【7年4月度 産業懇談会(木曜G)模様】
テーマ: 『 30年続くアジアNo1アリーナの幕開け~IGアリーナについて~ 』
- 日 時:令和7年4月3日(木) 12時00分~14時00分
- 場 所:名古屋観光ホテル 2階 曙西の間
- 参加者:35名
勝亦 健(かつまた けん)氏
株式会社愛知国際アリーナ
取締役

自己紹介・会社紹介
NTTドコモから出向し、現在は株式会社愛知国際アリーナの取締役として、IGアリーナの立ち上げと運営に携わっている。これまでは、渋谷区で推進されたIOWN構想(次世代通信インフラ)を活用した最先端のまちづくりを担当し、また動画配信サービス「Lemino」の立ち上げにも関わってきた。アリーナビジネスとしては、全国展開を視野に入れた戦略策定にも携わっていた経緯がある。
今回のIGアリーナ事業は、NTTドコモを中心とした7社のコンソーシアムによって運営される。運営会社である「株式会社愛知国際アリーナ」はSPC(特別目的会社)として、2025年4月から30年間にわたってアリーナの管理・運営を担っていく。
組織は40名体制で、広告業界、建築、エンタメ業界などから中途採用された多彩な人材で構成されており、それぞれの専門性を活かしながら、ゼロから新しいアリーナ文化を創っていくチームとなっている。私自身、2025年1月にこのチームに参画し、現場の第一線で事業の立ち上げに関わっている。
IGアリーナを通じた名古屋への想い
名古屋という都市には、ものづくりの強さだけでなく、伝統工芸や芸能文化など「ことづくり」の豊かさもあると強く感じている。17世紀、尾張徳川家によって築かれた名古屋城を中心に、商業都市として400年以上の歴史を持つこの地で、新しい都市の価値と可能性を創造していきたいと考えている。
国としても現在、アリーナ整備とスポーツ・エンタメの振興を地域活性化や観光、雇用創出の鍵と捉え、政策的にも強く後押ししている。その流れを受ける形で、私たちはこのアリーナを単なる施設としてではなく、人と人、地域と未来、技術と感動をつなげる「拠点」として位置づけている。
特に、スポーツのBリーグ人気やライブ・コンサート需要の回復、エンタメ消費の高まりを背景に、地域内外からの人の流れをどう創り出すかが重要だと考えている。すでに、大相撲名古屋場所の開催を皮切りに、海外からも多くの反応が寄せられている。IGアリーナが、世界の人々にとって「行ってみたい」「また行きたい」と思ってもらえる場になるよう全力を尽くしたい。
IGアリーナの特徴
IGアリーナは、延床面積約63,000m2、最大17,000人を収容する国内最大級の多目的アリーナとなる。名古屋城の北、名城公園の一角に立地し、スポーツ、音楽、文化、ビジネスイベントなど、年間150件以上の多様なコンテンツの発信をしていく。
最大の特徴は、その「ハイブリッド性」にある。スピーディにフロアを転換できる機構を備えており、大相撲、バスケットボール、フィギュアスケート、ライブ・コンサート、ファッションショー、展示会など、1日単位で用途を切り替えることができる。海外アーティストの大型ステージ機材にも対応できるよう、天井高は30mを確保。日本のアリーナではこれが難しく、過去には名古屋がツアーから外れる要因ともなっていたが、その壁を突破したことで、グローバル規模の興行誘致が可能になった。
建築デザインは隈研吾氏によるもので、木漏れ日のアーチに包まれる「樹形建築」を採用し、自然との共生を意識した空間となっている。外観だけでなく内装にも木材を多用し、名古屋城の風格に調和する“日本らしさ”を演出している。
さらに、3階には全40室のスイートルーム、2階には800人規模のプレミアムラウンジを設け、地元財界・企業・来賓向けに世界水準のホスピタリティを提供する。すでに半数以上のスイートが販売済で、「年間100興行すべてを部屋代だけで観覧できる」というビジネスモデルは日本初の試みとなる。
加えて、ドコモの最先端通信技術を活かし、Wi-Fi7、IOWNといった高速大容量ネットワークを導入。観客全員が同時にスマートフォンを使える環境を整えた。キャッシュレス注文、行列回避アプリ、AIによる混雑予測など、アリーナ体験の質を根本から変えていきたい。
地域貢献と次世代を育てる「ドリームプロジェクト」
IGアリーナでは、「地域と未来をつなぐ共創型プロジェクト」として「IG Arena Dream Project」を立ち上げた。これは、アリーナの興行収入の一部を原資に、地域の子どもたちや若者たちの夢を育み、応援していく仕組みである。
