できる人材を育成する事」を目的としている。これを受け、2011年10月より、外国人留学生及び帰国子女生を対象とした国際プログラム(英語のみによる講義で学位が取得できる教育プログラム)を開設した。
 なお、文部科学省の「国立大学改革プラン」によると、国際水準の教育研究を展開していく中で「今後10年間でランキング100位以内に日本の大学10校がランクインすること」を目標としている。本学を含め、「大学の徹底した国際化」が当面の課題となっている。その中でも、名古屋大学の外国人教員比率と留学生比率は、日本の大学の中でもトップクラスである。

3. 留学生の就職支援
 国際教育交流センターキャリア支援部門では、外国人留学生だけでなく、日本人で留学経験がある学生も含めて、キャリア教育や就職支援を行っている。
 キャリア教育の活動として、昨年は「グローバル人材育成プログラム」や「日本のものづくり、愛知のものづくりプロジェクト」などを行ってきた。
 前者では、昨年11月に中部経済同友会の協力で、外国人留学生との懇談会を実施した。外国人留学生にとって、企業に勤める方々と直接お話する機会など滅多にない。会話を英語限定としたことで、多くの国の留学生が参加できた。ぜひ今年も協力をお願いしたい。
 後者は、外国人留学生に「愛知県から世界市場へと事業を展開し、日本の産業を支えている企業について、愛知・日本のものづくりについて知ってもらいたい」という思いから立ち上げた。このプロジェクトによって、協力企業との間に接点をつくることができ、また就職に結び付けることもできる。
 就職支援としては、愛知県と連携して、留学生のインターンシップを行っている。毎年インターンシップ終了後には報告会を実施しているが、更に工夫を加え、新たな企業が積極的に協力したくなるような内容にしていきたいと考えている。また、外国人留学生と留学経験のある学生のための合同企業説明会や個別の企業説明会も行っている。
 最後に、本学が直面している課題はG30国際プログラムなどの「日本語を得意としない」学生たちの就職支援である。日本語が不得意というだけで、優秀な学生が外資系企業や海外の大学院に流れてしまう可能性もあるため、そのような学生に対し受入先の開拓(例えば、海外現地法人での活躍の道や外資系企業への働きかけなど)や、企業に対する本学のG30国際プログラムの認知度向上活動(シンポジウムやセミナーなどの広報活動)を検討している。
 学生への支援活動は引き続き行っていくが、企業の皆様にはぜひ企業内のグローバル化を進め、そのような学生たちを採用できる環境を充実させていただきたい。


>>目次へ

【26年5月度 産業懇談会(木曜G)模様】

テーマ: 『 飛行のはなし(パイロットの世界) 』

日 時:平成26年5月8日(木) 12時00分〜14時00分
場 所:名古屋観光ホテル 3階 桂の間
参加者:37名

スピーカー:
小島 広(こじま ひろし)
航空自衛隊小牧基地 第1輸送航空隊
司令部援護業務室長

小島広氏

1. 自衛隊の任務
 現在の自衛隊の任務は、国家防衛、災害対応、海外派遣が主で、最高指揮監督権者は、内閣総理大臣である。制服着用の自衛官と呼ばれる人数は約25万人、防衛関係費には国家予算の約5%が充てられている。
 自衛隊では、特定の任務を達成するために、陸上・海上・航空自衛隊の部隊のいずれか2つ以上からなる統合任務部隊(JTF:Joint Task Force)を編成する場合がある。東日本大震災の際は、最大規模の災統合任務部隊-東北(JTF-TH)を編成して災害対応にあたった。昨年11月には、台風により甚大な被害を被ったフィリピンの復興支援のため、国際緊急援助統合任務部隊を編成し、活動を行った。自衛隊は、今や全世界に派遣され、国際平和維持活動、国際緊急援助活動等で広く活躍している。

2. 日本の防衛に対する取り組み
 昨年12月に閣議決定された国家安全保障戦略(NSS)において、日本は、「積極的平和主義」の立場から平和国家を堅持しつつ、北朝鮮の核開発や弾道ミサイルなどの大量破壊兵器脅威、また中国の国際法秩序に反する行動等に対処するとしている。
 日本国家として、専守防衛、文民統制、非核三原則を堅持した上で、「統合機動防衛力」を構築し、自衛隊は、(1)周辺海空域における安全確保、(2)島嶼部(尖閣諸島含む)に対する攻撃への対応、(3)弾道ミサイル攻撃への対応、(4)宇宙空間及びサイバー空間における対応、(5)大規模災害等への対応を行っていく。

