【7年11月度 産業懇談会(木曜G)模様】

テーマ(1): 『 MALのカーボンニュートラルの取り組みについて 』
テーマ(2): 『 共創と協創による価値創造 』

  • 日  時:令和7年11月6日(火) 12時00分~14時00分
  • 場  所:名古屋観光ホテル 2階 曙西の間
  • 参加者:16名

スピーカー:

写真:山谷 一徳氏
山谷 一徳(やまたに かずのり)
三菱オートリース株式会社
執行役員 中部本部長
写真:澁谷 知樹氏
澁谷 知樹(しぶや ともき)
三菱オートリース株式会社
日立事業本部日立事業 開発部長
写真:藤谷 旬生氏
山谷一徳様のご紹介
藤谷 旬生(ふじたに まさお)
スズキ株式会社
次世代モビリティサービス本部 本部長

テーマ(1): 『 MALのカーボンニュートラルの取り組みについて 』

<山谷 一徳 氏>

自己紹介と会社紹介

 熊本県天草市生まれ、育ちは大阪市住之江区で、社会人になるまでずっと大阪で過ごした。1989年にセントラルリースへ入社し、その後の社名変更や組織再編を経て、仙台支店長、東北支店長、千葉支店長、刈谷営業部長、不動産プロジェクト部長などを務めてきた。不動産プロジェクト部の分社化に伴い、MULプロパティで専務として勤務した後、2019年に三菱HCキャピタルの名古屋営業部長として赴任し、2023年から三菱オートリースの中部本部長を務めている。名古屋勤務も10年ほどになり、異動が少なかったこともあって、一つの地域にしっかり腰を据えて仕事をしてきたという実感がある。
 会社については、三菱オートリースは三菱グループのオートリース会社として、法人向けオートリースやフリートマネジメント、個人向けマイカーリースなど幅広いサービスを提供している。三菱自動車だけを扱っていると思われることもあるが、実際には全メーカー全車種を取り扱っている。
 全国に拠点を展開し、年間約4万台の車両を仕入れ、中古車販売や整備工場とのネットワークも広い。EV車の取り扱いには早い段階から力を入れており、累計で約5,000台を管理してきた。社内ではEV車の特徴や実際の運行に関する話題が日常的に飛び交っている。
 デジタル管理ツール「MAL portal」やスマホアプリ「MAL mobi」によって、車両予約、アルコールチェック、運行記録の一元管理など、効率的な運用を可能にしている。モビリティサービスでは、業務効率化、コスト削減、リスク管理、環境対応など、企業の課題に応える取り組みを進めている。

<澁谷 知樹 氏>

脱炭素・EVを取り巻く環境

 世界では温室効果ガスによる気候変動が深刻化し、パリ協定を契機にカーボンニュートラルの流れが強まっている。日本でも2030年に温室効果ガス46%削減が求められ、特に自動車の排出削減が大きな鍵となる。運輸部門の排出量の大半は自動車によるものであり、電動化が進まなければ国全体の削減目標は達成が難しい。
 海外ではEVが急速に普及し、ノルウェーでは新車販売の8割以上がEVとなる一方、日本はまだ3%程度にとどまっている。とはいえ、国内メーカーも2030年を見据えて電動化に本格的に取り組み始め、航続距離や充電性能も確実に向上している。自動車業界全体ではCASEという大変革が進んでおり、電動化は不可逆的な流れになりつつある。

EV循環モデル

 三菱オートリースでは日立製作所と連携し、EVを長期的に活用する循環モデルの構築に向けた検討・準備を行っている。EVをまず企業の通勤車などで4年間使用し、その後は中古EVとして4年間活用する。その後に取り出したバッテリーは蓄電池としてさらに8年間使用し、車として8年、蓄電池として8年、合計16年の循環利用を実現する。
 EVは海外への中古輸出が難しいという課題があり、国内で循環させる仕組みが必要となる。このモデルは、蓄電池を店舗や建物のエネルギーマネジメントに活用し、再エネの利用拡大や災害時の電源確保にも貢献する取組であり、ゼロエミッションビル化にも繋がる内容である現在、コンビニや銀行支店で実証が進みつつある。

ひたち共創プロジェクトの取り組み

 日立市では、人口減少が進む中で地域の持続可能性を高めるため、日立製作所と連携した「ひたち共創プロジェクト」が進められている。三菱オートリースは、この取り組みにEV活用とエネルギーマネジメントの面から参画すべく諸連携を進めている。
 プロジェクトは、グリーン産業都市の実現、公共交通のスマート化、デジタル医療・介護の高度化を柱として進められる。通勤車両のEV化や中小企業の排出削減支援、再エネ利用の拡大など、地域全体で脱炭素を進める取り組みが始まっている。公共交通では、オンデマンド交通を含む次世代型の移動サービスの構築が目指されており、地域の課題解決に向けた実証の検討が進行している。

