■ 日本ベンチャーキャピタル（NVCC）
　当社は1996年に企業の創業者や、ベンチャー支援に熱い想いを持つ当時の経済同友会（東京）の幹部が中心となって設立された。日本を代表する錚々たる経営者が当社の取締役として名を連ねているのはこのためである。
　次世代を担う起業家・ベンチャー企業を支援する目的で設立されたが、単なる資金提供に留まらず、事業計画の立案、人材紹介、販売戦略、上場に関するサポート等の経営戦略まで幅広い支援を行っていることが大きな特徴である。

■ 名古屋大学・東海地区大学広域ベンチャー1号　投資事業有限責任組合
　東海地区は産業の一大集積地であり、名古屋大学を中心に優秀な研究人材を輩出してきた地域にも関わらず、ベンチャーの起業数は少なくベンチャーファンドも空白地帯であった。そんな中、過去に3本の大学ファンド（阪大、京大、同志社）の実績がある当社に声がかかり、名古屋大学・名古屋工業大学・豊橋技術科学大学、岐阜大学、三重大学の「東海広域5大学」を対象とする東海地区初の大学ベンチャーファンドを設立するに至った。ファンド名は「名古屋大学・東海地区大学広域ベンチャー1号　投資事業有限責任組合」。
　名古屋大学の場合、過去に「青色発光ダイオード」の大型の知的財産を押さえていた成功例もあり、ベンチャーファンドに対してとても前向きな姿勢が感じられる。
　お蔭様でファンド資金も目標額に近い24億円の目途が立つに至っている。
今回のファンドでは、地域特性から工作機械やバイオベンチャー関連分野等での成果が得られるのではないかと大きな期待をしている。その他「Airbnb」や「Uber」に代表されるネットベンチャーと呼ばれる分野もあるが、この分野は「これからの世の中を変えてゆく」という前向きの意図のものであれば期待できるだろう。

■ 大学ファンドの難しさ
　過去の大学ファンド運営の経験から、大学ファンドには特有の難しさがありその対応が必要である。第一に大学の先生の研究論文を評価しなければいけないことだ。市場ニーズ、コスト、工程といった実用化までの検討がされていないことが多いのである。その解決策として資金を別途提供して、大学の産官学連携部署を事務局としたGAPファンドを創り、社会実装に相応しいものかどうかを見極める前ステップを踏んでいる。
　また、ベンチャーにおいては情熱をもって取組みができる経営者の存在が不可欠であるが、大学の先生が軽い気持ちで経営者を兼任してしまうと上手くいかない。我々としては経営者の資質には最大限の注意を払っている。
　なお、ベンチャーといえば学生ベンチャーを連想する方も多いが、実際はほとんど上手くいっていないのが実情だ。そもそもビジネス社会の基本的ルールをよく理解していないことが多いので、どうしても限界がある。シリコンバレーの例をとっても、能力だけでなく、ある程度の社会経験・実績・人脈がなければ資金も集まらず成功していない。

■ 投資対象
　今回のファンドが対象とする投資対象は次の3つである
　（1）大学の研究シーズを社会実装するベンチャー（大学発ベンチャー）
　（2）卒業生・在校生が創業者・経営者であるベンチャー
　（3）研究成果を導入（予定）するベンチャー

いずれの場合も、事業性、新規性、投資ポートフォリオ、経営者の資質といったような様々な角度から検討し、投資対象を選定している。
　有望な研究成果がスムーズに事業化へ結びつくように、またそのような役割を担うベンチャー企業を支援することを通し、地域経済ひいては我が国経済の発展に貢献できればと願っているので、大学ファンドの今後の動向に是非注目して頂きたい。

■ アンチエイジング研究のきっかけ
　老人斑、いわゆるシミは、老化の進行状況を示すとともに、基礎疾患を抱えている可能性を示唆することがある。自分も40歳頃に、このシミが出てくるようになり、勤務小児科医として激務をこなす中で軽視していた、食事などの予防医療の重要性を認識するようになった。
　そもそも、臨床医が治療を開始するのは、診断により病気の発生が確定してからである。老化や糖尿病などの予防に対しては、十分な知識を持った医者は少ない。例えば、食事は健康な体づくりや老化予防にとって非常に重要な要素であるが、医者は栄養学について医学部では学ぶことがなく、素人に近い状態だ。このことを意識してから、栄養学の勉強を開始し、40歳の頃に一般書としてはじめて「活性酸素」について言及した書籍を執筆した。