3. 日本周辺の情勢
 領空は、領土及び領海(領土から12海里までの海)の宇宙空間までの上空をさしているが、十分な余裕をもって各種対処を行うために、日本では「防空識別圏」を設定し、世界に明示している。先般、中国が尖閣諸島を含め一方的に防空識別圏を発表したことは周知であるが、従来からの空軍力及び海軍力の増強に加え、この防空識別圏内に中国として主権があるかのような主張をしたことで世界的に問題となっている。防衛省では、航空自衛隊那覇基地に新たに警戒航空隊の早期警戒機を配備した。今後、戦闘機部隊の増強を行う他、陸上自衛隊は沿岸監視部隊の配備、海上自衛隊も護衛艦の増強を行う予定である。
 航空自衛隊のスクランブル発進は、平成21年度はロシア機への対処を中心に300回程度だったが、昨年度は810回に上り、その半分以上が中国機への対処であった。

4. パイロットの養成課程と操縦における身体的影響
 自衛隊のパイロット養成では、防衛大学校及び一般大学を卒業して幹部候補生として入隊した人、または、航空学生(高等学校等を卒業して入隊後2年間の基礎教育を受けた人)がパイロット課程へ進む。最初にプロペラ機で操縦の基礎課程、その後ジェット練習機の操縦課程を経て、輸送機・救難機の課程、あるいは戦闘機の課程を履修する。
 なお、戦闘機パイロット1名の養成には、高卒者の場合で、約5年間の養成期間と約5億円の費用が必要となる。
 実際に戦闘機を操縦し、急旋回や急激な引き起こしを行うと、通常の航空機に乗客として搭乗しているときの2〜3倍のG(荷重倍数のことで、1Gは地球の重力に相当)、最大で8〜9Gがかかる。すると、パイロットの全身に血液を送る循環機能が阻害される。Gの増大によって脳への血流が低下すると、視野狭窄、意識の低下等の症状が現れ、状況によっては高Gによる意識喪失(GLOC)に至る危険な場合もある。GLOC対策として、パイロットは(1)身体の鍛錬(特に上体の筋力、首の強化)、(2)規則正しい生活(節制、休養)、(3)正しい呼吸法の習得、(4)耐Gスーツの着用、(5)継続した「G負荷」をかける実機訓練を行っている。
 更に、操縦者は飛行中に、平衡感覚にズレが発生したり、雨や雲で視界が利かない時には、錯覚や空間識失調に陥る場合もある。その際には、編隊のリーダー機に連絡を取り、操縦している機体の姿勢等の状況を教えてもらうことで危険を回避する。

5. 航空自衛隊の安全活動
 航空自衛隊の安全活動として、「1つの重大事故の影には29の軽微事象があり、さらに300のヒヤリハット事象がある」との考えから、現場をよく観察し、再発防止対策と未然防止活動を組織的に実施している。また、熟練者も新人も物事に対して「忘れる」、「記憶が曖昧になる」等の人間の特性は共通であり、その特性を理解した教育訓練を実施している。更に、歴史上や近年で起こった事故等の事例を広範に収集・分析し、教訓として教育にも活用している。

6. 自衛官の再就職支援制度
 自衛隊は、他の省庁と異なり、自衛官の再就職支援制度が確立されている。自衛隊員は職務に専念する義務が自衛隊法に定められていることに加え、各種の任務を遂行するために「若年定年制」及び「任期制」という特殊な任用・人事制度となっているからである。また、この制度は、任務・職務に従事する隊員の士気の高揚を図り、その一方で新たに採用する優秀な若手の隊員に、将来の心配がないことを理解してもらうためにも必要である。
 自衛官の再就職については、厚生労働大臣認可の(財)自衛隊援護協会が斡旋を行っている。自衛隊の各部隊では、援護業務を担当している部署が援護協会と連携して、求人・求職の取り次ぎを行う。また、退職予定の隊員の再就職指導、職業訓練を行い、企業に対しては広報活動も実施している。自衛官経験者の採用をお考えの企業はぜひご連絡いただきたい。
 これからも日本のために活動していく自衛隊に対し、皆様のご理解をお願いしたい。


>>目次へ

【26年5月度 産業懇談会(火曜G)模様】

テーマ: 『 海外でインフラ事業を受注する際の実践的なヒント
                            ―私の成功・失敗例の紹介― 』

日 時:平成26年5月13日(火) 12時00分〜14時00分
場 所:名古屋観光ホテル 3階 桂の間
参加者:25名

スピーカー:
中村 裕司(なかむら ゆうじ)
新日鉄住金エンジニアリング株式会社
理事 中部支社長

中村裕司氏

1.  当社の概要と海洋事業部について
 当社の事業の柱は、製鉄プラント、環境ソリューション、海洋、建築・鋼構造、エネルギーの5分野である。本日は、私が10年程関わった海洋事業部についてお話したい。
 海洋事業部は、(1)石油・ガス用のプラットフォーム(精製/分離/受入/圧送/居住等)、および採取したガスを回収するための海底パイプラインの「設計、調達、建設/製作、輸送/施工、試運転」、(2)陸上プラントや海上浮体設備(の一部)モジュールの「設計、調達、建設/製作」、を行う部署である。
 海洋事業部は世界中で事業を展開しているが、特に東南アジアがその中心となっており、拠点がシンガポール、タイ、インドネシアにある。所属の従業員は約6,000人、そのうち日本人は150名程度で、残りはインド人を中心とした外国人で構成されている。仕事の9割以上が海外の物件である。