カーボンニュートラルへの取り組み

 企業にはTCFDやSBTといった国際的な開示基準にも対応した脱炭素経営が求められている。EV導入の際には車種選びや充電インフラの問題など様々なハードルがあるが、三菱オートリースではロードマップ作成から導入、運用、エネルギーマネジメントまでを一貫して支援している。
 世田谷区では、公用車約200台の管理をDXで集約しつつEV化を進めた結果、2.5億円の経費削減を実現した。車両管理の効率化と環境負荷低減を同時に達成した代表的な取り組みであり、自治体の脱炭素と財政負担の軽減を両立するモデルとなっている。

DXを実現するモビリティサービス

 脱炭素を進めるうえでは、車両をEVに置き換えるだけでなく、管理そのものをDX化することも欠かせない。企業は車検・点検の管理、事故対応、運転記録の保存など多くの業務を抱えており、労働人口の減少を背景にその負担は一段と大きくなっている。
 三菱オートリースは、車両管理を一元化できるデジタル基盤「MALポータル」を提供しており、利用データを可視化することで保有台数の最適化やコスト削減、リスク管理の高度化を実現する。モビリティを取り巻く環境が大きく変わる中で、企業が効率的かつ持続可能な形で車両を運用するための基盤としてDXは不可欠な存在となっている。

テーマ(2): 『 共創と協創による価値創造 』

<藤谷 旬生 氏>

スズキの原点と受け継がれる姿勢

 スズキの原点は、創業者の鈴木道雄が、機織りをしていた母の負担を軽くしたいという思いから織機を作ったことにある。事業とは身近な困りごとを解決するものであるという姿勢は、その後、自転車、バイク、そして自動車へと展開する過程でも一貫して受け継がれてきた。
 この歴史から生まれた「小・少・軽・短・美」という考え方 は、必要以上に大きくせず、資源を無駄にせず、本質的な価値を追求するというスズキのものづくりの根幹である。自動車産業が大きく変わる現在においても、お客様にとって「ちょうどいい」価値を届け続ける姿勢は変わらない。

中期計画と新規事業の方向性

 中期経営計画「By Your Side」では、生活に密着したインフラモビリティ企業への進化を掲げている。2030年に向けて、既存の四輪・二輪・マリンに加え、新規事業でも売上500億円を目標としている。
 スズキの新規事業は、ゼロから価値を生むのではなく、既存技術を別の領域へつなげていく発想が中心である。電動車いすで蓄積した足回りの技術は、ロボットモビリティの基盤として活用されている。また、米国Glydways社との専用レーン型モビリティ開発や、SkyDriveの空飛ぶクルマ製造協力、Applied EVとの統合制御車両開発を通じ、公共交通や業務用モビリティの新たな形も模索している。さらにインドでは、牛糞からバイオガスを生成し燃料として循環させる取り組みも進んでいる。

協創とエコシステム構築による未来への挑戦

 新規事業の課題は、技術を持つ企業が個々に存在しても、それを束ね社会に実装する仕組みがなければ市場が生まれないという点にある。スズキは、ロボットの“足”となる技術やハードウェアの強みを基盤として、スタートアップやソフトウェア企業と協力し、価値を社会に届けるエコシステムの構築を目指している。
 その根底にあるのが、「協創」と「競争」の両立である。異なる強みを持つ者同士が新しい価値を生む協創と、役割分担を踏まえて着実に成果へつなげる競争の双方が必要だと考えている。また、シリコンバレーやインドでのベンチャー投資を通じ、新技術の獲得と地域発展への貢献を両立させようとしている。
 新しい事業とは、既存の強みと新しい技術を組み合わせ、社会の困りごとに応える価値を紡いでいく営みである。スズキは今後も、生活に密着したインフラモビリティの未来を形づくる挑戦を続けていく。

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【7年11月度 産業懇談会(火曜G)模様】

テーマ: 『 今後の日本株式市場の変化について 』

  • 日  時:令和7年11月11日(火) 12時00分~14時00分
  • 場  所:若宮の杜 迎賓館 1階 橘の間
  • 参加者:30名
スピーカー:

東海東京証券株式会社 取締役社長 北川 尚子氏のご紹介

仙石 誠(せんごく まこと)
株式会社東海東京インテリジェンス・ラボ
シニアエクイティマーケットアナリスト
写真:仙石 誠氏

日本株市場の大きな転換点

 日本株式市場はここ数年で明らかに姿を変えた。日経平均株価は三年連続で上昇し、海外投資家が売り越す局面でも株価が堅調に推移するようになってきている。かつての日本市場は、海外勢の売りに大きく振り回される構造だったが、今はその影響が大きく低下し、「下がりにくく、上がりやすい」市場へ移行しつつある。
 この変化の最大の要因は、東証の改革に伴って企業が積極的に自社株買いを実施するようになった点にある。市場には毎月1兆円規模の自社株買いが流入し、かつてとは比べものにならないほど強い需給が形成されている。単なる循環的な上昇ではなく、構造変化に支えられた上昇だという点をまず理解してほしい。