■ 活性酸素と抗酸化
　活性酸素は、老化やガンの原因の大きな要素である。活性酸素は紫外線を浴びることや、マラソン等の激しい運動、ピロリ菌等への感染やそれに起因する炎症、タバコ等によって発生する。この活性酸素の発生を如何に抑えるかが、健康の維持に向けて欠かせない。
　この活性酸素を除去する抗酸化物質は、まずタンパク質、次にビタミンA・C・E、そして亜鉛・セレンなどのミネラルである。これらの抗酸化物質を多く含む食事をしっかりととることが必要だ。しかし、これらの物質をサプリメントとしてとることは危険である。フィンランドでの実験で、ビタミンが入っている薬と入っていない薬を継続的に摂った人々を調査したところ、ビタミン入りの薬を摂った人々のほうが、発ガン率が高い結果となった。化学薬品として精製されたサプリメントとして、これらの抗酸化物質を摂ることは健康を害する。食事として、これらが多く含まれた食品を摂ることが重要なのである。タンパク質を多く含む食品として、お肉・お魚・卵・牛乳をよく摂ること。また、野菜等のビタミンを多く含む食品を摂り、炭水化物・塩分は控えめにしていくことだ。卵はコレステロールの観点から忌避されがちであるが、タンパク質とビタミンを多く含む、抗酸化力の高い食品の代表格といえる。

■ 混乱する健康法
　巷には、極端な健康法が溢れ、一般的な人々は混乱することが多いのではないか。禁煙すると肺ガンが増えるといった主張や、ガンを見つけても治療しないという言説などが代表例だ。また、ワクチンの接種をやめるべきという書籍も出版されている。ワクチンが普及したことで、乳幼児の感染症による死亡率は劇的に改善されている。事実を踏まえない一方的な主張は非常に危うい。
　では、何を信じるべきであろうか。古い話になるが、森鴎外と高木兼寛という明治〜大正期に活躍した2人の医療者について比較したい。
　1人目の森鴎外は文学者としても知られる陸軍医総監で、ドイツ医学からくる原理主義的な考えを持つ。たとえば卵にはコレステロールが含まれており、これを摂取することは健康を害する、という考え方だ。2人目の高木兼寛は海軍系の軍医で、実証主義的な考え方である。事実を踏まえ疫学的な見地からものごとを判断した方だ。つまり実際、卵を食べてもコレステロールは増えないという事実を重視する姿勢である。
　2人の考え方の差異を見る事例として、日露戦争時の脚気に着目したい。高木兼寛の海軍が実態を踏まえ「脚気は食事に起因するものだ」として、白米に依存していた兵隊の食事を洋風に切り替え、脚気の発生を抑えたことに対し、森鴎外の陸軍は「脚気は風土病」と判断し、結果として陸軍の脚気による傷病者は膨大な数になった。
　この事例から学ぶべきは、実際に起きていることに対して、明らかな効果に基づいた医療・治療を行うことの重要性だ。現在日本では、標準的な医療・治療のガイドラインが制定されている。様々な極端な健康法があるが、やはりこの標準的な医療法を信じることが必要だ。

■ まとめ
　健康寿命を長く保つ上で、まずは現在の持病をきちんと治すこと。そして、喫煙は健康にとって大きな敵と心得ること。食事法としては、タンパク質と野菜を多く摂り、炭水化物と塩分を控えること。乳製品を摂ること。そして、過剰にならない適度な運動をすることである。なにごとも、極端に走るのではなく、バランスを心がけていくことが必要だ。