2. 事例紹介
 私が東南アジア駐在中に関わった、プロジェクトを推進する上で発生した事象を紹介する。インフラ・ビジネスを進める上で、何らかのヒントになれば幸いである。
(1)インドネシア 円借款を活用したSSWJプロジェクト
 スマトラ島の天然ガスをジャワ島に圧送する長距離ガスパイプラインの敷設プロジェクト。当社は、インドネシアのエネルギー事情改善の為、現地の天然ガス公社に対し円借款を活用した天然ガスパイプラインの敷設を提案、共同で事業化を進めた。しかし、プロジェクト実行のための関係機関の承認が得られるのに7年の歳月がかかった。
 このプロジェクトでは、客先の要請に対応したことにより特別円借款の条件をクリアできず、結果的に契約違反を招きペナルティを支払った。更に、客先の用地買収の遅れで当社にコスト増が発生し、追加支払いを要求したが、契約で明文化するのを怠ったため追加費用を回収できないという事象が発生した。
(2)インドネシア CPPプロジェクトの逸注
 インドネシアで当社が是非受注したいと考えていた、CPP(最大級の海洋プラットフォーム)プロジェクトを他国企業が受注する事態が発生した。それはインドネシア国内の汚職改善に向け、許認可権がインドネシア国営石油会社から、独立行政機関のBPMIGASに移管され、さらに当社の現地子会社と国営企業の関係が解消されたためである。その結果、当社の情報収集能力やロビー活動能力が低下し、入札の際の事態の把握に時間がかかり、タイムリーな対策を打てなかったのが原因である。
(3)ミャンマー 海底パイプラインプロジェクトの辞退
 ミャンマーでは、国内の電力不足対策にミャンマー沖合の天然ガス田からヤンゴンまでの海底パイプラインの敷設プロジェクトが計画され、国際入札が実施された。その時、MOGE(国営石油ガス公社)の総裁は、是非当社に発注したいと考えてくれていた。ところが、当社は同じ時期にタイで仕事を受注し、施工船が回せなくなっており、入札に参加できない理由を説明するために、首都のネピドーまで何度も足を運んだ。結果的に総裁は当社の誠意を理解し、辞退を認めてくれた。その後、別の大型プロジェクトの入札では当社が一番札となり、許認可権限を有するMOGEの承認がスムーズに得られた。
(4)タイ PTTEPとの長期に渡る契約
 タイのシャム湾には小規模のガス田が無数に点在している。当社は現地の合弁会社を30年以上前に設立した関係で、PTTEP(石油ガス公社)の海洋工事を長年ほぼ独占的に受注。累計で200基のプラットフォームをシャム湾に敷設してきた。当社が長年タイで事業を安定的に継続できたのは、現地の有力パートナーの存在が大きい。インフラ分野での工事を受注し、スムーズに実行するための情報収集、ロビー活動は必須であり、その面でパートナーの存在は大きい。

3. 海外でのインフラ事業受注の際の教訓
(1)カントリーリスク
 現地の有力なパートナーの有無によるところが大きい。危険予知の為のインテリジェンス活動、リスク発生時の対処の両面で、現地のパートナーがどの程度頼りになるのかが重要になってくる。
(2)契約書の重み
 すべての紛争の可能性を、契約締結の際に網羅することは不可能である。しかし、徹底的に議論しておくことは、問題が発生した時の助けになる。
(3)コンプライアンス
 汚職に関与することを避け、現地に受け入れられるためには、CSR活動を地道に続けることが重要である。

 日本企業の成長のために、アジアの成長をどう取り込むか、ということがこれまでにも増して重要な時代になっている。海外でのインフラ事業の受注に向けて、私の経験が役に立つのであれば、遠慮なくご質問、ご相談いただきたい。