“失われた30年”をつくった構造と、その転換

 長らく日本株が停滞した理由は、海外ではなく実は国内投資家にあったと考えている。バブル期には国内の銀行や保険会社が大量に日本株を保有していたが、バブル崩壊後は長期間にわたって売り手に回り続けた。企業同士の持ち合い株の解消も加わり、国内からの売り圧力が市場を押し下げ続けた。これが“失われた30年”の主因だと見ている。
 ところがここ数年で状況は一変した。かつて売り続けてきた企業が今度は自社株買いによって買い手へと転じ、金融機関の売却姿勢も弱まりつつある。さらにNISA制度の普及によって若年層を中心とする個人投資家が市場へ参入し、新たな買い手として存在感を高めている。今後の日本株市場を支える主役は、海外投資家ではなく日本の個人投資家になる可能性が高いと考えている。

需給構造の大転換

 現在の日本株市場を語るうえで、需給の変化は欠かせない。企業の自社株買いは年間で15兆〜20兆円規模に達し、過去最大の海外勢の売り越し額である13兆8千億円を上回る。つまり、海外が売り越しても、それを吸収できるほどの国内需要が生まれているということだ。
 市場に出回る株数が減れば、当然ながら株価は上昇しやすくなる。海外勢の売りが株価に与える影響は過去の半分程度にまで低下しており、これはかつての日本市場では考えられなかった現象だ。日銀によるETF買いが縮小した後も、企業の自社株買いがその役割を完全に引き継ぎ、市場の下値を支えている。私は、この新しい需給構造が今後の日本株の強さを支える最も大きな基盤になると考えている。

世界経済・金利・為替環境と日本株の今後

 世界経済はIMFの見通しでも2026年まで3%前後の成長が期待され、特に米国では中間選挙を控え政権が景気を悪化させる政策を取りにくい。企業業績も堅調で、世界的にリスク資産には追い風となる環境が続くとみている。
 日米金利差は今後縮小する見込みだが、だからといって円高が大きく進むとは限らない。NISAによる海外投資が継続することで構造的な円売りが続くうえ、為替市場では金利差だけでは説明できない資金の流れが生まれており、急激な円高にはなりにくい。私は為替が145〜155円の範囲で推移する可能性が高いとみており、これは日本株にとって大きなマイナスにはならない。
 こうした外部環境と需給構造の安定性を踏まえ、私は来年度末の日経平均を5万6千円程度と見込んでいる。上昇ペースは緩やかだが、構造的な支えが強い以上、相場は持続性のある上昇を続ける可能性が高い。
 私は日本株市場の未来を決めるのは制度ではなく、日本人自身の姿勢だと伝えたい。企業の改革姿勢が強まり、個人投資家が市場に戻りつつある今こそ、日本株市場が新しい成長の段階に入る大きな機会だと考えている。日本人が日本に対して誇りと自信を取り戻すことが、株式市場の明るい未来をさらに後押しする。日本株にはまだ伸びしろがあるので、これからの展開を前向きに捉えていきたい。

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【7年11月度 産業懇談会(水曜第2G)模様】

テーマ: 『 世界を圧巻する技術』を埋もれさせずに社会実装する~ものづくり×あなたの業界とコラボレーションでワクワクする社会を創る~ 』

  • 日  時:令和7年11月12日(水) 12時00分~14時00分
  • 場  所:若宮の杜 迎賓館 1階 橘の間
  • 参加者:18名
スピーカー:
大矢 顕(おおや あきら)
大矢伝動精機株式会社
代表取締役
写真:大矢 顕氏

自己紹介・会社紹介

 私は現在44歳で、大矢伝動精機株式会社の三代目として経営に携わっている。趣味はハイボールづくりで、家では家族と英語で会話をするようにしている。自身は英語が得意ではないが、子どもたちには世界とつながる力を身につけてほしい。
 大矢伝動精機は名古屋市中区に本社を構え、FA機器、鋼材、金属加工品などを扱う製造業支援商社である。創業70年、社員は約30名と小規模ではあるが、営業、加工、FA、鋼材の各チームが連携し、製造業の課題を総合的に支援する体制をつくってきた。商社とは本来、単に物を仕入れて売る存在ではなく、製造業が元気になるためのインフラを整える役割を担うべきだと私は考えている。この視点こそが、私自身の事業活動の根幹になっている。

100億宣言

 当社の現在の年商は約21億円だが、2030年までに100億円企業へ成長するという「100億宣言」を掲げている。これは単なる売上目標ではなく、日本の製造業が抱える構造的課題への解決策を提示するための挑戦である。
 いま製造業は、下請構造に依存したビジネスモデルの限界、若手不足、技術承継の停滞、同質化した町工場の競争力低下、大手メーカーで埋もれる新技術の社会実装の遅れといった、多くの課題に直面している。商社として、私たちはこれらの問題を解決する“橋渡し役”を果たさなければならない。
 その象徴的な取り組みが、完全自動化加工装置「TTMC」の導入と販売である。3Dデータを投入すれば、素材の調達から加工、測定までを自動で行い、パート社員でも扱える。日曜でも夜間でも加工を続けられるため、労働力不足に悩む現場に大きな変革をもたらす装置である。
 私はこの装置の社会実装に向け、総理官邸での議論にも参加し、国のデジタル政策とも連携して推進している。100億宣言は、こうした技術と社会をつなぐ挑戦の延長線上にある。