■ 自己紹介、ダイナパック（株）の沿革
　名古屋に生まれ、名古屋に育った生粋の名古屋人で、国家公務員として働いた後、現在の会社の前身である日本ハイパック（株）に就職した。当時、顧客が海外へ進出するタイミングであり、海外事業部の責任者などを歴任した。マレーシア、香港、タイ、フィリピンなどに生産拠点を構築していき、当初は順調であったが、1997年のアジア通貨危機では撤退も経験した。
　2005年に日本ハイパック（株）と大日本紙業（株）の経営統合により、ダイナパック（株）が誕生した。国内には7製造拠点と6の子会社を持ち、海外展開もベトナムへの新規進出、フィリピンへの再進出など積極的に行っている。段ボールは輸送の際に非常にかさばる製品なので、遠くに運ぶとコストが合わなくなってしまう。主要都市の基幹工場＋顧客に近い衛星工場（子会社）という戦略だ。

■ ダイナパック（株）の事業内容
　主力の事業は、やはり段ボールだ。殆どの製造業が顧客先であり、現在最も伸びているのはアマゾン等のネット通販業だ。また、国内市場が縮小していく中、今後を考えたときに海外展開は継続していく必要があるだろう。
　シンボル事業としては、パルプモールドがある。当社がゼロから新規開拓した分野だ。1990年ごろ、環境対応に迫られる顧客が多かった中、卵のパック容器に使われていたパルプモールドを、当社が包装材として商品化。環境にやさしいクッション材として発泡スチロールの代替品となり、当社がパイオニアとして市場開拓した。また、顧客の目につきやすいアピール商品として、印刷紙器やフィルム包装などのアンテナ事業がある。

■ 国内における段ボール産業の歴史と現況
　世界における段ボールの発祥は英国で、シルクハット内の通気・クッション材として使われ始めた。日本では、20世紀初頭に使用が開始され、戦後に多く使われるようになった。戦災で森林が少なくなり、資源保護のため木箱から段ボールへ切り替えるように政府が主導したことが要因である。その後の高度経済成長にわたり、需要が増加していった。
　段ボールは基本的にすべての製品梱包に使用されるため、日本の経済動向とほぼ同じ動きをすることで知られている。段ボールの出荷統計を経済分析に使う経済アナリストもいると聞いている。現在の段ボールのトレンドは、薄く・軽くすること。一方で、リサイクルでは、今やほぼすべての「段ボールの原料は段ボール」といわれるほど浸透している。

■ 段ボールのイノベーション
　戦後から高度経済成長にかけて需要が増えた段ボールだが、ここ最近は頭打ちの状況だ。また、生産の根本原理は変わっておらず、改善はあったもののイノベーションは起きていない。ゆえに、差異化・差別化が難しく、バリューチェーンの長い製紙一貫メーカーに、段ボール専業メーカーは押され始めている。
　この状況を打破するため、2016年にダイナパック（株）が段ボールにイノベーションを起こす。その鍵となるのは、デジタル印刷技術だ。これまでアナログ的であった段ボールへの印刷を、デジタル化できる設備を新しく導入した。新設備によるデジタル・オンデマンド印刷を行うことで、短納期対応・ビッグサイズのフルカラー化・小ロット対応など、顧客に対して新たな付加価値を提供することが可能になった。

■ まとめ
　デジタル・オンデマンド印刷技術で目指すのは、既存顧客、潜在顧客への新たな価値提供は勿論だが、真に目指すものは段ボールに新たな需要創造、価値創造を起こすことだ。つまり、モノを運ぶための箱という機能だけではない段ボールを創造し、段ボールは茶色という概念を払拭することである。
　このような新たな価値創造＝イノベーションは、当社にとっての夢創造だ。イノベーションへの挑戦は、会社に活力を生む。ダイナパック（株）は「イノベーティブで存在感のある会社」を目指していく。

■ 日油（株）の会社概況
　日油（株）はバイオから宇宙分野まで、様々な機能材を開発・生産する化学メーカーだ。1937年に「日本油脂」として創立し、来年80周年を迎える。当時、日産コンツェルンの傘下にあった4つの企業が合併するかたちでスタートした。戦中期に、合併により日産化学工業に社名変更後、戦後に油脂・塗料・火薬・溶接の各部門を分離して、再度日本油脂としてスタートした。2007年には、社名を「日油（株）」に変更し、現在に至っている。
　当社の事業構成は、機能化学品（油化事業、化成事業、ディスプレイ材料事業、防錆事業）、ライフサイエンス（食品事業、ライフサイエンス事業、DDS事業）、化薬事業およびその他の事業に大別される。事業所としては、本社を東京におき、生産拠点として川崎・尼崎などの事業所があり、中部地域では愛知事業所として、武豊工場・化薬研究開発部、衣浦工場・化成研究所、ディスプレイ材料工場・ディスプレイ材料研究所がある。海外各国にも、販売や生産の関連会社を展開している。