>>目次へ

【名古屋いちばん物語】 No.60


テーマ: 『 「住吉の語り部となりたい」 シリーズ第38回 』

料亭つたも主人
深田正雄

末広町:御洒落会・きた福

 北見さんの町名説明によれば、「名古屋城築城後、一帯が松原であったので松原町となったが、将軍綱吉の養女に松姫が迎えらえると、松の字を避けて末広町と改名された。」とのこと。末広の由来は江戸時代大久保見町南の木戸から本町通りの道幅が広く南に末広がりとなっていたことや、若宮八幡社の門前に扇屋があったとかいわれています。いずれも事実で35年版地図には東南角から3軒目には「大国屋・扇子店」がございました。大国屋さんは住吉2丁目蔦茂の西に移転されましたが、オリジナル手作り扇店として今も営業され若宮祭礼の扇子制作などお世話になっております。
 旦那衆・末広町の粋男、伊勢門水翁を紹介しなくてはなりません。末広町2丁目28番伊勢屋薬局水野の前には名古屋市教育委員会の門水宅跡の史跡看板があり、往時を偲ぶことができます。(写真:1)
 伊勢門水:本名・水野宇右衛門、 御洒落会・主宰(1859年〜1932年)
 芸名は屋号の「伊勢屋」にちなみ、さらに本名を「水の上の門」と洒落て「門水」と号した。伊勢屋は旗商だが、昔は薬業を営み、明治になってから転業したと言う。狂言師として6歳で4世早川幸八に入門。明治16年に「三番叟」を披く。明治35年には自宅の庭に舞台を造り、「鳳友舞台」と名付け、素人の子弟に狂言を教えたが、実は門水は稽古嫌いでも有名だったらしい。芸風は洒脱な芸で独特なとぼけた味があった。「鬼瓦」の大名の人情味、「大藤内」などを得意とし、また「唐船」の間狂言で唐人の船頭などに扮する時、最も印象的であったと言う。また、狂言画、狂歌、戯作にも長けており、新作狂言や常磐津作詞、著作も数々ある当地の誇る文化人であり、祖父良矩の尊敬する「遊興人」であったようです。門水と仲間たちの繰り広げたキテレツな振る舞いのサークルが「御洒落会」!(写真:2)その下らなさは想像以上でした。大の大人がこんなことに心血を注いでいたのか、と呆れを通り越して、畏敬の念まで湧いてくる程です。(狂言共同社など、HPより)
 同地はご一族が「KSイセヤビル」として複合テナントビル経営をされているようです。
 矢場町1丁目骨董商・前田寿仙堂の三男、木村哲央氏は門水研究家でもあり、作品のコレクターです。同氏は千種区古川美術館近くにて「御洒落」と名付けた古美術店を経営されています。

 同町デビューしたもう一人の奇人、山田才吉翁(1852年〜1937年)は1880年(明治14年)に若宮末広座北隣り東陽町筋に漬物屋「きた福」を開店。この頃に守口漬(守口大根の味醂粕漬)を考案したとされ、これが評判スタート。1884年(明治17年)には日本缶詰を立ち上げて愛知県下で初めて缶詰製造販売に参入。日清戦争・日露戦争で大量の軍用缶詰の注文を受けて更なる財を為した。そして、都心の遊園地付テーマパーク料亭「東陽館」を東陽町4丁目(現中土木事務所あたり)に、水族館・プール併設3階建「南陽館」を築地(現東築地小学校)に、可児市に木曽川河畔リゾート「北陽館」を開業、名鉄常滑線聚楽園駅に海辺の別荘地に料理旅館「聚楽園」そして、1927年天皇陛下(昭和天皇)御成婚記念事業として阿弥陀如来大仏建立され、現在も東海市の名所となっています。各地へのアクセスとして熱田電気鉄道など交通事業、PR機関として中京新報の創刊ほか、議会活動にも熱心であったといわれています。同氏の「きた福」は広小路「喜多福総本家」として承継され、守口漬の製造販売を続けています。
 末広町は若宮八幡社の門前町として繁栄、若宮祭では各町内のトップ先導し豪華絢爛・黒船行列は他六町内「山車からくり」と比べ、ランクが違ったそうです。(祖父・良矩談)
 南寺町は若宮から本町通りを南に続きますが、寺社仏閣の本堂は通りの東は全て南向き、西側は本町通りを起点に東向きに建造、清州越え家康の街づくりの原点となっています。
 また、戦災で全て焼失した末広町でも現存する鉄筋コンクリートの佐藤タオルさんは炎上を免れ、躯体は当時の面影を残しタオル問屋として営業を継続されています。北隣のビルも焼け残ったようで宮吉ガラスさんの関連かステンドグラスやレンガ彫刻から大正ロマンの香りがいたします。最近まで高級ステーキレストラン白川亭でしたが、いつのまにかアンティーク衣料のお店になっていました。(写真:3・4)
 次回は、末広町旦那衆のお話をいたしたいと思います。