理念と志の追求

 私が理念に向き合うようになった背景には、いくつかの大きなターニングポイントがある。まずリーマンショック後、売上の25%を占めていた主要取引先が倒産し、2億6千万円もの損失を抱えた。父の言う通りに経営していればよいと考えていた自分の甘さを痛感し、「このままでは会社も自分も終わる」という危機感が生まれた。
 次に、M&Aで事業拡大を進めていた際、詐欺案件に巻き込まれ最悪の事態で会社も家族も失う可能性があった時期があった。そんな中、妻が「あなたのやったことならついていく」と言ってくれた。その言葉で私は救われ、会社ともしっかり向き合い経営者としての責任と覚悟を深めた。
 さらに、父が突然余命宣告を受けたことも大きな転機だった。生前父がよく言っていた「身の丈を知れ」「お前は架け橋だ」という言葉の意味が、そのとき初めて腹に落ちた。
 こうした経験を経て、私は「ものづくりを通じてワクワクする社会を創る」という志を定めた。商社としての役割を超え、産学官連携によって“技術と社会をつなぐ”存在でありたいという思いを持っている。

未来に向けて世の中を知る

 経営者には、未来を予測し、現在の行動へ落とし込む力が必要である。私はSINIC理論やクリティカル・ビジネス・パラダイムなどを学びながら、未来から逆算する思考を意識している。
 特に日本の人口減少は避けて通れない現実である。2070年には人口が8,000万人にまで減り、4割が高齢者となる。労働人口も大幅に減少し、製造業の人手不足はますます深刻化する。また、「自分が社会を変えられる」と考える若者が18.3%しかいないというデータもある。自分事として社会を捉える力が弱まりつつあるのだ。
 しかし、私はこうした状況を悲観ではなく、むしろ大きなチャンスと見ている。社会課題の大きさは、そのまま新しいビジネスの可能性でもある。自動化技術、AI、データ活用といった分野は、これからの日本の製造業にとって不可欠な基盤となる。TTMCのような技術は、その未来の入口に過ぎない。

地域未来創造企業

 私は「地域未来創造企業」として、地域と産業に新しい価値を生み出す取り組みを進めている。
 FA技術者を育成し、設計からメンテナンスまで担えるチームをつくるために、仲間とともに「Otokogi合同会社」を設立した。それぞれの専門家が集まり、課題に応じて最適なチームを組成することで、企業の枠を超えた協業が生まれている。
 また、植物工場プロジェクトでは東松島ファームと連携し、農業の新しい生産モデルを地域に根づかせる取り組みを進めている。鹿児島、ハワイ、モンゴルなどにも展開が広がりつつあり、農業分野でも製造業の技術が活かされている。
 さらに、ものづくりパートナーズでは、ショールームや共用設備を開放し、若手技術者が“見て・触れて・学べる”場を提供している。社内では役職をフラットにし、プロジェクトごとにリーダーを立てるティール組織への移行に挑戦している。社会の変化に合わせ、組織も柔軟な形へ進化させていく必要があると考えるからだ。

コラボレーションしませんか?

 私は今日、「未来は一人ではつくれない」ということを伝えたいと思っている。未来を考える時間をつくり、未来について語り合う仲間をつくり、社会を変えたいという思いを共有する場を広げていきたい。一般社団法人でも、合同会社でもよい。ともに未来を描き、形にしていくことが重要である。
 製造業と他業界の掛け合わせには、まだまだ無限の可能性がある。技術を社会へ届けること、地域から未来を創ること、そして志を共有する仲間と働くこと。これらすべてが、私の志であり、本日ご参加いただいた方々へのメッセージでもある。

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【7年11月度 産業懇談会(水曜第1G)模様】

テーマ: 『 自己紹介と環境変化への取り組みの視点から 』

  • 日  時:令和7年11月19日(水) 12時00分~14時00分
  • 場  所:名古屋観光ホテル 2階 曙西の間
  • 参加者:18名
スピーカー:
垣内 和也(かきうち かずや)
株式会社吉田SKT
取締役社長
写真:垣内 和也氏