第1弾の企画として、「アリーナで叶えたい夢」をテーマにした絵画コンテストを開催している。受賞者には、世界的アスリートやアーティストとの出会いや体験を用意しており、アリーナを舞台に「夢を現実に変える瞬間」を提供していきたいと考えている。
この取り組みの参考になったのは、米カリフォルニア州のナパバレーにある地域のモデル。ワイン購入や観光収益の一部を教育・文化活動の財源として還元する仕組みを取り入れており、ビジネスと地域貢献が両立した好例だと感じている。
IGアリーナも、ただのエンタメ施設で終わらせるつもりはなく、行政や企業、教育機関、地域住民と連携し、地域課題の解決や人材育成に資する“共創の場”をつくっていきたいと思っている。
【7年4月度 産業懇談会(火曜G)模様】
テーマ: 『 幕末維新の名古屋城郭と二の丸の復元 』
- 日 時:令和7年4月8日(火) 12時00分~14時00分
- 場 所:名古屋観光ホテル 3階 桂の間
- 参加者:29名
川地 正数(かわち まさかず)氏
川地建築設計室
主宰

自己紹介
これまで名古屋城・天守木造復元計画に携わってきたが、最近は天守を含む城郭全体を名古屋のシンボルゾーンとして、未来のまちづくりにどう活かすか、をテーマとする提案にも力を入れている。
名古屋城が築かれてから約250年後の幕末、その姿がどうであったのかをCGなども活用して再現したり、二之丸御殿・御庭の復元を国の迎賓館として提案したりしてきた。また三之丸の再生に向けた都市提案も行っている。
名古屋城を語る上で、私がいつも強調しているのは、その“文化的価値”と“未来への活用可能性”である。単なる史跡の保存ではなく、地域の誇りとして、市民生活や国際交流の場として、活かすことが重要だと考えている。
幕末時の名古屋城郭
名古屋城は、家康が清洲から移転して築城した最大かつ最強の要塞だった。関ヶ原の戦いから10年後、豊臣の影響が色濃く残る中で、家康は大阪城に対抗するようにこの地に城を築き、天下の平定に向けた意思を示した。名古屋城は“元和偃武”の象徴ともいえる。
この城郭は約140ヘクタールにも及ぶ規模を誇り、砲撃を想定した広大な三之丸、本丸の東西に設けられた馬出、面的防衛を担った多門櫓、そして御深井御庭などが要所にあった。御深井御庭は特に戦略的にも文化的にも重要で、本郭の一部とされていた。さらに、城下町を囲む「総構え」も計画されていたが、大阪の陣で戦局が決したため未完成に終わっている。
当時の三之丸には重臣たちの屋敷が建ち並び、名城公園の2倍規模を持つ御深井御庭(おふけおにわ)には三つの茶屋(松山・瀬戸・竹長押)が点在していた。これらの茶屋は藩主の遊興や迎賓に使われただけでなく、庭園の中に宿場町や門前町を模した空間を設けるという、尾張藩独自の“虚構のまちづくり”がなされていた。
特に竹長押茶屋は、現在も弥富市に現存し文化財指定されており、かつての名古屋城の文化的多層性を示す重要な遺構である。こうした空間は単なる軍事施設ではなく、文化と統治、そして“見せるまちづくり”として計画されたことが伺える。
二之丸(御殿・御庭)の復元
二之丸御殿と御庭は、名古屋城の実質的な中心だったと私は考えている。本丸はあくまで儀礼の場であり、日常の政治や生活は二之丸で行われていた。御殿は延べ床面積で本丸の4倍、御庭も2000坪を超える大名庭園で、茶室が六つも設けられていた。
この空間は、藩主の住居であり藩政の中枢であり、さらに能舞台や数寄屋などを備えた「おもてなし施設」でもあった。まさに赤坂迎賓館や京都迎賓館に並ぶ、第三の国の迎賓館に相応しい場所だと確信している。
復元には、詳細な記録「金城温古録」や昭和初期の実測図が残されており、文化庁の基準に照らしても“復元的整備”は十分に可能と考えられる。また、PFI手法を活用することで、民間の資金・技術・ノウハウによって持続可能な復元・運営も実現可能と考えている。
二之丸御殿を中心とした施設は、MICE機能(会議・展示・レセプション)や宿泊、庭園活用等の使い方も想定できる。こうした施設ができれば、文化と経済を結びつけた“動く遺産”として、新たな都市価値を創出するだろう。
三之丸の再生
三之丸は、戦後に官庁街として整備されたが、現在では全体の約50%を道路空間が占めており、再生の余地が大きい。戦後の車社会に対応するために整備されたこの空間を、これからは循環型社会・木造都市・サーキュラーシティにふさわしい緑のゾーンへと転換する必要があると考えている。
「三之丸の森」として再生し、官庁施設は機能集約して圧縮することで、市民が自由に使える緑の空間へと生まれ変わらせたい。明治神宮の杜が100年かけて自然の森に近づいたように、三之丸も100年後を見据えた都市の“象徴ゾーン”とすべきと考えている。また、国の「自治体戦略2040構想」においては、自治体が単なるサービス提供者からプラットフォーム提供者へと役割を移行することが求められている。三之丸の再生は、まさにこうした自治体モデル転換の先駆けとして、地域住民・民間企業・行政が協働してつくるべきプロジェクトになることを期待している。