写真1:伊勢門水宅跡看板


写真2:御洒落会大口六兵衛氏の葬儀後、初七日でのメンバー写真:左端が門水


写真3:末広町で焼失を免れた2棟:佐藤タオルさんと北隣のショップ


写真4:平成26年5月16日若宮祭礼・末広町の当番で山車御渡中の休憩
筆者スナップ:後方はS35年当時:味岡屋・宮吉ガラス・佐藤タオル

>>目次へ

【新会員自己紹介】

伊藤裕之氏
火曜グループ

伊藤 裕之(いとう ひろゆき)
西松建設株式会社 中部支店 支店長

【西松建設株式会社】
〒461-8558 名古屋市東区泉二丁目27番14号
TEL:052-931-8471 FAX:052-931-8895
URL:http://www.nishimatsu.co.jp/

 西松建設株式会社中部支店の伊藤裕之でございます。
 このたび前任の一色眞人の後を受けて、産業懇談会火曜グループに参加させていただく事になりました。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 弊社は、現在の岐阜県安八郡にて明治7年(1874年)土木請負業として創業以来、本年で140周年を迎えます。海外事業でもすでに香港とタイ国で50年の歴史があります。
 目指すべき目標は社会、地域、株主、企業先、職員とその家族、関連会社などすべて含めてWIN-WINの関係を築くことで、会社としての社会貢献、継続性を確保していこうとしています。

 私は名古屋出身です。西区で生まれ、港区で育ち、中学生で愛知県大府市に移り、今も実家は大府市にあります。しかしながら、入社以来、勤務先が東日本、北日本中心で、中部地方から離れておりました。現在は37年ぶりの地元生活を経験しながら、大きく変化した名古屋に不安と楽しみの毎日を過ごしております。

 今回の産業懇談会への参加を通じて、色々と勉強させていただき、様々な業種、業界の方々の貴重なご意見をいただけることを大変楽しみにしております。
 皆様方のご指導、ご鞭撻を何卒よろしくお願い申し上げます。

>>目次へ

【6月度産業懇談会のご案内】
水曜第2グループ以外は、名古屋観光ホテルでの開催です。
グループ名 世話人 開催日時 テーマ 場所
火曜グループ

岡部 聰
深田正雄

6月10日(火)
12:00〜14:00

島屋スペースクリエイツ株式会社
取締役社長 明比実也氏
「業界の常識は世間の非常識
−二つの業界を経験して−」
18階
伊吹の間
水曜第1グループ

落合 肇
飯田芳宏

6月18日(水)
12:00〜14:00
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)
常務執行役員 森口茂樹氏
「女性がイキイキと働く職場づくりに向けて(仮)」
18階
伊吹の間
水曜第2グループ

片桐清志
見祐次

6月11日(水)
11:50〜14:30
(株)アイチコーポレーション
名古屋支店長 今井田 敦氏
「はたらく車の健康診断と空中散歩」
※恐れ入りますが、行程の都合上、定員を25名様(お申込み順)とさせていただきます。(5月30日(金)現在のお申込み数:21名)
※ご出席のお申込みをいただいた方には、5月26日(月)付で詳細案内を送付致しました。
(現地集合)
名古屋市
緑区大高町
丸の内70
052-621-5112
木曜グループ

河村嘉男
倉藤金助

6月5日(木)
12:00〜14:00
株式会社アクティオ 
支店長 水谷文和氏
「大型プロジェクトで東海地区はどう変わる?
〜自由な発想で予測〜」
18階
伊吹の間

<ご参考>
平成26年6月11日(水)水曜第2グループ:(株)アイチコーポレーション視察会
株式会社アイチコーポレーション
住所:名古屋市緑区大高町丸の内70-1 Tel:052-621-5112

11:50



12:00〜12:30
12:30〜13:15
13:15〜13:45
13:45〜14:30

14:40

公共交通機関をご利用の方 → JR大高駅集合
 ※駅から現地まで、車で移動致します。
車(社用車等)をご利用の方 → 現地集合

昼食
概況説明「はたらく車の健康診断」
工場ご案内
空中散歩(※雨天時は屋内見学のみ)
・高所作業車への試乗を行います。
現地解散

<公共交通機関のご案内>
■JR 東海道本線
【往路(豊橋方面 上り)】:乗車時間15分/運賃240円
名古屋駅 11:04 発 → 大高駅 11:19 着 豊橋行・普通
名古屋駅 11:19 発 → 大高駅 11:34 着 大府行・普通
名古屋駅 11:34 発 → 大高駅 11:49 着 豊橋行・普通

【復路(名古屋方面 下り)】:乗車時間15分/運賃240円
大高駅 14:54 発 → 名古屋駅 15:09 着 岐阜行・普通
大高駅 15:10 発 → 名古屋駅 15:25 着 岐阜行・普通