会社の紹介と事業の特徴

 私は現在51歳で、社長に就任して2年目である。出身は愛知県一宮市で、1997年に愛知教育大学を卒業し、そのまま当社に入社。入社後は製造部門で4年間加工に携わり、次の4年間は技術部門で製品開発を担当した。2005年から営業部門に移り、当社主力であるフッ素樹脂コーティングや機能性コーティングの営業に従事してきた。お客様の現場に伺い、生産の課題を直接見て耳を傾け、コーティング技術で解決策を提案することにやりがいを感じている。
 当社は1950年に創業し、1989年に株式会社吉田SKTとして設立された。従業員は約200名で、テフロンTMをはじめとするフッ素樹脂コーティングや各種表面処理の加工および販売を行っている。表面処理とは、素材の表面に特殊な機能を付与する技術であり、非粘着性、耐食性、低摩擦性、耐薬品性、耐熱性など、多様な性能を実現する。当社が扱うコーティングは、自動車、食品、医療、半導体、電子部品、航空宇宙、インフラなど、2000社を超える幅広い業界で採用されてきた。
 たとえばペットボトル成形の金型、湿布薬の製造ライン、食品搬送トレー、ガラス飛散防止のための透明コーティング、さらにはソレノイドなど電気部品の耐久性向上まで、用途は非常に多岐にわたる。日常生活で私たちが気づかない領域にも、当社のコーティング技術が深く浸透している。

現場主義と経営への思い

 私が経営で何より大切にしているのは「現場主義」である。コーティングがどのような環境で使われ、どんな不具合が起きているのかを具体的に理解しなければ、適切な解決策は提示できない。お客様から求められる理想像を伺い、実際の生産現場で状況を確認し、原因を分析したうえで、表面処理技術による解決へ導く。この積み重ねが当社の信頼と技術力を支えてきたと感じている。
 さらに、社員一人ひとりが夢と誇りを持って働ける企業文化をつくることも、自分の大きな使命だと捉えている。「夢なき者に成功なし」という言葉が象徴するように、夢があるから努力が生まれ、挑戦が生まれる。社員が自らの夢を持ち、その実現に向けて取り組める会社でありたいと願っている。

市場環境の変化とPFAS規制への対応

 近年、当社を取り巻く事業環境は大きな転換点を迎えている。特にPFAS規制の強化は、当社にとって避けて通れない重要な課題となっている。
 PFASは耐熱性や耐薬品性、撥水性など優れた性能を持つため、さまざまな製品に利用されてきた。しかし一方で、極めて分解されにくく環境中に残留しやすいことから、人体や生態系への影響が懸念され、国際的に規制が進んでいる。欧州では2026年末にかけて包括的な規制案が取りまとめられる見通しがあり、日本でも水質指標が定められるなど、規制の枠組みが強化されつつある。
 こうした状況を受け、当社ではPFASフリーの代替コーティングの開発に力を注いでいる。2024年には潤滑用途向けのPFASフリー製品を発表し、多くの問い合わせをいただいている。今後も環境負荷の低減と機能性の両立をめざし、研究開発を進めていく。

デジタル活用と営業活動の変革

 コロナ禍をきっかけに、営業の在り方も大きく変化した。対面での訪問が難しくなった時期には、オンラインでの商談、アンケートによる事前ヒアリング、デジタル資料の提供、社内情報共有の体制整備など、営業プロセスの見直しを進めた。また、コーティングに関する知識や事例を紹介する「コーティングマガジン」を立ち上げ、情報発信を強化してきた。
 さらに、あらかじめコーティング性能を試せる体感キットを作り、お客様の手元で評価していただける仕組みを整えた。これにより商談の質が向上し、初期段階から具体的な提案ができるようになった。この取り組みは大きな成果を生み、年間1000件を超える新規問い合わせが寄せられ、年間200件以上の新規取引につながっている。

会社の歩みと技術

 当社の技術が生活に身近な形で活かされている例として、岐阜県関市の刃物メーカーの製品に「パーフェクトバリア」というハサミがある。このハサミは粘着物がほとんど付着せず、湿布やテープを切っても刃がベタつかない特長を持つ。テレビ番組でも紹介され、予想を超える反響があった。
 一般的なフッ素コートのハサミでは刃先の一部にコーティングされない箇所が残るが、この製品は特殊コーティングにより刃全体を均一に処理しているため、粘着物が非常につきにくい。現在は岐阜県関市のふるさと納税返礼品としても扱われており、当社の技術が広く社会に役立っていると実感している。
 吉田SKTは創業以来、デュポン社との技術交流を通じて成長してきた。テフロンTMが1938年に偶然発見されたことは広く知られているが、その後マンハッタン計画での採用を経て、工業用途から家庭用品まで幅広く普及した。その歴史とともに当社も技術を磨き、東京、横浜、名古屋、大阪、広島、山口、香港に拠点を構え、多様な用途に応えられる体制を築いてきた。これからも現場に寄り添い、お客様の困りごとに真摯に向き合いながら、環境規制の変化にも的確に対応し、新たな価値を提供し続ける企業を目指していきたい。

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【産業懇談会「代表幹事講話」ならびに「新年合同懇親会」のご案内】

 平素は産業懇談会活動にご協力いただき、誠にありがとうございます。
 毎年恒例の産業懇談会4グループ新年合同懇親会を、下記の通り開催いたしますのでご案内申し上げます。
 本年は、加藤 筆頭代表幹事からご講話をいただきます。また、年の初めに、産業懇談会メンバーの皆様に親睦を深めていただきたく、あわせて新年合同懇親会を開催いたします。
今回は、産業懇談会PRの機会として、産業懇談会会員に加えて、今年度中部経済同友会にご入会いただいた新入会員の皆様にもご案内いたしております。是非とも多数ご出席くださいますようお願い申し上げます。