建築物は木造化・脱炭素化を意識し、広場や文化拠点、アート施設などを市民が利用できる“開かれた空間”として整備すべきである。歴史と未来が交差するこの場所を、市民の誇りとなる「都市の森」として育てていくことが、私の願いである。
【7年4月度 産業懇談会(水曜第2G)模様】
テーマ: 『 桜の多様な楽しみ~ソメイヨシノだけが桜じゃない!これから咲く桜たちを楽しもう! 』
- 日 時:令和7年4月9日(水) 12時00分~14時00分
- 場 所:若宮の杜 迎賓館 1階 橘の間
- 参加者:19名
平出 眞(ひらで まこと)氏
NPO法人名城さくらの会 理事
(山眞産業株式会社花びら舎 代表取締役)

本当に知ってますか?桜のこと
山眞産業株式会社花びら舎とは別に、NPO法人名城さくらの会の理事を務めており、名古屋城周辺や名城公園に多種多様な桜を植樹し、地域の景観づくりや文化の継承に取り組んでいる。本日は、桜の多様性や文化的背景、そして名古屋の桜を通じた街づくりの可能性についてお話ししたい。
桜といえば「ソメイヨシノ」を思い浮かべる人が多い。実際、日本中の街路や公園に植えられている桜の8割以上がこの品種だと言われている。しかし、ソメイヨシノが桜の“すべて”ではない。私たちがあまりに知らないだけで、桜には驚くほど多様な品種が存在している。
まず、桜には日本に10種類の野生種がある。これらの野生種が自然交配してできた交雑種が約100種類、人間の手によって交配・改良された栽培種(サトザクラ)が約500種類あるとされている。さらに、業者によって勝手に名前がつけられたものや、同じ名前でも異なる品種、違う名前でも同じ品種という例もある。専門家でさえ全容を把握できないほどである。「八重桜」や「しだれ桜」という名称も実は品種名ではなく、花の咲き方や枝ぶりを示す分類にすぎない。一重・八重、枝垂れ・直立といった形状によっても分類されている。
また、桜に実がなるのか、香りがあるのかといった素朴な疑問についても、多くの人が正確に答えられないのが実情である。たとえば、食用のサクランボはセイヨウミザクラという系統の桜で、日本で親しまれている観賞用の桜とは系統が異なる。また、桜は自家不和合性のため、自分の花粉では受粉しない。したがって、ソメイヨシノは基本的に実をつけることはない。さらに、ソメイヨシノには香りがほとんどないため、「桜に香りはない」と思われがちだが、オオシマザクラ系のように芳香を持つ品種も多数存在している。
日本各地には、樹齢1000年を超える「長寿の桜」も多数存在している。山梨「神代桜」、同じく1500年の岐阜「根尾の淡墨桜」、同じく1200年の福島「三春の滝桜」は「日本三大桜」とされ、いずれも桜の強い生命力と、人々の手によって守られてきた歴史を感じさせる。
秋や冬にも咲く桜がある。たとえば「十月桜」「四季桜」「冬桜」などがそうで、“狂い咲き”ではなく、もともと秋にも開花する性質を持った品種である。愛知県豊田市小原地区の「四季桜」は、紅葉と同時に満開を迎える全国的にも珍しい名所であり、例年11月20日前後が見頃となる。
桜は日本文化の代表格
桜は、日本の風土や文化と深く関わる存在である。「さ=神」「くら=神の宿る処」という語源を持ち、古くから神聖なものとして扱われてきた。
弥生時代には、桜の開花が稲作の開始の目安とされ、豊作を祈る春祭りに結びついていった。平安時代には貴族が和歌に詠み、花見の文化が形成された。右近の桜や左近の橘など、宮中に植えられた植物にも桜が登場し、その重要性がうかがえる。
鎌倉時代には伊豆大島原産のオオシマザクラが園芸品種の母体として登場し、室町時代には能や狂言、絵画などの芸術に桜が描かれた。豊臣秀吉による「吉野の花見」「醍醐の花見」、江戸時代の庶民の花見、歌舞伎や文楽、落語などにおける桜の登場などを経て、桜は日本文化の象徴として広がっていった。
1717年、徳川吉宗が桜を植えて花見の名所とした江戸の向島では、「桜餅」が誕生し、約100年後には桜花の塩漬けも登場した。1875年(明治8年)には「桜あんぱん」も生まれ、現代では桜スイーツや桜ソングといった形で、桜は文化の中で生き続けている。
これから咲く桜と名城さくらの会の取り組み
名城さくらの会では、2000年から名古屋城周辺に多種多様な桜を植栽してきた。毎年50本ずつ、現在は34品種・約250本が植えられており、2月下旬から4月下旬までの長期間にわたって桜を楽しめる環境が整っている。