>>目次へ

【7月度産業懇談会のご案内】
木曜グループ以外は、名古屋観光ホテルでの開催です。
グループ名 世話人 開催日時 テーマ 場所
火曜グループ

岡部 聰
深田正雄

7月8日(火)
12:00〜14:00

名古屋テレビ塔(株)
取締役社長 大澤和宏氏
「久屋公園を一体としたみんなのテレビ塔」
18階
伊吹の間
水曜第1グループ

落合 肇
飯田芳宏

7月23日(水)
12:00〜14:00
イイダ産業(株) 取締役会長 飯田芳宏氏のご紹介
中京大学 総合政策学部 教授 坂田隆文氏
「イマドキの学生気質
〜フツーの学生を「普通」で終わらせないために(仮)」
18階
伊吹の間
水曜第2グループ

片桐清志
見祐次

7月9日(水)
12:00〜14:00
(株)エヌ・ティ・ティ・データ東海
取締役社長 川島忠司氏
「仕事のオンとオフ、そして
          別邸キャンピングカーとの出会い」
3階
桂の間
木曜グループ

河村嘉男
倉藤金助

7月10日(木)
15:00〜19:00
丸菱工業(株) 取締役会長 河村嘉男氏のご紹介
「キリンビール(株)名古屋工場視察会」
【定員】行程の都合上、35名様(お申込み順)とさせていただき定員数に達し次第、申込を締切らせていただきます。(5月30日(金)現在のお申込み数:23名)
【詳細】ご参加の皆様には、別途ご案内申し上げます。
(現地集合)
清須市寺野花笠100
052-400-5351

<ご参考>
平成26年7月10日(木)木曜グループ:キリンビール(株)名古屋工場視察会
キリンビール(株)名古屋工場
住所:清須市寺野花笠100 Tel:052-400-5351

14:50
15:00
15:10〜15:30



15:40〜16:50
17:00〜19:00
19:00

キリンビール(株)名古屋工場 現地集合
集合写真撮影(エントランス前)
ご挨拶・ご講話(レストラン:ブルワーズハウス 2階)
 ■キリンビール(株)名古屋工場
                 執行役員工場長 築地輝夫 様

工場見学(ビール等の試飲・売店でお買い物)
懇親会(レストラン:ブルワーズハウス 2階)
現地解散

<交通のご案内>
■お車でお越しの場合
 ・名神高速道路 一宮I .Cより約20分
 ・名古屋第二環状自動車道 清須東I .Cより約5分

■公共交通機関でお越しの場合
 ・城北線「尾張星の宮」駅下車→徒歩約5分

>>目次へ

【懇親ゴルフ会開催のご案内】

 産業懇談会では、恒例となっております4グループ合同の懇親ゴルフ会を下記のとおり開催いたしますので、ご案内申し上げます。代表幹事、直前代表幹事、常任幹事、監事の皆様も、是非ご参加くださいますようお願い申し上げます。

日時

8月2日(土) 7時12分スタート
(アウトスタート7組、インスタート3組を予定しております)

場所 木曽駒高原カントリークラブ
長野県木曽郡木曽町日義4898-8
電話:0264-23-7001
 会費 後日精算後、ご請求申し上げます。
集合場所等
  • 現地集合といたします。(ご希望の方には、前日宿泊の手配をさせていただきます。詳細は別途ご送付いたします)
    6時50分までにアウトスタートのティグラウンド前にお集まりください。(開会式・競技方法などを説明します)
  • プレー終了後クラブハウスにて表彰式を兼ねた懇親会の開催を予定しております。(懇親会終了予定時刻:15時頃)
  • 競技方法は、ダブルペリア方式とします。
出欠のご連絡
  • ご参加を希望される方のみ、別紙のFAX返信用紙にご記入の上、
    6月13日(金)までに事務局へお知らせください(参加者は会員限りとし、代理出席はお断りさせていただきます)
    ※定員に達し次第、申込みを締切らせていただきます。
  • 7月25日(金)以降のプレーのキャンセルには、キャンセル料が発生いたしますので、ご了承ください。
  • お申込みをいただいた方には、後日ご宿泊先・夕食会(ご希望者)、組み合わせ等の詳細をご案内いたします。
お問合わせ先

中部経済同友会事務局 担当:石山・山田
電話:052-221-8901

>>目次へ

【お知らせ】

産業懇談会メールマガジン配信について

メールマガジンの配信は無料です。配信をご希望でない方はお手数でも下記ボタンを押して、メールをご返信いただければ幸いです。ご意見などございましたら、そのメールにお書き下さい。