日時
令和8年1月21日(水) 17:30~20:00
17:30~18:30 加藤 筆頭代表幹事のご講話
18:45~20:00 新年合同懇親会(着席ビュッフェ)
場所
TIAD, AUTOGRAPH COLLECTION Tel:052-253-7078
講演会:4階 Queens Room
懇親会:2階 Park View South
講話演題
『企業におけるイノベーションとは』
懇親会費
16,000円内外(開催後、実費を請求させていただきます。)
※講演会のみご出席の場合は会費不要です。その場合、お申し込みの際に「事務局への連絡・お問い合わせ」欄に必ずご入力をお願いいたします。
本状ご案内先
代表幹事および産業懇談会会員の皆様
令和7年度中部経済同友会にご入会された新入会員の皆様
その他
お申し込みは12月26日(金)までに会員専用ページよりご登録をお願いいたします。お申し込み後1月7日(水)までにお取り消しのお申し出なくご欠席の場合は、会費を申し受けますので悪しからずご了承ください。
本件連絡先
中部経済同友会事務局 担当:羽根田・洲崎
Tel:052-221-8901 E-mail:cace-seminar@cace.jp

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【2月度産業懇談会のご案内】

 日頃は産業懇談会活動につき多大なるご支援をいただき誠にありがとうございます。
 2月度例会を下記の通り開催いたしますので、ご案内申し上げます。各グループ興味深いお話が伺えるものと存じますので、ぜひともご出席くださいますようお願い申し上げます。

グループ名 世話人 開催日時 テーマ・スピーカー 場所
火曜グループ

屬ゆみ子
富田 茂

2月10日(火)
12:00~14:00

【外部講師】
『産業の心臓部・中部から、失われた「挑戦」を取り戻す~「シニア人材」を活かす、未来への成長戦略~』
株式会社村田製作所 新商品事業化推進部
HR-Tech 事業推進課 シニアマネージャー・弁理士 板谷 昌治 氏

若宮の杜
迎賓館
1階 橘の間

水曜第1グループ

足立 誠
篠田康人

2月25日(水)
10:45~16:30

『視察会「株式会社JERA碧南火力発電所」』

株式会社JERA
碧南火力発電所

水曜第2グループ

香川裕子
高見祐次
名倉昌孝

2月18日(水)
12:00~14:00

『取り巻く環境の劇的変化の40年と今』(仮)
株式会社NTT西日本アセット・プランニング
取締役東海支店長 上﨑 真一 氏

名古屋観光
ホテル
3階 桂の間

木曜グループ

河村嘉男
横田成人
吉田憲三

2月12日(木)
12:00~14:00

『鳥取県出向中における地域創生、インバウンド誘客に向けた取り組み』
全日本空輸株式会社
名古屋支店長 木村 みゆき 氏

名古屋観光
ホテル
3階 桂の間

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【コラム】

コラム1 【さっかの散歩道】 No.90

長瀬電気工業株式会社
代表取締役 屬 ゆみ子

『 記憶の復習~むか~し昔のことじゃった 』

 年齢とともに記憶力はどんどん低下してゆくのに、なぜか子供の頃の思い出~10代、20代の事は昨日のことのように思い出すことがある。これは脳の機能の問題で、認知症の高齢者も、昔のことは折に触れ、思い出すのだそうだ。
 私にとって思い出す過去の記憶は何だろう?と考えるに、やはり「旅」と「食」「出会い」がTOP3であることは間違いない。というわけで今回はその中の「食」、舌の記憶をたどる旅をすることにした。

イラスト:滋賀県の地図

 そうはいっても、いつもの思い付き、車や電車でぷらっと行って日帰り可能なところ、んでもって静かで混雑しないところ、となると意外に見つからない。今時どこもかしこも(西の国の人は減ったといえども)インバウンド真っ盛り。その上季節は紅葉見納めの週末ということもあり、ダメもとで調べていると、あるじゃないの!絶好の場所「近江八幡」。
 近江八幡で「食」というと、皆さん鮒寿司を思い浮かべるかもしれませんが、違うのです。近江には鮒だけでなく、「近江牛」も「近江豚(くらおポーク、ミルク豚、最近ではエコフィード豚)」があるのです。実は私が無類のシャキュトリン(豚肉加工品)好きになったきっかけがここにあるといっても過言ではないのです。