品種には、早咲きの「河津桜」「大寒桜」「おかめ」など、遅咲きの「普賢象」「関山」「一葉」などがあり、花の色は白、淡紅、濃紅、緑、黄色と多彩である。花の形も一重咲きや八重咲きがあり、視覚的にも楽しめる内容となっている。
多様な品種を植えることで病害虫にも強くなり、実際に毛虫の大量発生などの被害は発生していない。品種の多様化は、美観や観光面だけでなく、維持管理の面でも大きな効果を発揮している。
2024年には、名城公園周辺でスタンプラリーイベントも実施された。家族連れや地元の子ども会、幼稚園などが参加し、世代を超えて桜の多様性に触れることができた。知識として学ぶ楽しみ、体験としての喜びが両立しており、地域の自然と文化への関心を高める機会となっている。
今後の名古屋城エリア
かつて名古屋城北側に存在した「御深井御庭(おふけおにわ)」の復元構想も進めている。この庭園は江戸時代に築かれた池泉回遊式の大名庭園であり、現在の名城公園の2倍以上の面積を有していた。これを現代に蘇らせ、早咲きから遅咲きまでの桜を中心に、梅、藤、蓮、紅葉、椿など四季折々の花々を楽しめる空間とし、茶屋や展示施設も併設した「桜と歴史文化の回遊型拠点」として再生したいと考えている。
桜は単なる花ではなく、その背後には、文化、歴史、自然、暮らしがあり、多様な物語がある。見て、香りを感じ、背景を知ることで、桜の楽しみはより深くなる。
ソメイヨシノ一辺倒だったこれまでの風景を見直し、多様な桜に目を向けることで、私たちの暮らしやまちはもっと豊かになる。次の春、皆さんもぜひ、違う桜に出会っていただきたい。
【7年4月度 産業懇談会(水曜第1G)模様】
テーマ: 『 人事トピックスの動向~定年延長・採用活動の今~ 』
- 日 時:令和7年4月16日(水) 12時00分~14時00分
- 場 所:名古屋観光ホテル 3階 桂の間
- 参加者:21名
スピーカー:

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
執行役員

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
コンサルティング事業本部組織人事ビジネスユニット
HR第2部 ディレクター

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
コンサルティング事業本部組織人事ビジネスユニット
HR第4部 マネージャー
会社紹介・自己紹介
<三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 執行役員 船引 英子 氏>
私が大学を卒業した年次は、大手企業が四年制大学卒女性を一斉に採用する前年であり、採用を先んじていた大手電気機器メーカー勤務後、大学院への入学を前に株式会社東海総合研究所(現:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(以後、MURC))へ入社。当時はコーポレートアイデンティティが注目されており、シンクタンクの設立が急増した時期であった。
当時のコンサルティング業界では女性は珍しく、女性が担当することに違和感を持つ取引先も多かったため、アサインされるのも大変な状況であった。
1997年の金融危機を契機に、事業部門等の売却が活発になったことを背景に、キャリアを自分で築く時代と見込み、学生時代からの関心事であった自律的キャリア形成に向けた測定支援ツール「CAREER-NAVIR」を開発、学会で発表。新聞・雑誌にも掲載され、仕事の幅が広がるとともに、2冊の書籍を出版した。
当社は、三菱UFJフィナンシャルグループのシンクタンク・コンサルティングファームであり、東京・名古屋・大阪を拠点に国や地方自治体の政策に関する研究調査・提言、民間企業向けの各種コンサルティング、経営情報サービスの提供など幅広く事業を行っている。売上のうち過半をコンサルティング業務が占め、取引先は、大企業から中小企業まで幅広い。企業が直面する経営課題に鋭く切り込み、ビジネスを新たなステージへ導くよう、実際の運用までしっかりと支援することが特徴である。
シニア活躍と定年延長
<同社コンサルティング事業本部 組織人事ビジネスユニット HR第2部 ディレクター 三島 寛之 氏>
日本の生産年齢人口(15~64歳)は、2025年7,310万人から2050年には5,540万人へと1,770万人減少し、人手不足が更に進む見込みである。女性・外国人・シニアの労働参加を促す必要もあるが、高度な人的リソース確保による生産性の向上も必要である。