■ 化薬事業について
　化薬事業の主要製品を紹介したい。まず、産業用爆薬（高威力含水爆薬など）は、トンネルなどを掘削する際などの爆薬として、国土開発や鉱山などに幅広く使用されてきた。今後も、リニア新幹線などの工事での採用を目指している。その他に、自動車用の安全部品や、医薬原料なども生産している。
　宇宙開発関係では、中部地域の武豊工場で宇宙ロケット用固体推進薬を生産している。宇宙ロケットには大きくわけて、固体燃料ロケットと、液体燃料ロケットがある。固体ロケットの特徴は構造がシンプルで、推進力が大きいことだ。一方、液体ロケットの特徴は細かい推進力の制御ができることにある。
　日本におけるロケット開発は、固体燃料型と固体液体併用型が並列で進められており、固体ロケットの最新型がイプシロンロケット。固体液体併用型ではH-IIA、H-IIBが開発されており、こちらは国産化され、性能向上とコストダウンの取り組みがなされている。
　日油グループは、1955年のペンシルロケット以来、日本で唯一の宇宙ロケット用固体推進役を提供するメーカーだ。種子島事業所では、H-IIロケットなどの大型ロケットを、武豊工場では気象観測用ロケットなどの中小型ロケットを製造している。
　また、小惑星からのサンプルの採取、持ち帰りを目指す小惑星探査機「はやぶさ2」にも関わっている。「はやぶさ2」がサンプルを採取する際、対象の小惑星に、衝突装置から高速で射出させた衝突体をぶつけ、クレーターを生成させる必要がある。この衝突装置を当社グループがJAXAと共同で開発した。

■ 食品事業について
　また、様々な食用の加工油脂事業も行っている。いま、食用の油がマスコミなどに取り上げられる機会が増えている。「健康のためには油をとり過ぎないほうが良い」と言われていたが、「良い油（オメガ3系油脂など）は積極的にとる」が新常識となっている。オメガ3系油脂は体内では合成出来ない必須脂肪酸である。代表的なオメガ3系油脂のαリノレン酸は、エゴマ油（シソ油）などに多く含まれる。効能としては、脳を活性化したり、肌荒れを改善するなどが挙げられる。青魚に多く含まれ、学習能力の向上や認知症改善に効果があるDHAやEPAも、オメガ3系不飽和脂肪酸の一種である。
　一方で、同じく必須脂肪酸であるコーン油や紅花油に多く含まれるリノール酸などのオメガ6系油脂は、現代人は摂り過ぎていると言われている。いずれにしても、バランスよく摂取することが最も重要なことで、オメガ3系：オメガ6系のバランスは1：4で摂取することが理想的とされている。おいしく、健やかに「食」の豊かさを広めるため、これからも社会に貢献できる製品づくりを続けていきたい。

■ ニューライトサービス（株）の概要
　当社は給茶機の販売や給茶サービス、従業員カードを活用した顧客企業の社員の健康づくり・福利厚生に関わるシステム開発などを中心に、トヨタグループ各社をメインとして事業を行っている。創業は1972年、設立が1983年で、2013年の設立30周年を機に、トヨタグループから顧問を迎えるなど、組織力強化・新規事業への開発に注力している。顧客であるトヨタグループの正社員は約13万人、この方々を対象としたサービス事業を中心に展開している。