 道楽者だった父もまた大層なグルマンで、あちこち出かけて行っては美味しいものをたんまり買って帰り、家族の前で「どや顔」することを楽しみにしている体だったのだが、忘れもしない、反抗期真っ只中の私の前に、父がでっかい塊をドカッと置いて、「食べるぞ」と一言。それは直径15cm、長さ30cm、4キロ越えの大きなボンレスハムの塊だった。そんな大きなハムを切る包丁が無かったので、母はぼやきながらまるでスイカでも切るような力の入れ方で入刀。その日の夕食に、やや厚切りのハムがメインデッシュとなって供された。(ハムがメインデッシュってどうゆうこと?)と愚痴りながら、口に運んで絶句「なにこれ!!!」それまでのハムのイメージが根底から覆った瞬間だった。(今まで食べてきたのは一体何だったのだろう?)、以降町場で購入するハムは、どんなに高級品と言われようがどんなに高かろうが私の中では「ハム」ではなくなった。
 それ以降、母は作り手さんに直接電話をかけ、出来立てをお願いしていたのだが、昨年母が病に倒れて以降「ハム」を食していなかったので、久々に購入することにした。始め通販サイトで申込んだのだが、リピートをかけようと直接作り手さんにお電話すると「通販サイトはいろいろ手数料がかかって割高だから直接お電話で注文下さいな」との優しいお言葉。だったらこの際直接買いに行こうと、車を飛ばすことにした。

写真:長命寺の社標

 名神高速八日市のインターから琵琶湖を目指す途中に工房はあるのだが、せっかくここまで来たのだから、近くの古刹に寄っていこうと、湖畔の高台に佇む長命寺に向かった。
 長命寺は西国33か所めぐりの31番所になっているのだがその歴史は古く、開祖は聖徳太子とされている。ネットで見る限り結構な高台で、階段を上るのが大変とあったので、とりあえず山門近くの駐車場まで、ダメもとで上ってみるも、途中車一台しか通れない崖っぷちの道で、否応なく対向車がやってくる。普通上り優先なのだが、なぜか滋賀の人は譲ってくれないので、斜度10度以上はある崖の道をバックすること数回、(こんなバアサンにバックさせんじゃないわよ!)と車内でぼやきながら、なんとか駐車場にたどり着く。

写真:石段
斜度25度の石段

が、とんでもない石段はなおも頂上へと続いている。上からは私よりはるか大先輩の皆さんが降りてきて「もうすこしよ~頑張って」と励ましてくれる。ん~ショートカットしてます、ごめんなさいとは言えず、山門から先の最後の石段を、息を切らして上りきる。
 ご本尊に手を合わせながら「そりゃこんな所まで下から石段上ってくれば、長命になれるというか、上れる段階で長生きができるということでしょう」と妙に納得し、本尊を背にしてお題目を唱える某国の宗教団体を横目に帰路につくことにした。
 下には天然温泉もあるようだが、とりあえず食べそびれていた昼ごはんを近江牛のしゃぶしゃぶうどんで済まし、いよいよメインのハム工房に向かう。
「こんにちは、名古屋のサッカです。」

写真:石段からの景色

 工房の扉を開けて挨拶すると「わざわざいらしたんですか?」と驚きの声。こんなやりとりに心動くのは、どや顔得意の親父の血かとも思うが、とりあえずは私にとっての「ハム」を購入するべく、あのでっかい塊のボンレスハムと、鱧をつなぎに使っているポークハム2本をお願いする。「お顔が見られてよかったです!」「いえいえこちらこそ、しばらくハム欠乏症でしたので、急いでリハビリです」と次回から郵送していただく伝票の住所も伝え、小さな工房なのでちゃんと現金でお支払いし、店を後にする。保冷バックを持ってゆくのを忘れたので、途中高速の多賀SAで購入するも、余りの重さで見事な破れ方、まあ、ブツが大きいので早々温度は下がるまいと、安全運転で帰名した。
 戻ると、さっそく妹から「1キロちょうだい」とメール。家には26cmの筋引き包丁があるので、サクッと切り分け真空包装にして渡す。余談だが、ハムカットを面倒がった母のために、父は何処からかハムスライサーを買ってきたのだが、さすがに15cmの直径に対応せず、一度も使うこのなくお蔵入りした。あのハムスライサーは何処にあるのだろう?今ならフリマアプリで売れるかしら?
 そんなことを思い出しながら、私も過去を思い出す高齢なのだと実感する。あ、ハムをお試しになりたい方はこっそりお伝えください。工房、お知らせします。

 さて、来るべき丙午。私は午年の方に大層ご縁があるらしく、今は亡き大御所から現在も一線で活躍されている方まで、ご恩は尽きない。そのご恩に報いるためにも「うまくいく」一年であることを願いつつ、皆様も良い一年をお迎えくださいますよう!