70歳までの雇用確保の努力義務化や高年齢雇用継続給付の支給率縮小による報酬水準の引き上げ圧力など、法規制や公的給付の影響により、シニア人材の活躍が一層求められる。シニア活躍の重要性が高まる一方で、その推進を阻む要因は主に3つある。1つ目は、60歳を境にほぼ同じ業務を担っているにも関わらず、大幅に報酬が減額することである。2つ目は、報酬の減額に合わせて会社からの期待も低下すること。そして3つ目は、リスキリング環境の整備不足である。調査によると、男性は40代、女性は30代から学習意欲と学習時間が大幅に低下する傾向がある。活躍しやすいシニア人材の特徴としては、豊富な業務知識・スキルの保有、深い人間関係・人脈力、自社の価値観や文化への深い理解などが挙げられる。
「定年引上げ」を実施する企業は年々増加しており、2010年と比較するとその数は2倍以上となっている。中小企業の方が採用率は高いが、大企業でも20%程度の企業が採用している。70歳までの就業確保措置の実施状況は、未実施が過半数だが、25%前後の会社は「継続雇用」を採用している。
シニア活躍推進のためのポイントは3つである。1つ目は、担う役割・職務である。創造的な企画業務など「シニアならでは」の役割を想定し、社員の自律的かつ具体的な職務開発につなげる必要がある。2つ目は、評価・処遇である。60歳以降の格付けは、年功や保有能力ではなく、実際に担う職務や役割に応じて格付けすることが望まれる。3つ目は、意識改革であり、職業人生を通じて、「継続的に学び続ける環境」を整えることが重要である。キャリアの主体は自分自身であり、高い意識を持って学び続ける姿勢が求められる。
人口のボリュームゾーンにあたる「50歳から54歳」の層が60歳を迎える前に、シニア活用を見据えた人事戦略を策定し人口減の将来に向けて備える必要がある。
採用市場の概況と採用力強化のヒント
<同社コンサルティング事業本部組織人事ビジネスユニット HR第4部 マネージャー 西山 博貢 氏>
1日当たり1,700人、1カ月で約5万人という人口減少が進行する中、雇用の流動化も加速している。有効求人倍率は1.24倍とコロナ前の水準には届かないものの、依然として人手不足感は強い。企業規模別に見ると、従業員規模300人未満の企業では有効求人倍率が6.5倍、5,000人以上の企業では0.34倍と、会社規模により顕著に差が出ている。
職務別では、専門・技術職、次いで営業・販売職の人手不足感が強い傾向は不変であり、年齢別では、若年層の不足は継続課題であるが、近年は中年層の人手不足感も上昇している。
新卒初任給は、2023年以降急上昇しており、その背景には、人材確保の必要性とベースアップ対応が挙げられる。大卒採用の内定承諾率は、平均51.1%。新卒エントリーの約半分は、インターン経由によるものである。しかし、中小企業におけるインターン実施率は31.7%にとどまっている。
採用活動を取り巻く環境は、人材獲得競争が激しさを増す上で、市場変化のスピードが加速しており、広告費を増加させても従来ほど効果が上がらず、戦略や考え方の見直しが必要である。採用力の要素は、「企業力(企業の魅力・将来性)×採用活動力」であり、多くの企業は企業力を十分に活用できていない。
採用戦略はマーケティングの視点から整理することが有効である。中でも最も重要なことは、「求職者目線に立つ」ことである。応募の意思は、主観的な印象で形成されるが、選考が進むにつれ、より具体的な情報が意思決定の決め手となる。採用担当者には、従来の「自己完結型」から現場社員にも採用活動に協力してもらう「コーディネート型」への変化が求められる。
また、企業への印象は選考参加前から形成されており、内定後のクロージングでは遅い。認知から内定承諾までの間の接点の積み重ねが志望意欲に大きく影響するため、「自社の魅力」「採用ターゲットのニーズ」「採用競合のアピールポイント」の3つの視点で伝えるべきメッセージを戦略的に整理しておくことが広報活動の基盤となる。採用戦略の本質は商売と同じであり、価値提供・顧客満足・顧客目線で立てる必要がある。
マネジメントを担う皆様には、「何を問うか」によって相手の思考の優先度が変わることを意識し、採用活動を自らの管理下に置くこと、さらに「三現主義(現場・現地・現物)」を実践して最新の状況を把握し、思い込みを排除することを意識して頂きたい。
【新会員自己紹介】

北中 伸明(きたなか のぶあき)氏
株式会社りそな銀行
名古屋営業本部長
【株式会社りそな銀行 名古屋支店】
〒460-0003 名古屋市中区錦二丁目14番19号
URL: https://www.resona-gr.co.jp/