■ 超高齢化・人口減少社会と生涯現役社会
　男女ともに、平均寿命と健康寿命には約10年の差がある。この10年は介護が必要な状態であり、この期間をいかに短くするかは、大きな社会的課題である。現在、日本は平均寿命が84歳で世界一の長寿命国だが、2050年には平均寿命が90歳になると予測されている。そのときに、65歳以上の高齢者人口割合は現在の23％から40％程度と予測され、必然的に医療費などの社会保障費も膨大な額となろう。
　一方で、総人口を見ると、現在の1億2700万人が、2050年には1億人弱となる。65歳以上の高齢者数は増えるが、15-64歳の生産年齢人口が大幅に減少し、人口全体に占める割合が50％程度となる。
　高齢化社会は、ある意味では、人類の理想である。誰もが健康的に長生きできることを望んでいるからだ。従来の老後という概念ではなく、生涯活躍できるような「生涯現役社会」の構築が必要であり、そのためには病気予防・健康増進、シルバー世代ビジネスの推進などが求められる。例えば、神奈川県では、将来的な医療費抑制のために病気予備群ともいえる「未病」状態の県民に着目し「神奈川宣言：食と運動と社会参加」を採択し、健康寿命日本一を目指している。同県では、健康活動に積極的な人や企業にはインセンティブが働く保険制度にするなどの取組みを検討しており、人生100歳時代を見据え、定年後も「生涯現役」を目指せる社会づくりを推進している。

■ 企業の長期的方向、健康経営
　超高齢化・人口減少社会が到来すると、企業には人材確保の観点から、高齢者・女性・外国人など多様な人材が元気に働ける職場づくりが求められる。特に高齢者が長く働き続けるためには、従業員の健康増進をサポートする仕組みづくりが必要だ。その意味で、健康経営を会社方針の1つとする企業が増えている。
　健康経営とは、1992年にアメリカの経営心理学者　ロバート・ローゼン氏が提唱した概念だ。日本では、2009年頃から大企業を中心に始まっており、従来は健康診断のみであった社員の健康管理に対し、社員の健康増進が将来の収益性を高める投資であると捉えて、健康管理を経営視点から考え実践されている。経済産業省もこの健康経営の考え方に注目しており、先進的な取組みを実践している企業を表彰している。

■ ニューライトサービス（株）の健康管理サポートシステム
　このように健康経営が注目される中、当社も顧客企業の社員の健康管理に貢献できるシステムの開発を行っている。例えば、食堂のレジシステムと摂取栄養素のデータを連動させ、毎日の食生活を俯瞰できる食堂コミュニケーションシステムや、熱中症対策飲料などの健康飲料と社内報表示ディスプレイを組み合わせた現場コミュニケーションシステムなどだ。上記のようなシステムから得られるデータを、勤怠システム、セキュリティシステムなどの行動データと組み合わせることで、産業医と連携しながら、健康管理を推進できるしくみづくりに貢献していく。
　社員の健康は企業の資本であり、健康経営は経営課題である。健康を増進するには長期的な取組みが必要で、しくみとして健康管理ができる体制をつくらねばならない。働く社員が「良かった」と思えるような会社・環境づくりに、これからもお客様と一体となって貢献していきたい。

同社の取組みをご説明いただいた鈴木顧問

講演終了後、給茶機の試飲会を行いました

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料亭つたも主人
深田正雄（栄ミナミ地域活性化協議会）

新しい御園座と伏見金融街再建・和テイストの意匠建築

　明治30年5月、創業者・長谷川太兵衛の固い決意のもと、目を見張るモダンな建築物が徐々に完成へと近づく様は、当時の名古屋市民の胸を期待で大きく膨らませたと伝え聞いています。建物の名称は「御園座」―。以来、名古屋の文化、歴史の中心として歌舞伎公演などで輝かしい伝統が継承されています。
　この度、同社の経営危機といわれた数々の困難を乗り越えて、建て替え工事の事業主を積水ハウスが担い、昨年4月に着工、工事は順調に進捗しています。完成すれば、下層階には御園座劇場、上層階に分譲マンションが入る40階建て高さ150メートルのビルとなります。総事業費は約300億円で平成29年12月に完成し、新たな御園座は30年春にオープンする予定。劇場の客席数は1298席、304戸の分譲マンション「グランドメゾン」は既に昨年末予約にて完売、超人気の新住居空間です。
　新しい御園座のデザインは、東京・歌舞伎座の建て替えを手掛けた建築家の隈研吾さんが監修とのこと。