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コラム2 【師、曰く】 No.55

蒲郡観光交流おもてなしコンシェルジュ 妹尾 鷹幸(ペンネーム)
(株式会社構造計画研究所 名古屋支社長 妹尾(せのお) 義之)

ペンネームは、恩師、田坂広志先生の多重人格マネジメント、作家人格の名。心に鳴り響く言葉を今回も一筆。

『 宇宙 』

 師、曰く『138億年前、この宇宙はまだ存在しなかった。ただ、「真空」だけが存在した。その「真空」が、突如、ゆらぎ、急膨張と大爆発を起こした。それがインフレーション宇宙、ビッグバン宇宙と呼ばれるもの。光に満たされた宇宙は徐々に冷え、水素を生み出した。その水素が、何億年もかけて集まり恒星をつくった。恒星の一つ、太陽の回りに、奇跡の条件に恵まれた、一つの惑星が生み出された。我々が生きる、この地球です。46億年前に生まれたこの地球は、数億年の歳月をかけて原初の生命を生み出し、さらに40億年の歳月をかけて進化を遂げ、200万年前、人類を生み出した。』

 田坂先生は、度々、宇宙創成から人類誕生までの物語を語られる。人類が誕生した後も、歴史に残されていない悠久の時と、我々が知る歴史の時代を経て、今の私たちが在るということを語られる。様々な思いがあるのだろうが、単なるロマンティシズムではない。私たち一人一人が、如何に小さな、あまりにも小さな存在に過ぎないのかということを認識させる上で、最も客観的で解り易いからだろうと思う。人より勝りたい、名を残したい、多くを持ちたい、そういったエゴで生きたとしても、所詮、宇宙の歴史からすれば、けし粒にも満たないほんの一瞬の命。その命を、どう使うのかという、「使命」を考えさせられる。さらに、元々は一つの宇宙、一つの星の欠片から生まれた「スターチャイルド」だと語られる。人類が対立や戦争で争っていたとしても、元々は同じものなのだということに気づかせてくれる。そして、一つの宇宙から生まれた私たちは、量子力学的にどこか一つに繋がっているのではなかろうか、そんな妄想も抱かせる。一人の言葉や行動はささやかであっても、他の人達に影響を与え、その連鎖が時にバタフライエフェクトによって、大きな潮流を生み出す奇跡。ふと気にかかった人と偶然出会えたりするシンクロニシティや、その人との邂逅が生きるべき道を導いてくれたと思える奇跡のご縁。それらの奇跡も、宇宙創成からの物語からすれば、なぜだかさほど不思議でもないような気がしてくる。私たちはけし粒に満たなくとも、人と繋がり、人に影響を与え、何かを変えてゆける素晴らしい力も持っている。宇宙の物語は、そんな気持ちにさせてくれるのです。

 私の尊敬する方の書籍に書かれていたが、自分を生んでくれた10代前まで遡ると、ご先祖様は1024名もいらっしゃる。イメージし易い直近の話でさえ、そのお一人でも居なければ、自分は生を受けてはいない。そのお一人お一人に様々な人生があり、今の自分が在ることに、改めて「感謝」しよう。そして、2026年を迎えるにあたって、今年一年、関わってくださった方々に「感謝」するとともに、今一度、宇宙の物語を反芻しながら、けし粒に満たない存在、ほんの一瞬の命、しかし素晴らしい力を備えている存在、その命をどう使ってゆくか、心に問いかけてみようと思う。修行は続くよ、どこまでも。最後までお読み頂き、ありがとうございました。

写真:水平線の太陽
(湘南から臨む、「光」)

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コラム3 【げんき通信】 No.28

学校法人佑愛学園
愛知医療学院大学
リハビリテーション学部 理学療法学専攻
講師 臼井 晴信

『 なんだか不安なときはお腹に優しいものを 』

 今年、母を連れてヨーロッパに行きました。そこでお腹を壊しました。今まで、一人でいろいろな国に行きましたが、どこに行っても何を食べても外国ではお腹を壊すことはありませんでした。今回は初めての場所に親を連れて行き、意外に「不安」だったのだと思います。
 なぜ心理的、身体的な負担は腸の症状を引き起こすのでしょうか。腸と脳は密接に連携しています。脳と腸の連絡役を担うひとつが自律神経です。自律神経は活動的なときに働く交感神経と、休息時に働く副交感神経があります。腸の活動は副交感神経により促進されますが、ストレスなどで交感神経活動が高いと、腸の症状が出やすくなります。
 腸の中には様々な細菌が住んでいます。それを腸内細菌と言います。腸内細菌の「多様性」が重要で、腸内細菌が多様でない状態だとストレスに対して過剰に反応し、多様な腸内細菌と共生していると、心身の負荷への耐久力が高いことがわかっています。腸内細菌からのメッセージを脳に伝える役割を自律神経が担っています。
 「腸活」という言葉が流行っていますが、多様な腸内細菌を育てること、自律神経活動をコントロールすることが、心身の健康には必要です。発酵食品や食物繊維の摂取は、多様な腸内細菌を育てます。腸内細菌が多様な状態だと、幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンの材料がスムーズに脳に運ばれることもわかっています。また、交感神経活動が過剰な状態だと腸内細菌によるセロトニンの材料の作成に影響を与えたり、腸内で過剰に分泌して下痢を引き起こしたりします。過剰な交感神経活動を抑えるためには睡眠と運動も重要です。
 「なんだか不安だ」「なんだかイライラする」。そんな時は、まずはお腹の調子を整えてみるのが良いかもしれません。

イラスト:腸

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