株式会社りそな銀行 名古屋営業本部の北中でございます。
この度、4月1日付で名古屋営業本部長として着任いたしました。
出身地は京都です。入社後は関西の支店、海外拠点を経験し、直近は東京の秋葉原支店で支店長をしておりました。
名古屋への赴任は初めてであり、会社の発展とともに中部経済の発展に向けて、微力ながら貢献させていただきたく存じます。
何卒ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願い申し上げます。

飯田 章(いいだ あきら)氏
株式会社ゼンリン
中部支社長
【株式会社ゼンリン】
〒456-0012 名古屋市熱田区沢上2丁目1番32号
URL:https://www.zenrin.co.jp/
ゼンリンの飯田と申します。
出身は東京ですが、名古屋に住んで20年が経ちます。
弊社は、全国の住宅地図を作成しております。基本方針に「共創社会における社会的価値創造」を掲げ、知・時空間情報の創造により人びとの生活に貢献することを目指しております。
これから皆様と交流できることを楽しみにしております。自己研鑽と共に地域の発展に少しでも貢献したいと思いますので、何卒ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
【6月度産業懇談会のご案内】
日頃は産業懇談会活動につき多大なるご支援をいただき誠にありがとうございます。
6月度例会を下記の通り開催いたしますので、ご案内申し上げます。各グループ興味深いお話が伺えるものと存じますので、ぜひともご出席くださいますようお願い申し上げます。
グループ名 | 世話人 | 開催日時 | テーマ・スピーカー | 集合場所 |
---|---|---|---|---|
火曜グループ |
屬ゆみ子 |
6月10日(火) |
『オーナー系中小企業だから出来る協業と新事業』 |
名古屋観光 |
水曜第1グループ |
足立 誠 |
6月18日(水) |
『M&A業界の現状と未来・国の施策の方向性について』 |
若宮の杜 |
水曜第2グループ |
香川裕子 |
6月11日(水) |
『個性別「部下の“やる気”を引き出す方法」 |
名古屋観光 |
木曜グループ |
河村嘉男 |
6月5日(木) |
『格差拡大・インフレ加速に立ち向かう「ボルテックスが描く富の再分配戦略と人材成長への挑戦」』 |
名古屋観光 |
【7月度産業懇談会のご案内】
日頃は産業懇談会活動につき多大なるご支援をいただき誠にありがとうございます。
7月度例会を下記の通り開催いたしますので、ご案内申し上げます。各グループ興味深いお話が伺えるものと存じますので、ぜひともご出席くださいますようお願い申し上げます。
グループ名 | 世話人 | 開催日時 | テーマ・スピーカー | 集合場所 |
---|---|---|---|---|
火曜グループ |
屬ゆみ子 |
7月8日(火) |
『スコットランドのゴルフコースとヒッコリークラブ』 |
名古屋観光 |
水曜第1グループ |
足立 誠 |
7月16日(水) |
『自己紹介~読書『俺たちの昭和後期』の感想を添えて~』 |
名古屋観光 |
水曜第2グループ |
香川裕子 |
7月9日(水) |
『留学生活用事例~定着率90%超のヒミツ~』 |
若宮の杜 |
木曜グループ |
河村嘉男 |
7月3日(木) |
『ダイセーグループと私』 |
名古屋観光 |
【コラム】
コラム1 【さっかの散歩道】 No.83
長瀬電気工業株式会社
代表取締役 屬 ゆみ子
『 何となく、それらしく 』

5月の産業懇談会に、ブルゴーニュワイン騎士団でご一緒している東京押上の3代目、遠藤利三郎氏(歌舞伎役者じゃないですよ)に、日本のワインのクオリティの高さについて講演頂いた。
遠藤さんは、東京のワイン関係者の中では知らない人はいない、普段は中々お目にかかれない“レアキャラ”で、ご参加いただいた会友の中でも、ここで会えるとは!というお声もチラホラ。お話は大変分かりやすく、流石のプロフェッショナル。私なんかのへなちょこワイン話とは訳が違い、大変ご好評いただいたので、これからも年一回の「サッカワールド」は死守しようと勝手に思い込んでいる。あ、ワールドカップのサッカーじゃないですよ、文字面似てますけど(笑)。