メールマガジンの配信を ○希望しない

>>目次へ

【コラム】

コラム1 【保健師からの健康だより】 No.122
花ちゃんからの健康だより

株式会社 スズケン
保健師 鳥巣 妃佳里

『 朝日を浴びて元気に過ごしましょう 』

 木々の緑が色濃くなり、名古屋では日中の最高気温も25度を超える日が増えてきました。もう夏がすぐそこまで近づいてきているのを感じますね。

 先日、ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部が「体重を減らすには、朝日を浴びるのが効果的である」という研究を発表しました。これは54人のボランティア(平均年齢30歳)を対象に行われたもので、午前8時〜12時の間に20〜30分間、500ルクス以上の光を浴びるとBMI(体格指数)減少の効果が期待でき、光を浴びる頻度が少ないと、BMIは増加することが確認されました。室内で500ルクス以上の光を浴びるのはなかなか難しいのですが、屋外であれば曇りの日であっても1000ルクス以上の明るさがありますから、外に出てあるいは窓際で過ごすことでこの条件は十分クリアできます。光を浴びる量やタイミングによって体重が変化する理由としては、(1)朝に光を浴びることで体内時計が正しく働くようになり、体の代謝が向上する、(2)食欲や代謝に影響するホルモンに作用し、過食を抑えられるようになる、からだと考察されています。そして日光を浴びる時間は早い方がより効果的で、朝日を浴びながらウォーキングするのが体重管理には最も効果的であると言います。
 朝日を浴びることの効果は質の良い睡眠を確保することにもつながります。朝日を浴びると身体が朝を感知して体内時計をリセットされ、睡眠を促すホルモン:メラトニンの分泌が止まります。同時に脳の覚醒を促すセロトニンの分泌が活発になります。そして朝日を浴びてから約14〜15時間後にメラトニンの分泌が開始され、暗くなると分泌量が増えます。朝日を浴びることでメラトニンとセロトニンの分泌量やタイミングが整うことで、自然と質の良い睡眠がとれるようになるのです。

 ちょっと早起きして朝日をしっかり浴びることが、体重管理と質の良い睡眠の確保につながります。また日中は暑くなっても、朝晩は比較的過ごしやすいこの時期からウォーキング等で身体を気温の変化に慣らしていくことは、熱中症に負けない身体づくりにもつながります。まさに良いことずくめですね。日が長くなり、朝自然に目が覚めやすくなる季節です。夏を元気に過ごすためにも、早起きと朝の日光浴(とウォーキング)を始めてみませんか。

朝日を浴びて、夏を元気に過ごせる身体づくりをはじめましょう

>>目次へ

コラム2 【「ほん」のひとこと】 No.67
コラム【理念経営物語】

株式会社 正文館書店 取締役会長
谷口正明

『 かつて誰も調べなかった100の謎 』

堀井憲一郎著・文藝春秋刊

 変わった本をご紹介します。1995年から2011年まで「週刊文春」誌上で792回連載された「ホリイのずんずん調査」から、100本を選び追記をつけたのがこの本です。
 「いきなり銀座の高級寿司店に行って寿司を食べるといくらかかるか」「25人で同時に同じ本をアマゾンで買うと順位はどれぐらい上がるのだ」「『文豪』と呼ばれる作家と『巨匠』と呼ばれる作家」というような意味ありげな調査から、「牛丼にかける卵は先に溶くのか溶かないのかという大きな問題」「まさか8月31日までに夏休みの宿題を終えてましたか」「ウルトラマンが地球に3分以上滞在していたころ」というようなどうでもよさそうな調査まで、スタッフを使って実際に調べている。中には、「西部劇で発砲されている弾の数を数えてみる」のように、一見何の意味もなさそうに見えて、本文を読むと、アメリカ人のメンタリティにまで言及した読み応えのある調査もあります。
 今後、このような本が出版されることは、まず、ないでしょう。