御園座外観パース、伝統的な「なまこ壁」の意匠　同社HPより

　御園通り商店街は、多くの店舗が半世紀前昭和38年の旧御園座建築時から同一地、同一ファミリーで事業承継されており、建築や外内装も御園座を意識した和のテイストを大切にされております。
　特に、伏見通り南側、かつては芸人役者のお宿「旅館山多屋」跡地には、昭和41年に山口銀行名古屋支店がオープン。建築家福田一豊氏の解説によると、「設計は現代建築の大御所で日本建築家協会会長・円堂政嘉氏（1920-1994）、縦の柱と横の梁を強調しその間を大きなガラス窓で構成。三層部分が下層部に浮いたように積み重ねられたダイナミックな建物です。そして、円堂氏の師匠・中村順平（1887〜1977）が手がけた高さ7m・幅12m名古屋城金鯱鉾設置工事“城を築く”のモザイク大壁画がロビーを飾っています。」

　そして、南の三蔵通り角地は三油商会から一光石油のゼネラル・ガソリンスタンド跡地に隈研吾氏意匠設計の碧海信用金庫御園支店が来年7月オープン予定、「和の伝統」独創的な外観・ロビーは街に木のぬくもりを感じさせてくれるでしょう。隈氏のデザインコンセプトは「立体庭園グリーンヴォイド・軽やかな木組みスクリーンで芝居街にふさわしい和の華やかな街並みを形成する。インテリアにも木や和紙を使用して、優しい空間が提供されることとなる。」

山口銀行名古屋支店　ロビー 壁画「城を築く」　2016年6月撮影

碧海信用金庫御園支店　外観パース　 同社ニュースリリース2016.5.16より

三蔵と御園交差点東、御園座のバス駐車場には（株）日建設計と、岡崎・小原建設（株）の建築によって「岡崎信用金庫名古屋支店」が建設中。和文様を表現した外装スクリーンが伝統を感じさせ、低層部は開放的なガラスカーテンウォールと黒の花崗岩を使用して歴史の重みを表現されているようです。 　歴史と文化を象徴した新しい和感覚の建築によって、新しい「伏見金融街復興」が実現されることとなり、御園座さんと相まって街の名所地区として期待されています。 　かつてのキャバレー白菊跡・西角には1582年からの第13代上原勇七による甲州印傳のショウルーム、伏見角には名古屋画廊さんが美術界の重鎮作家を紹介する文化ストリートとしての位置づけもユニークです。

岡崎信用金庫名古屋支店外観　 同社リリース　2016.6.22より

工事中の新伏見金融街／伏見・三蔵交差点より 御園座を望む　2016年6月撮影	印傳屋・十三代上原勇七　名古屋御園店　 かつてのキャバレー白菊跡地

　第2次大戦空襲で焼け野原となったこの地区で奇跡的に消失を免れた家屋、印傳屋の斜め南向かい梅本（株）さんは尾張藩御用達商人の松川屋という漆器商で、中庭には素晴らしい日本庭園や水琴窟があり、当主磯村義典さんは3年前まで栄学区区政協力委員長として地元町内活動にご尽力されていました。「私の父は昭和8年に本重町でメリヤスの卸業を始め、昭和12年ごろにこの地に移転してきました。荷車に積んで堀川の倉庫まで品物を運ぶ。堀川から艀で名古屋港に持っていく。そこから朝鮮、満州に輸出する。三蔵筋は商売するのに非常に便利な土地だったですね。通りの幅は3間（5.4m）ですから、向かいの家の声が聞こえてくるような狭い道でした。」**と語ってくれました。西に歩くと戦災を免れたもう一つの建物、簾・提灯・雑貨の伊藤繁治郎商店は昭和16年建設、西となりの長屋は明治時代の造りでしたが、最近取り壊され新装のマンションが完成したようです。
　栄と名駅を繋ぐ三蔵通り、昨年より「NAGOYA創造協議会」が地域の一体化の音頭を取り、まず桜並木をつくることでイメージ統合がなされ活動をスタートしました。これから栄ミナミと名古屋駅南地区の中心に伝統文化をテーマとした、御園地域の発展が期待されます。
　当分、御園座工事中は厳しい営業環境ですが、400年の歴史「御園通商店街振興組合」の皆さんが力を合わせて、芝居小屋再開に向けて街づくりに邁進されることを祈念しております。

**磯村氏コメント：花の名古屋の碁盤割　三ツ蔵町P.38　　沢井鈴一執筆　より引用