さて、日本は今46都道府県にそれぞれワイン生産者が居るのだそうで、唯一空白県だった佐賀にも、まもなくワイナリーが誕生するとか。そうなればイタリアよろしく全都道府県制覇となる。収量は別として、一大ワイン生産国になる訳だ。後はクオリティと、国内での消費が伸びてゆくのを見極めることになるのだろう。この頃はワイナリー立ち上げがちょっとしたブームなのだが、これもまたピンキリで、農業のイロハも知らず単なるワイン好きがいきなり始めるとか(んー私もこの部類?)にわか知識で始めるとかも増えてきている。食用ブドウからの転農ですら簡単にはいかないのに、酷いところでは、廃校になった小学校のグランドにいきなり植えて失敗するなんてこともあったらしく、失敗すると苗屋さんのせいにして逃げたなんて噂さえ聞く。お金があって初期投資を目一杯しても、まとまった収入になるのは大体7年後。決して儲かるわけではないので、覚悟を持って始めないと…、ま、私のところは家庭菜園のようなものなので、自分のワインだけ作れれば万々歳なのですけどね。

とはいえ、皆さんの期待を背負っている(と思っている)ので、人並のワインには仕上げたいと思っています。
その畑。
4月の雪解けを待って、誘引用のワイヤーを張る杭打ちをする。これまでの添木とは違い、しっかりツルを伸ばし、来年の初収穫に向けて、たくさん展葉させ、光合成を目一杯させなければいけない。杭の数400本、自分たちで打ち込もうと思っていたのだが、発注をした杭屋さんに「そこはプロにお願いしなさい」と言われ、当日運ばれてきた重機をみて納得。小型のショベルカーの免許は私も持っているのだが、なんとその先端についているアタッチメントが「初めまして」の顔なのだ。

上から打ち込み用のいわゆる金槌状のものが付いていて、これでまっすぐ打ち込むには相当の技術がいるし、大きな石が埋まっているうちの畑では、石に当たって下手したらショベルカーごと倒れる。農機具がらみの事故は少なからずあって、下手したら命がけなのだ。そういうところは謙虚に学んでいかないと…農業は全く以て奥深い。
北海道に限らず日本のワイナリーは大体樹高が160cmくらいで、高めに結実させる。これは日本が多雨で湿度が高く、湿気に弱い葡萄が地面に近いところで結実すると、病気になったりカビが生えたりするからだ。でもうちではあえて、ブルゴーニュやシャンパーニュのような、1メートルくらいの低木仕立てをしてみようと思っている。

水捌けの良い土壌の上、標高が高いので、麓に比べて雨量が少なく乾燥している。「無茶なこと」って言う人もいるけど、それは“家庭菜園”の強み、失敗上等(正直失敗する気はしないけど)で走ってみるのもまた一興。
杭打ちと同時に、今回は赤ワイン用の黒ブドウもお試し植えしてみる。最終的にピノ・ノアールに辿りつきたいのだが、この育成が一筋縄ではいかない。なので先ずは入門編のアルモノアールでチャレンジしてみる。
この春以降、各地で熊の出没ニュースが相次いでいる。うちの近所でも「今年は熊、多いべよ」ともっぱら注意喚起がされている。それに加え野ウサギ、キタキツネ、などなど獣はいずれも増えているようで、蝦夷鹿に至っては、交通渋滞が起きるほど、昼夜を問わず県道農道に出没し、逃げることなくその場に横座りでリラックスモード…天然のサファリパーク状態だ。さすがにヒグマは警戒心が強いので、人間の活動時間には息をひそめている。緯度が高いので、この時期日の出が早く、朝4時には辺りは明るくなっている。その時間作業をするのはホワイトアスパラ農家(昨年の産業懇談会で試食していただいた作り手さん)のお母さんたちくらいで、「大丈夫ですか?」と聞くと、「息子が鉄砲持ってっから大丈夫さ」そうはいっても出くわしたらそれは恐ろしい。農園の周りにはいくつか罠が仕掛けてあって、時々大きいのが掛かっているそうだ。インスタグラムで安井農園さんの去年の熊退治がアップされているようなので、興味のある方は一度覗いてみてください、でかいです。
蝦夷桜が終わった今月、畑や田んぼのあぜ道は一面タンポポに覆われている。品薄になっているコメの田植え、麦の作付け、アスパラの収穫…今年も農作業のルーティンが始まった。
芽吹き始めた葡萄は、間もなく若い緑の葉を広げ始め、畑の周りには蕨が顔を出し、林では蝦夷春蝉が鳴き始める。それは賑やかな季節だ。美しい季節の移り変わりは、それだけで大地や人に力を与えてくれる。
なんちゃって農婦の一人ごと「やっぱりヘタレたら北海道だわさー!」
コラム2 【師、曰く】 No.48
蒲郡観光交流おもてなしコンシェルジュ 妹尾 鷹幸(ペンネーム)
(株式会社構造計画研究所 名古屋支社長 妹尾(せのお) 義之)
ペンネームは、恩師、田坂広志先生の多重人格マネジメント、作家人格の名。心に鳴り響く言葉を今回も一筆。
『 心の双極性 』