>>目次へ

コラム3 【苗字随想】 No.144コラム【苗字随想】

片桐清志

一字姓について(10)〜一字姓と曜日(1)〜

 最近は祝日と日曜日が重なると、月曜日が振替休日になる。そのため3連休は珍しくなくなった。それでもゴールデンウィークが大型連休であることに変わりはない。今回は曜日に関係する一字姓に着目してみた。
 「日」から「土」までの一字姓はすべてある。ご丁寧に「週(メグリ)」まである。曜日順に眺めてみたい。なお、「日」と「月」はNo.85(H21.6)で、「水」はNo.9(H15.2)でも紹介済みなので詳細はそちらをご覧いただきたい。
 「日」はそのまま「ヒ」の読みだ。日が頭につく「日姓」は330種以上ある。ユニークな姓は日ノ丸(ヒノマル)、日中(ニッチュウ・ヒナカ)、日光(ニッコウ)、日出(ヒノデ・ヒジ他)、日和(ヒヨリ・ヒワ他)、日夜(ヒグラシ他)、日差(ヒザシ)、日当(ニットウ・ヒナタ)、日食(ニッショク)、日記(ニッキ・ヒキ)、日日(ヒビ・タソガレ他)、日日日(ヒビカ・タソガレ)、日本(ニホン・ニッポン・ヒノモト・ヤマト)が見つかった。
 「月」は「ツキ」の他に「カゲ・カッコウ」の読み方がある。「月姓」は約100種ある。ユニークな姓は月光(ゲッコウ・ツキミツ他)、月見(ツキミ)、月待(ツキマチ)、月星(ツキホシ)、月並(ツキナミ)などだろう。
 「火」も読み方は「ヒ」のみだ。「火姓」は曜日の中では最も少ない30種だ。それでも火山(ヒヤマ)、火口(ヒグチ・ホグチ)、火縄(ヒナワ)、火矢(ヒヤ)、火焚(ヒタキ)、火元(ヒモト)、火除(ヒヨケ)、火爪(ヒズメ)などのユニークな姓が見つかった。
 「水」の読み方は「ミズ」の他に「モトリ」がある。「水姓」は260種ある。しかもランキング(佐久間 英氏)でも水野(125位)、水谷(185位)、水上(591位)、水島(675位)、水口(716位)、水田(911位)の6姓が1000番内に登場し、身近な存在だ。しかし読み方は厄介なものも少なくない。ユニークな姓では水引(ミズヒキ)、水子(ミズコ他)、水止(ミズトメ)、水洗(ミズアライ)、水道(スイドウ・ミズミチ)、水門(スイモン他)などが見つかった。
 「木」から「土」は次号で扱いたい。

>>目次へ




【平成26年5月号編集後記】

 先日、ある会の研修で石垣島に出かけた。昨年3月に石垣新空港がオープンしたのと同時に、石垣へはセントレアから直行便が就航している。実際に利用してみて気付かされたことがいくつかある。一つ目は使用機材だ。離島便をANAが直行便として毎日運航していることさえ珍しいのに、座席数が176席もあるボーイング737-800という中型機を投入している。新空港の滑走路が以前の1500mから2000mに延長され、使用機材の制限が少なくなったとはいえ、それだけの需要があること自体が驚きだ。しかも搭乗したのが金曜日だったためかほぼ満席だった。
 二つ目は所要時間だ。往路は偏西風の影響もあり2時間45分かかる。セントレアから出る国内線直行便としてはおそらく最長だろう。実際に石垣に行って聞かされたのは那覇までは約400kmだが台湾まではわずか200kmしかないという位置関係だ。新空港は国際空港としての機能も備えている。残念ながら今は定期便が運行されていないが、アジア全体の観光市場の伸びを考えると近い将来定期便が登場するだろう。我々はついつい日本中心に見てしまいがちだが、石垣の人にとっての一番近い隣人は台湾だ。石垣市長も台湾を視野に入れた観光振興に力を入れたいとのことだった。
 三つ目は帰路の搭乗率だ。日曜日だというのに往路の6〜7割の搭乗率だった。名古屋とは一日一往復しかないので、他の時間帯へのシフトは不可能だ。たった一回の体験なので憶測の域を出ないが、石垣島を単純往復するだけでなく、那覇や宮古島を経由して帰名する人がいるためだろう。ビジネスと異なり観光目的で、しかも遠路なら、ついでに足を延ばすプランを考えたくなるのが自然だ。国内だけで周遊するのではなく、地の利を生かしてついでに台湾回りで名古屋に戻るプランが実現すればもっと魅力的だ。
 新空港効果は顕著で、石垣島の観光客動員数は昨年95万人となり過去最高を更新した。今年は100万人超が期待できるという。石垣島を拠点とした八重山群島のリゾート開発も活発化している。抜けるような青空やコバルトブルーの海、南国情緒たっぷりの花々は観光資源として魅力的だ。ゆったりとした時間の中で、地元の人々との交流や豊かな郷土文化とのふれあいは「非日常性」を十分に満喫できる。
 中部地区でも数年前から外国人観光客誘致を目的とした「昇龍道プロジェクト」が動いており、地域間の連携が進んでいる。昨年は海外から日本への旅行客がようやく1000万人を超えた。それでも日本から海外へ出かける旅行客の約6割だ。この差を縮小させるためには、それぞれの地域の魅力を生かしたサービス開発が必要だ。中部地区は交通インフラが充実している。その強みを生かし、多様な周遊プランが生まれ、国際観光における日本の競争力が向上することを期待したい。

(片桐)