「あなたは、運が良いですか?」そう聞かれたら、なんと答えるだろうか。なかなか答え難い質問かもしれない。分別ある大人なら、傲慢に思われるより謙虚に答える方が良いと考えるかもしれないし、安易に、「はい、私は運が良いですよ。」などと言えば馬鹿に思われないだろうか、無邪気な子供じゃあるまいしと思うかもしれない。それでも私は、「はい、私は運が良いです。」と答える。無邪気さもあるが、振り返ってみれば、幸運なことも、不運に見えたことも、すべてのお蔭で今があると思っている。そういう私も、以前は素直にそう答えられなかった。なぜこんな家に生まれてきたんだ、なぜここを離れなければならないんだ、なぜ正しいことをしているのに認めてくれないんだ、なぜあれほど努力してきたのに不合格になるんだ、なぜ人間関係が上手くできないんだ、なぜ別れるんだ、なぜ残れないんだ、なぜ報われないんだ、なぜ、なぜ、なぜ…、そんなことの繰り返しでした。そんなネガティブ思考だった私が、なぜポジティブ思考に変わり、「運が良い」と言えるようになったか。
「運気を高める」ためには、唯一、「ポジティブな想念を持つ」こと。これは田坂講義で刷り込まれ、日々実践してきたこと。これは、言うは易し行ずるは難し。まだ修行の身ですが、若い頃より遥かに、心のなかはポジティブ思考。幸運が訪れた時も、不運に見えることが訪れた時も、「運が良い」のです。ただ、大前提として心の「双極性」というものを理解せねばなりません。
師、曰く『心には「双極性」があります。心は電気と同じような性質を持つのです。ガラスを絹でこするとプラスの電荷が生まれますが、同時に、反対側にはマイナスの電荷が生まれます。実は、心にも同じような性質があるのです。心の表面で「ポジティブな想念を持とう」と思っても、心の深いところ、潜在意識の世界に「ネガティブな想念」が生まれてしまうのです。』
営業だったら、昔、上司にノルマ達成できるな!?と問われ、「はい、できます」と答えたことがあるでしょう。しかし、心の奥底では、「達成できないかも…」と正反対な意識があったのではないでしょうか。単に、自分は「運が良い」と言葉にしても、「本当は運が悪いのかも。。。だって…」という意識が、心の奥底に芽生えてないでしょうか。無理やり「運が良い」と表面的に言葉にしたところで、心の奥底で逆の意識が芽生えては、運気は引き寄せられません。では、どうすれば心に双極性があっても運気を引き寄せられるのか。それを伝えるには紙面が足りませんが、端的に言えば、まず、死生観を定めること。そして、自分の人生は大いなるものに導かれていると信じること、つまり全託。日々、今を生き切ることに集中し、只、導きたまえと祈る。その繰り返しが、「絶対肯定」の世界を創り出し、心の双極性に影響されない「ポジティブな想念」を生み出すのです。無論、まだまだ修行中。しかし、数年前より成長している。修行は続くよ、どこまでも。最後までお読み頂き、ありがとうございました。

コラム3 【げんき通信】 No.21
学校法人佑愛学園
愛知医療学院短期大学
リハビリテーション学科 作業療法学専攻
講師 清水 一輝
『 「活動リテラシー」を高めて健康で満足度の高い暮らしへ 』
みなさんは、自分の日々の生活の中で、どのような活動が健康につながっているのかを意識したことはあるでしょうか。健康のために栄養バランスの取れた食事を心がけたり、運動習慣を取り入れたりしている方は多いかもしれません。一方で、日常の中で自分が行なっているさまざまな活動のうち、どんな活動が自分の生活の満足度を高めているのか、あるいは、それが自分にとってどんな意味を持つのかを意識する機会は、あまり多くないのではないでしょうか。
近年、ヘルスリテラシーという言葉が注目されています。これは、健康に関する正しい情報を入手し、理解して活用する力のことを指します。ヘルスリテラシーを高めることで、病気の予防や健康の促進につながるとされていますが、実はそれだけでは十分ではありません。
「活動リテラシー」すなわち、自分のしている活動の意味や価値を理解する力も、健康的な生活を送る上で重要です。ある研究では、1日の印象に残った活動について、その活動の満足度や、それが「人と繋がった」「努力した」「楽しんだ」など、自分にとってどんな意味を持っていたかを記録し、1週間ごとに振り返るという取り組みが、生活の満足度や生きがいの向上に効果的であると報告されています。
この取り組みは、日記のように長く書く必要はなく、印象に残っている1つの活動を振り返るだけでその効果があるとされています。忙しい日々の中でも、自分の活動を振り返る機会を作ることで、「活動リテラシー」が高まり、より健康的で満足度の高い生活に近づくことができるかもしれません。
参考文献:高木雅之、其阿弥成子、織田靖史ほか:活動日記を用いた集団プログラムが地域在住高齢者の作業に対する満足度に与える効果。作業療法39(3):301–310。2020
